「原発事故避難計画」について議論が高まっています。
「避難できっこない」「被曝する危険」は確かです。
でも、動物は避難できない。
昆虫は避難できない。
ましてや樹木や草たちは避難できないんです。
人間が動物や植物などいのちを放射能で汚す権利があるのでしょうか。
この地球の大地を汚すことが許されるのでしょうか。
もうすでに人類は、地球の「管理人さん」(高橋留美子さん「メゾン一刻」より)の資格を失っているのではないでしょうか。
原発と放射能の本 竜田一人『いちえふ ー福島原子力発電所労働記ー』<モーニングKC>、講談社、2014年4月23日第1刷発行、186ページ、本体580円+消費税8%
日曜日の新聞広告(広告特集1ページのなかに)に載っていたので、則子さんが来月のおこずかい3万円を先渡ししてくれていたので、すぐ本屋さんに行きつけの電話で注文しました。
「入ったらすぐ電話ください」
「23日に入荷すると思います」
その23日、今日、電話が来たので、すぐ買いに夕日の眩しいなか、車を走らせました。
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広告に「マンガの情報量は、文字より凄く多い」と書いてありましたが、読んで同感です。
「竜田一人」(仮名)という青年が2012年夏から「ふくいち」で実際に原発構内で働いたリアルな体験記です。
「580円+消費税8%」、1000円でおつりのくる安い本ですから、皆さん、ぜひ買ってお読みください。
僕が一番印象に残ったシーン。作業の前に「免震棟の本館」に入り、右側の受付でAPD(警報付きポケット線量計)を渡されるシーン。
この場面では、竜田さんのすぐ前の人は「設定は?」「コンマ8で(0.8mSv(ミリシーベルト)のこと」と言っていて、竜田さんは「設定値は?」「1.8で」と言い、受付の人は「はい1.8 五安全に」と言って線量計を竜田さんに渡していました。
「ご安全に」というのは「危険地帯」に行く労働だからこそ、「ご安全に」と声をかけるんですよね。
いまや、日本では稼働しているのかな?1950年代後半の炭鉱労働者を描いた、うたごえ運動の作曲家・荒木栄さんの合唱曲「地底の歌」の歌詞を思いだしました。今でも歌えますけど。
「眠った坊やの膨らんだ ほほをつついて 表てに出れば
夜の空気の冷え冷えと 朝の近さを告げている
ご安全にと 妻の声 渡す弁当のぬくもりには
つらい差別に負けるなと 心をこめた同志愛」
いま、則子さんに、荒木栄さんの「地底の歌」覚えてる?って聞いたら「知らない」って。30何年間いっしょに生きてきた(はずの)夫婦でも、やはり意思疎通ができてない面ってあるんですね。
ぼくたちの青春期の結婚式では、ぼくも則子さんもいっしょに荒木栄さんの祝婚歌「花を贈ろう」をいっしょに、当時所属していた合唱団美樹の仲間たちといっしょに歌ったんですけどね。そういう話も、これから書こうとしている自叙伝「青い地球とオレンジの花」で書きたいと思っています。
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この「0.8」とか「1.8」って、一般住民の1年間の被爆してはならない線量「1ミリSv」ですよね。それを1日で受けてしまうんです。
どうなってんでしょうか。改めて調べ直したいと思います。
原発と放射能の本 16 黒田・井野・山口編『福島原発で何が起きたのか ー安全神話の崩壊』岩波書店、2012年11月15日第1刷発行、B5版、120ページ、定価2600円+消費税
一昨年はF1事故のドキュメントが多かったのですが、昨年2012年になって福島原発事故の分析などのいい本が出版されるようになったと思います。
これはお勧めです。
「福島第一原発事故は悲惨な結果をもたらし、いまなお漏出される放射能が生態系をはじめわれわれの生活を脅かしつづけている。なぜこのような原発事故が起きたのか、その事故原因とプロセスはいまだ確定されていない。地震による損傷は本当になかったのか?放射能汚染はどのように広がっているのか?制度や組織的背景、倫理的観点も含めて、福島原発事故をもたらした真相に迫る。2012年8月30・31日に行われた国際シンポジウムの記録。」
目次は、Ⅰ 福島第1原発で何が起こったか、Ⅱ 放射能汚染の現状、Ⅲ 日本の原子力政策と安全神話の形成、Ⅳ 核をめぐる科学・技術のあり方
