新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

医学部新設の是非は?:医師は不足していると思いますが・・・

2013-03-11 22:15:55 | 医療

ちょっと時間があるのでもう一つ書きます。

 

このblog(2006年より始めた前のものも含む)は基本的に「医師不足」を認識してそれを世間に訴える目的で書き始めたBlogです

実際に医師・看護師が不足し業務内容が忙しい地域の1っとして埼玉県や千葉県といった首都圏近郊の県があります。東北・北海道などでも不足している場所は多々あると思います。

 

そして基本的に諸外国と比較しても医師数は少ない日本で医師を増やさなくてよいという考え自体がおかしいですし、たぶん「宇宙」という新しい領域に向かうのであれば「医療」はさらに発展させないといけないと思います。

新しい環境は新しい病気を生み出し、ついでに言うなら「がん」はなくなると思っている僕ですが、ウイルスをはじめとした感染症は駆逐できないと思いますので、そういう備えも考えていないといけません

 

ということで、今日の記事です。

 

 自民党の国会議員連盟が東北地方での医学部新設を政府に求める方針を決議したことなどを受け、全国医学部長病院長会議は11日、医学部新設について慎重な対応を求める要望書を下村博文文部科学相に提出した。要望書では、医学部新設で医師数の増加を目指すのは「百害あって一利なし」と指摘。医師不足に対しては、既存の医学部の定員の増減で調節するのが「最も合理的」と強調している。

 要望書では、定員増での対応の方が望ましい理由として、▽将来の医師需要状況の変化に応じて、迅速かつ容易に入学定員を調整できる▽現在ある教育・研究施設や人的資源が活用でき、必要最小限の費用投入で教育の質と量を確保することができる―などを挙げている。 
 一方、医学部を新設した場合については、地域の基幹病院に勤務している医師を教員として異動させる必要が生じ、病院勤務医の不足が加速するとの懸念を表明。人口の減少などに伴い医師過剰になった場合に、新設された医学部の廃校が難しいことも問題視している。

 提出後に記者会見した同会議の小川彰顧問(岩手医科大学長)は、「病院の勤務医を教員に振り替えることによって、地域医療が崩壊する」と訴えた。その上で、「医師の地域偏在・診療科間偏在(の解消)が、医師不足対策で最も重要。医学部新設にエネルギーを費やすのではなく、今のシステムを変えていただきたい」と述べた。

■既存の医学部定員も「様子見を」
 会見ではまた、既存の医学部の定員増についても慎重な検討を求めた。

 別所正美会長(埼玉医科大学長)は、「限りなく、どんどん増やせばいいというわけではない。今くらいの数でしばらく様子を見て、さらに増やせるかどうか考える必要がある」と述べ、2008年度以降の定員増などの効果検証が必要との考えを示した。

 来年度の全国の医学部定員は今年度から50人増の9041人で、増加に転じた08年度以降の累積では1416人の増加になる。【高崎慎也】

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こんな話は今更いう話ではなく、とっくの昔に話し合われているべき内容だと思っています。

実際に僕はまだ20代でしたが、2008年1月に行われたある会合で医師不足に対応するために「医学部増設」という話に対しては、「いますぐ医学部を増設するのは難しく、教員数が絶対的に足りない」という意見を有名な先生に伝えました。

自分の過去の記事にもあるはずなんですがどこにあるのやら・・・・。

最近のだと・・・医学部新設の良い点は?などなんですが・・・

医局制度改革・医学教育改革(45)

 

実際には医学部新設を行うには弱りすぎている日本の医療というのが事実で、できるならば不足しているのだから増やすことを考えればいいという単純な話になります。それをその原因を作っている方々が何を言っているのだろうとは思っております。

僕はたぶん東大の上先生たちが言っている「高齢化による医療需要の上昇」が「人口減少による需要の減少」よりも顕著になると思っていますし、新たな領域に手を広げる余裕がなくなると思いますよ。今のままであれば。

 

自分たちの活動が狭まるのであれば・・・もしくは広がると同時に他と混ざる(まぁ、島国ゆえの現状という可能性もありますので)のであれば、予想に反すると思いますが・・・。今のところ外れたことがないし・・・と思っているところです。

 

今は少しずつ体力をつけて、本格的な治療(本当に必要な医師数を見極めて、医師数を増やすこと)が開始できるようにすることが第1、第2に時間的距離を縮めることで先日のようなこと(搬送36回拒否、男性死亡 救急受け入れまで2時間 埼玉・久喜http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130306-00000123-san-soci)とかがないようにもしないといけませんし。

 

この日じゃないですが、1月に当直してた時に7件目、14件目(ほか、直接来院など)というのがありました。もうどっちも受けないとしょうがないなぁと思って受けましたが…結構、そういうのは多数あります。夜中の救急搬送依頼もやはり14,5件目だったので受けたかったもののベッド数や主診療科の判断もあり、断りました。それは僕だけでは診れない領域のものだったので。

いろいろ思われる方々がいらっしゃると思いますが、専門外と判断して患者さんに余裕があるのであれば・・直接専門領域を診れる医師のところに行ったほうが患者さんのメリットになることもあります。結局、他の病院で時間をつぶした上に搬送先を探して、もう一度病院に救急車に来てもらって、搬送するということになりますので。

