新・本と映像の森 7 結城充考『エコイック・メモリ』光文社文庫、2012年 20220410
結城充考(みつたか)『エコイック・メモリ ECHOIC MEMORY』<光文社文庫>、光文社、2012年8月20日~2014年12月20日4刷、546ページ、定価800円+、原書2010年8月光文社
結城充考さんのクロハという若い女性刑事を主人公にした警察小説の第2作です。
クロハの生きている空間や捜査する現場の不思議に雨が多く、暗い質感がとてもいい。犯人の出没して解決のカギになる仮想空間も同じように暗い。
暗いというのは陰惨とか未来は閉ざされているという意味ではない。主人公の人生が明るいものでないということ。クロハはそういう人生を懸命に生きている。
小説を照らしているのは、主人公クロハ(本名:黒羽悠)の人生の基調とともに、クロハのまわりで何故かクロハを助ける人間たち(けっして善人ではない!)の存在です。
彼らは何故クロハを助けるのか。この『エコイック・メモリ』でのユキやサイ、警官のカガや佐藤、また前作『プラ・バロック』でのタカハシなど。
サイの部下がサイに言った。クロハが「きれいだ」と。
犯人のリアルな実像も非常に興味深いです。この2つのことは前作を取り上げるときに、また考えたい。
警察小説や推理小説は、かなり出來がばらつきがあって、当たり外れが大きいのです。結城充考さんのは、ピンポイントで2作とも大当たりです。
警察小説が好きな人には推薦です。ただこの色調・質感が好きかどうかは人によるかな。