あまり今論議されない、「除染」の問題では京都精華大学の山田國廣さんが、土を大量にはぐことと高圧洗浄の二つの方法では、除染は成功しないと、指摘しています。
そういう基本的な論議抜きに、今、マスコミや国会などで、川で洗ったりという、マニュアルに反するやり方が問題になっていますが、ぼくも、それは枝葉末節の問題で、今の除染の方法でいいのかどうかを、まず考えるべきだと思います。
原発と放射能の本 15 山口幸夫さん著『ハンドブック 原発事故と放射能』岩波ジュニア新書
岩波「ジュニア」新書は、「ジュニア」という割には、意外に、「大人(おとな)」向きのいい本が多いのですが、これもその一冊だと思います。今年11月に出た最新刊です。
いま一番必要なことは、原発・核兵器推進勢力にだまされないための基礎知識と基礎概念だと思いますが、この本は、そのためのだいじな一部になると思います。お勧めです。
もちろん、これを盲信するのではなくて、自分で自己判断して、自分の中に取り込んで、錬って自分の物にしないといけませんが。
目次は以下の通りです。
第1章 事故はどういうものだったのか
第2章 放射能とはどんなものか
第3章 被曝とはどういうものか
第4章 エネルギーについて知っておきたいこと
原発と放射能の本 ふくしま集団疎開裁判の会編『いま 子どもがあぶない』本の泉社、2012年10月1日
今年4月26日に福島県が発表した子どもたちの甲状腺調査、2回目の発表で13師匠村の子どもたち3万8千人の36%に「のう胞」「結節」が見出されたと発表されました。
郡山市の14人の小中学生が、放射能からの子どもたちの避難(「集団疎開」)を求めて昨年6月に提訴した仮処分申し立てで、仙台高裁での控訴審が10月1日から始まりました。ネットで検索したら、どうも控訴審も多難なようです。
この本では、郡山市の放射線など、申し立ての根拠を詳しく説明しています。そして郡山市がすべて「不知」と答えていることも。また郡山市は、移住の自由はあるのだから不安な人は自主的に(つまり自分の費用で)引っ越せばいいと答えています。
郡山市の放射線量は空間線量率で0.65~2.15μSv/hです。換算すると、年間で5.694~18.834mSvです。
日本の法律では「放射線管理区域」は、0.6μSv/h以上です。つまり郡山市の一部を除いて、ほぼ全域が「放射線管理区域」になります。
年間10mSvだと、10年間で0.1Sv、50年間で0.5Svになります。
郡山市で昨年3月に計っていた郡山合同庁舎3階でのデータでは、最大8.26μSv/hでした。ところがこのデータの続きは、途中で1階に移動したので2.7倍になっています。修正すると22μSv/hにもなります。
これを積算すると3月12日から5月25日までで4~9ミリSvになります。
チェルノブイリでは、強制移住、希望移住(希望車は全員、住居・職を保証)に段階的に区分されています。日本では強制移住だけで、その線の外側は「自費で移住」だけです。
日本でどうしたらいいのか?別途、考えていることを書きます。
まずは、みなさん、この本を読んでください。
原発と放射能の本 13 肥田舜太郎さん著『内部被曝』扶桑社新書、2012年、定価724円+消費税、
この前(9月中旬)に本屋さんで見付けてすぐに買いました。
以前に。「原発の本 肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』ちくま新書、2005年 2012年03月16日 21時24分09秒 | 原発と放射能の本 」を紹介しましたが、この本は今年出版ですから、3.11以後でそのことも書いてあり、必読だと思います。
肥田さんは「広島で被爆して以来、6000人の被爆者を診てきた95才の医師が警告」と帯にあります。
目次は以下の通りです。
第1章 原発事故の影響でこれから何が起きるのか
第2章 体を侵す放射線障害
第3章 低線量被曝のメカニズムを解明した「ペトカウ効果」
第4章 低線量・内部被曝の怖さ
第5章 被爆体験と「原爆ぶらぶら病」
第6章 “一億総被曝社会”を生きるには
第7章 原発のない社会に向けて
原発と放射能の本 12 黒田和夫さん著『17億年前の原子炉 ー核宇宙化学の最前線ー 』ブルーバックス、講談社、1988年(昭和63年)2月20日第1刷、新書版、204ページ、定家580円
