2006/10月中旬 鬼怒川上流・赤岩沢
奥鬼怒
行かねばならない場所がある。越えねばならない峰がある。
ときに漕ぎ分け、泳ぎ、そして攀じる。
モチロン、ときには迷い、流され、次の一手が出ないことだって珍しくない。
今までいくつの山を越えてきたものだろう。
一体、何を掴めたものか。そして何を失ってきたのだろう。
そんな、時の流れに錦秋ぶらり独り沢旅。
思い立ったが吉日。今日はそんな物語なのです。
目指すは以前から気になっていたものの、奥鬼怒という近そうな気軽さから「いつでもいけるじゃん」と、機会を 逸していた夫婦淵温泉以奥の黒沼田代。
赤岩沢の二つの大滝とナメの美しい魚沢下降となんともゼイタクな沢旅になるはずなのですが。
錦秋
8:15 夫婦淵温泉駐車場
「しまった寝過ごした!」初っ端から三時間ほど寝坊。
タイムを確認したら何とかイケそうなので歩きながら朝食を摂ることにした。
林道を一時間ほど。大きな堰堤先から入渓。錦秋の、とはいかないが紅黄緑の斑はそれはそれで鮮やかなものでココロ洗われる。
右岸から合う最初の流れが赤岩沢。シバラクは何てことない流れ。
一時間ほどで赤岩沢・下の大滝。
水流右を直登。上部は立ってくるので要注意。落口近くは傾斜も緩み、左へ。
さらに一時間ほどで上の大滝。
滝は二段になっており記録ではロ-プを出して2ピッチ。上部ピッチが核心らしい。
下から核心が望めず、フリ-の直登は躊躇われたので巻くことにした。
巻きは手前左岸の流れに入る。左に枝沢を一本見送ったら、その先左の支尾根を行く。
先ほど見送った左の枝沢にも20mほどの滝がかかっているため、これも一緒に巻くことになる。
そのため支尾根を登り20m滝の上部で一旦流れに出たらもうひと尾根越えなければならない。
秋風
ここから30分ほどで流れは極めて単調となり、傾斜が落ちる。心なしか右岸が開けてきて明るい雰囲気となる。
右岸台地に上がると少々行過ぎたようで、いくらか戻ると黒沼田代を発見した。
湿原はすでに冬支度。彩を失った草々が微かな秋風に揺れていた。
湿原から南進すれば魚沢に行き着く。
数本の窪み(涸沢)を見送るがこのあたりはおそらく大抵魚沢に流れ込むのであろう。
適当に当たりをつけた涸沢も例外に漏れず、シバラクで流れが出始め20mほどのナメ滝で本流と出合う。潅木と笹を頼りに下降。
ナメ床
三俣に出た。
寝坊の影響で極力、ロ-プを出さないようにと考えていたが、ここは懸垂下降とした。
その後からはナメ床が続き、気分もいい。
いくつか出てくる滝はクライムダウンで通過するも10mほどの滝で今一度懸垂下降。
その後、これまたナメ床が続き、気分がいい。
一転、連瀑帯を巻き下り、ゴルジュ状を四肢を突っ張り越えていく場面も。
それでも尚ナメ床が続き、またまた気分がいい。
しかし、下部になると妙に滑るようになる。沢靴でも歯が立たない。
最後に美麗なナメ滝、スダレ状を過ぎれば黒沢出合まで30分ほど。
16:00、林道に上がれば30分で夫婦淵温泉。どうにかヘッデンの世話にならず済みそうだ。
人に悩みはつきもの。いかに恵まれていたとしてもそれは尽きることがない。
迷い流される中、どんなヤマでも自分の道は必ずある。
悩むのも自分なら、答えを持っているのもまた自分。
ひととき、気分変えれば、案外それはそんなに複雑なものではないはずなのです。
sak