2022/8/22 桧枝岐川・黒檜沢左俣~三岩岳
街道を北へ。
闇に浮かぶ牛丼屋の看板に目が留まる。
そういや晩飯、食ってなかった。
余事に振り回される日々。
終業際、唐突に思い立ち、ついと山へと向かったからだ。
ふふふ。
今日の牛丼並盛は一味違うぜ。
何故って?
それはこれから、本然を見に行くからだよ。
小豆温泉スノーシェッド手前。
黒檜沢にかかる橋の袂から入渓。
どこから降りるのか迷ったが、右岸側を少し入ると踏み跡がうかがえる。
下部は白い花崗岩が美しい。
ナメに小ゴルジュ、滝場が断続。
このリズム感がいい。
小ゴルジュは、へつったり泳いだり。
滝は概ね、登ることができて楽しい。
直登が困難そうな7m滝は右岸を小さく巻く。
この上で登山道(現在は通行禁止)が横切っており、小休止。
アブはなく、赤蜻蛉が群遊。
山はもう秋の装いが始まっている。
ここからはゴーロが増えて下流部のリズム感は薄れる。
反面、正面に三岩の稜線が見えてきて開放的。
1:1の二俣は左に崩落跡をみて、右へ。
奥の二俣は左に多段滝で右がゴーロ。
ここは針路を左にとる。
多段滝の下段はどこでも登れる。
中段は水流沿いのヌメを回避し右を登る。
上部は容易。
小滝の連瀑をこなして露岩に顕著なチョックストン3連滝。
小休止してから左岸巻き。
しかしながら、この巻き。
露岩に草付き、急傾斜。足場が決まらず悪い。
ここで足を滑らせば、止まらない。
スパイクをもってこればよかったと思いながら、必死にバイルを振るう。
こんなときにフラッシュバックする日常。
得てして日常は残酷だ。
日々身体はすり減らされる。
そして、唐突に思い立ち、ついと山へと向かうのだ。
ここが消失点ならば、受け入れてもいい。
それが、運命なのだろう。
しかし、ここを乗り越えたなら。
それは「今と向き合え」という啓示か。
草付きから藪を取れたら一安心。
灌木帯をトラバースして、最後は15mほど懸垂下降。
ここからも滝場は続くが、いずれも登ることができる。
最上流部は沢筋が幾重にも分岐する。
目指すは、地形図・三ツ岩のすぐ脇にある「草原マーク」。
水流は消え、沢筋が草叢に吸収される。
そしてたどり着く源頭。
三岩岳の本然はここにあった。
源頭に広がる草原。
赤蜻蛉が舞い、雲は流れる。
そして、金光花の群落が一斉に揺れる。
夏と秋の間に。
ただひとつ、私だけが異質だった。
日常の余事は、誰しも溜息モノだ。
だが、自己本然の姿はどうであったか。
行く手にはヤブコギが待っている。
うん。これだよ。
これがなきゃ、だな。
ふふふ。
今の俺は一味違うぜ。
sak
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