本を片付けていたら、やっと探していたこの本が出てきました。
戦後、アメリカに渡って核宇宙化学を追究し続けた著者の「謎解き」本です。推理小説のように、いや推理小説以上におもしろいです。ただし、化学式や元素のデータを自分で考えてみる人には、です。
「超新星カリフォルニウム254」仮説、「プルトニウム244」の謎、ゼノンの謎、「17億年前の天然原子炉」の謎…などなど。
とくに黒田さんは、むかし地球に天然原子炉が存在した可能性を理論的に証明した論文を書き、その後に、アフリカのガボン共和国のオクロ鉱山のウランが、17億年前に天然原子炉だったことが実証されました。
いまはウランの中の、核分裂しやすいウラン235は0.7%ですが、ウラン235は半減期が短いので、むかしはもっと多量にありました。20億年前にはいまの10倍近くの6%ですから、原子炉級の濃縮ウランです。
それが、生命により酸素が発生したことで酸化ウランになり、水で堆積して、一定の量が地層に蓄積したことで「天然の原子炉」となる条件ができたのです。
つまり、シカゴでフェルミさんが創った黒鉛原子炉は「地球最初の原子炉」ではなかったのです。
原発と放射能の本 11 広河隆一著『チェルノブイリから広島へ』岩波ジュニア新書、1995年
いま福島原発事故の放射能について、心配しなくてもいい、という学者達と、人間の健康に危険だという科学者の意見の相違は、昨年から私たちがよく体験し、この2種類の学者の違いは何なんだろうと、考えてきたと思います。
その違いが、すでにチェルノブイリ事故や、はるか以前の広島原爆の時から、ずっと続いていたことを、著者の広河さんの実体験と詳細なデータに基づいてわかりやすく解明した、とてもいい本です。
この本が1995年に出版されていることに、とくに留意してください。ぼくがこの本を買ったのは何年なのか、わかりませんが、たぶん興味があって買ったのだと思いますが、入念に読んだ記憶や形跡がありません。残念ながら。
広島、チェルノブイリ、福島と続く、事態を防げなかったのは、多くの人がそうだと思いますが、痛恨の極みです。ずっっと、何もしてこれなくて、ごめんなさい。
原発の本 キッズ・ボイス編『福島の子どもたちからの手紙』朝日新聞出版、2012年2月29日第1刷、110ページ、定価本体1300円+消費税
福島から避難した子どもたちと、福島に残った子どもたちのいろんな声が聞ける本です。この中から、少しだけ、少しだけ、引用しますが、ぜひ全文を読んでください。もっと、いろんな声を聞く努力をしましょう。そして考えましょう。話し合いましょう。
「ママ、ほうしゃのうっていつなくなるの?」「マスクをしたくない」
「僕はおとなになれますか?」
「原発のせいで外であそべません。ふうひょうひがいでやさいがたべられません。どうにかしてください」
「原発がなければ今は福島から山形に来ることもなかったし、転校することもなかったし、福島の友達とみんなで遊べた。」
「かんりょうのみなさんへ ①私たち福島の子どもたは原発事いらいずーっと外遊びをしていません。早くじょせんをしてください。 ②原発事故でひなんする人は、学校の友達、家などをうばわれました。せきにんをとってください。」
「・きれいな空気がすいたい ・なんで、原発をこんなにたくさん作ったのですか。」
「はやくふくしまであそびたいな なわとび すなあそび てつぼう ぶらんこ じてんしゃ したいなー」
原子力帝国のみなさん、官僚のみなさん、政党のみなさん、電力会社のみなさん、科学者のみなさん、マスコミのみなさん、あなたは、どう答えますか?
、
今日紹介するのは、高木さんの最大傑作(と、ボクは思います)でる『プルートーンの火 ー地獄の火を盗む核文明ー』<教養文庫>、社会思想社、1976年、です。
自分の部屋を少しづつ片付けていますが、数日前に、本の地層を発掘していたら、やっとこの本が発掘されました。うれしいです。また、あえたね!
核化学者である高木さんの才能が最大限発揮されていて、ふつう原発の本というと、原子炉や原子力発電所の内部の分析の範囲を出なくて、視野が狭いのですが、この本は宇宙や地球の起源から、元素の起源と、視野を遠く、深く扱っていて、雨宮智彦の一押し、お勧めです。
ただし、この文庫本自体も絶版なようで、高木さんの著作集(第4巻に所収)も、出版社の七ツ森書館で品切れなようです。
もし、古書店で出ていたら、即、買いましょう!
