戦争と平和 8 戦争と平和の本 3 白松繁『そのとき、空母はいなかった』文藝春秋企画出版部、2013年
白松(しらまつ)繁/著『そのとき、空母はいなかった ー 検証パールハーバー ー』文藝春秋企画出版部、2013年5月15日初版第1刷、597ページ、定価本体1905円
1941年12月8日(アメリカ・ハワイ時間で12月7日)、日本海軍は、ハワイ・パールハーバー(真珠湾)のアメリカ海軍基地を攻撃した。
この本は、以下のことを説明している。
① この「奇襲」はアメリカ政府が「日本軍に先に撃たせる」戦略に基づいて、日本海軍の奇襲を知っていたアメリカ軍が見て見ぬふりをしたのであること、を当日までのアメリカ軍の動きとアメリカ軍人の言説に基づいて証明したこと。
② アメリカの暗号解読を詳しく検証して、確実に日本の軍と政府暗号を解読していたことを証明したこと。
③ ハワイのアメリカ軍基地に設置された新鋭レーダーは日本機の飛来を探知していたこと、日本の潜水艇がアメリカ海軍によって攻撃されていたこと、この2つとも警報が正常に出ていれば真珠湾の被害は最小限にとどめることができたこと。
④ 日本軍の攻撃を「予測」していたアメリカ軍は、当日、新鋭の「空母」と「重巡洋艦」だけを真珠湾から外洋に出してしまい、真珠湾基地に残っていたのは、古い戦艦などであったこと。
⑤ 独ソ戦争で、ナチス・ドイツのソ連攻撃が限界点に達した、同じ12月にどうしても日本に開戦させて、日本を戦争に引きずりこまなければ、ならなかったこと。「ハル・ノート」は、日本の開戦決意をあせるために出された。
⑥ 当時のアメリカ国民は多くが戦争反対で、これを変えてアメリカ国民を戦争賛成にするためには日本の「卑怯な一撃」「だまし撃ち」を必要としていたこと。
以上、①~⑥ は、ほぼ事実であろこを、この本は証明していると思う。
各論については触れる機会があると思います。
☆
あとの補足。
検索したら、自分で以前に「本と映像の森」で採り上げてました。以下、再録です。
「本と映像の森 260 白松繁『そのとき空母はいなかった』文藝春秋
2013年12月08日 18時06分40秒 | 本と映像の森
本と映像の森 260 白松繁さん著『そのとき空母はいなかった ー 検証パールハーバー ー 』文藝春秋、2013年5月15日初版第1刷、399ページ、定価本体1905円+消費税
今日は2013年12月8日、日米戦争開戦の日です。
1941年(つまり72年前)のこの日、日本海軍は、アメリカ太平洋艦隊の根拠地であるハワイ・真珠湾を「奇襲攻撃」し、停泊していた戦艦8隻のうち、4隻を撃沈、3隻を大破、1隻を中破しました。
「壊滅的な打撃」と書いた本もありますが、実は、日本海軍の航空機攻撃で明らかになったように、今後の戦闘に重要な「空母」は、アメリカ海軍の空母8隻のうち太平洋にいた空母3隻は、3隻ともハワイを出港中で、日本軍は「米空母3隻」を「打ち漏らした」ことになります。
実は空母だけではなく、この本で初めてボクも知ったことですが、残っていた戦艦8隻は、第1次大戦中か1次大戦後数年で建造された艦歴20~30年の旧式戦艦でした。
アメリカの最新鋭重巡洋艦は8隻は、空母と同じように、外洋にいたのです。
つまり、アメリカ海軍にとっての虎の子たちは、ちょうど真珠湾奇襲の瞬間に真珠湾にいなかったのです。
これは何故か、著者は「日本海軍が真珠湾を奇襲できた理由」「アメリカ海軍が空母をその時、真珠湾から出港させていた理由」を事実と証拠を探し、論理的に組み立てていきます。
第1部 そのとき、空母はいなかった
第2部 検証・日本海軍無線封止・米海軍無線傍受
第3部 日本外交及び海軍暗号被解読の検証
第4部 FDRの勝利戦略と代償
終章 ワシントンは知っていた
著者の白松さんの言葉「真珠湾攻撃を敢行した日本が、填められた/騙されたなどの被害者観をベースにしたルーズベルト陰謀論に固執していては、真珠湾の歴史を真に学んだことにならない。真珠湾に至る経過とそこで起きた事実を正面から捉え、彼の強さと我の弱さをしっかりと見据えてこそ、アメリカの戦争戦略の真骨頂が見えてくる」。そのとおりだと思います。
そして、帯に書かれたロバート・B・スティネットさんの言葉「事実の徹底検証でルーズベルトの陰謀論を越えた本書は、日米の真珠湾論争に終止符を打つものである」これも、その通りと思います。
・スティネットさんはルーズベルトが日本に巧妙に攻撃させたという衝撃的な本『真珠湾攻撃 ルーズベルト欺瞞の日々』(日本語訳、文藝春秋)を書いた元米海軍軍人です。
アメリカによる日本暗号解読の問題、ハワイでの日本人観測者(スパイ)の問題、アメリカ軍の偵察飛行、レーダーの問題、アメリカ政府・アメリカ軍内での当時の命令・指示の問題、
あまりにも、おもしろいので、いつか詳しい経過と事実は紹介したいと思います。
なお、太平洋戦争を最初に開始したのは日本海軍ではなく、時間的に、イギリス領マレー半島のコタバルに敵前上陸した日本陸軍です。
☆
2013年12月6日、「不特定秘密保護法案」が参議院本会議で賛成多数で可決、成立しました。これは戦後、「平和と戦争が均衡していた」戦後日本が、決定的に右傾化し「戦争」へ傾いていく瞬間だと思います。
けっして「戦後平和日本」などと甘い幻想は抱いてはいませんが。
平和勢力(ボクも平和勢力です)の人たちも、きちんと「戦争になったらどうなるか」、具体的なシミュレーションをしてリアルに発言して欲しいです。
それで「本と映像の森」でも平和と戦争の本を取り上げていきます。元々「ピース浜松」で取り上げる予定でしたので、ここでは書いてきませんでしたが、これからは、ここで戦争と平和の問題も扱っていきます。」