ぼくは、今、この本を読みながら、自分が講師をするはめになった「いのちと原発」市民講座のレジュメを錬っています。
基本は、原発の問題以前に、自然・宇宙・地球と人間との関係です。
そういう基本問題がかいけつされていれば、原発やエネルギーの問題は応用問題として、簡単に解けるという気がします。
なお「原発ゼロの一点で共同する」のであれば、内容的に「原発ゼロ」「反原発」「脱原発」を言い続けた高木仁三郎さんと共同するのは当然のことで、高木さんの著作を無視するような「文献一覧」は、歴史無視・歴史破壊の蛮行として、糾弾します。
「立場の違いを超えて」「原発ゼロの一点で共同する」という2点がウソでないなら。
ウソでないですよね?
まだ「立場の違い」を気にする人が、いるようです。ほんとです。それは、中央委員会の言明と違いますよね?
あなたが、ほんとうの「反原発」「脱原発」「原発ゼロ」なら、再稼働、じゃない、再検討、すべきです。
つまり原発をなくしたいんじゃなくて、あなたの主張を通したいだけなんでしょうか?
自分の全主張が通るより、原発をなくすのが大事か、逆に、原発をなくすより、自分の全主張を通すことが大事か、ですね。
原発の本 朝日新聞特別報道部/著『プロメテウスの罠』学研、2012年3月13日第1刷、269ページ、定価1238円+消費税
今年の3月11日を前後して、福島原発過酷事故の本がかなり出版されました。ボクの読んだ本を紹介していきます。
この『プロメテウスの罠』は「朝日新聞」に昨年10月から連載された記事に加筆した本です。非常に優れたルポなので、できるだけ多くの方に読んで頂きたいです。
以下、目次を紹介します。
第1章 防護服の男
どこへ逃げれば安全か、誰も教えてはくれなかった
無人となったふるさとへ、再び帰れる日はくるのか
第2章 研究者の辞表 (注:木村さんのことです)
住民は本当の数値が知りたかった
全く生かされなかったSPEEDIのシステム
第3章 観測中止令
異常な放射能数値を示すさなかの観測中止令
国会議員の登場で状況一変
第4章 無主物の責任
広島・長崎の内部被曝の悲劇が繰り返される可能性
首都圏にも広がる内部被曝の不安
第5章 学長の逮捕 (注:ベルラーシ共和国の医師のことです)
チェルノブイリ周辺では、今も続く子どもの甲状腺異常
態勢の整わない放射能の検査システム
第6章 官邸の5日間
「撤退を食い止めるには東電に乗り込むしかない」
首相官邸のいちばん長い日
決死隊をつくってでも
いちばん、ビックリするのは、第4章で紹介された「無主物裁判」です。
2011年8月に福島第一原発から45km離れた二本松市のゴルフ場が、東電に放射能汚染の除去を求めて裁判を起こしたのです。
被告となった東電は、なんと「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任をもたない」「放射性物質はもともと無主物であったと考えるのが実態に即している」
すごいですね!
「ゴーマニズム」の漫画家さんでも、びっくりするような「ゴーマン」宣言!
さすがに、裁判所も「無主物宣言」は無視したようですが、裁判所は、きちんと、こういうアホには反撃すべきでした。
そして裁判は、除染も賠償も、国がいま考えているのだから、それを待て、という判決でした。これでいいのでしょうか?
医師で被爆者の肥田舜太郎さん(94才)は、この記事の同じページで「日本中除染するのは不可能だと国が判断したんじゃないでしょうか…」と言っています。たぶん、そうでしょうね。
そして、たぶん、福島市(人口28万6千人)の避難は不可能なので、福島市への避難指示は出されなかった、のでしょうね。
原発の本 肥田舜太郎・鎌仲ひとみ『内部被曝の脅威』ちくま新書、2005年6月10日第1刷~2011年10月20日第10刷、202ページ、定価720円+消費税
肥田舜太郎さんは広島で被曝して、現在も各地で講演しているお医者さん。鎌仲ひとみさんは、映画監督です。
内部被曝、低線量被曝についての、いちばんわかりやすく、科学的な本だと思います。
広島の被爆者と原爆ぶらぶら病、広島での白血病・ガンの多発、世界の核実験場・ハンフォードなどの各施設周辺の汚染と人間への影響、そして国際指針の意味と問題点、外部被曝と内部被曝の違い、核実験による放射性降下物による世界的なガンの多発の可能性、アメリカの原子力発電所周辺での女性乳がん死亡者の増加、などなど、みなさんも読んで自分で考えましょう。