ですから、受け入れ不能…というのは実際にあることです。

http://kawagoeerc.jimdo.com/2013/03/05/25病院に36回断られる-埼玉の男性死亡/

救急対策 埼玉北東部医療協議会:すぐに忘れられないように

 

そういうことが起きている状況下で医師が十分にいるという認識には僕はなりませんが、医師数を増やす対策(僕は大学病院の強化、連携など)や搬送能力の強化などをとりあえずはやるしかないのかなと思っております。

 

話が脱線しましたが、医師数に関しては基本的に「不足」しているというのは事実だと思いますし、それに対して「医学部新設」よりは「大学の強化、医学部定員増」での対応のほうがよいとは思っていますが、まだまだ不足していると思っています

 

こんな議論よりも…さらに国家試験やCBTのこともはじめ、医学教育の根底からすべて作り直さないと話にならないのでしょうけど・・・・

政治家を目指す医師がいるのは良くわかりますね。僕もこのままではいけない、何かを変えないととは思いますし。

 

ただ、医学自体の面白さが今は一番なので…どうにか上のほうの方々が本気で取り組んでほしいと思います(本当に心から考えていて、全員が意見を戦わせればこんな話はもっと昔に出ていていいはずのものですから。今団こんな話をしていることが、政治をしているだけで本気で取り組んでいないことの表れだと思っています)。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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アザシチジン(ビダーザ)の話

2013-03-11 21:38:18 | 医学系

こんばんは

 

昨日は当大学の卒業パーティがありまして、二次会から参加してきました。二次会といっても各診療科ごとにやっているわけですが、血液内科は6年生3名と5年生2名が来てくれて、それなりに盛り上がっておりました。

 

血液内科の若手が少ないというのは事実ですが、最近うちの大学(血液内科)はコンスタントに人が増えていて、第二次黄金期に向かっているのかもしれません

 

まぁ、そうなるといいなぁと思っています。

 

さて、ずいぶん昔に「アザシチジンで困る・・・」という記事を書きました。

実際に保険適応がしっかりあって・・・ある意味エビデンス(根拠)がしっかりしている治療薬は他にないですよね(実はエビデンスではタンパク同化ステロイドやビタミンDやビタミンKよりも免疫抑制療法のほうがありますが、日本では保険適応はないし)。

 

アザシチジンについては昔も書いたような気がしますが「高リスクの骨髄異形成症候群(MDS)」に対して使用する薬剤です。高リスクというのはIPSSという分類法でInt-2、High riskに分類される患者さんたちで、生存期間中央値(50%の患者さんがなくなる期間)が診断されてInt-2が1.2年、Highが0.4年です。

 

これらの患者さんたちに対し、それまでの一般的に行われてきた治療法では15か月で半分の患者さんがなくなりましたが、アザシチジンのグループは24.5ヶ月と明らかな生存期間の延長を認めました。

それ以来、高リスクのMDSの標準治療とされています。

 

最近、低リスクにもアザシチジンを使用する臨床試験などもやっている施設があるようですが、今のところは様子見をしたいところですね。理由は何もしなくても生存期間中央値が5.7年(low)、3.5年(int-1)はある低リスクMDSの患者さんたちにアザシチジンを使用して、有害事象が多くなると嫌だからです。例えば成おzン中央値が10年以上になった…というなら考えます。あとは輸血依存がほとんどないならば考えますが、有害事象がない薬ではないので二の足を踏みますね。

治療というのはメリットがデメリットを大きく上回るからこそ行います。抗癌剤治療の類や手術、放射線治療などすべてそうです。体に少なからずダメージがいきますので、それを超える効果がないといけません。

ですので、メリットが確実に出るだろうと思う「高リスク」群はともかく、低リスクに使用する根拠はまだないですし…。低リスクでも特殊な状況(輸血依存で、それをどうにかすることが大きく患者さんのメリットになるなど)なら、メリットがデメリットを上回ると思いますが。

 

さて、アザシチジン。学生さんには説明するときにはこんな風に言っています。

「アザシチジンは脱メチル化薬と言われる仲間なんだけど、どういう薬かわかりますか?」

だいたい・・みんなよくわからないといいます。

 

簡単に書きますが脱メチル化…というのにはこういう意味があります。

「遺伝子」というもののなかに「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」というものがあります。

 

「がん遺伝子」というのは増殖を高めるようなものが多く、「増えろ~。増えろ~」と命令してきます。

 

がん抑制遺伝子は「あれ、これはおかしいぞ。増殖ストップ」とか「あぁ、もうこのままではがん化して、皆に悪い影響を与えてしまう。そうなる前に死んでしまおう」など…どうにかしてがん化を起こさせなようにするグループです。

 

そりゃそうだろうといわれると・・・こまるのですがw 

 

メチル化…というのは遺伝子に「メチル基」というのが引っ付いたときに、うまくその遺伝子は働けなくなります。そういうのをエピジェネティックな異常…とかって言いますが、要はメチル基を取り除けば「がん抑制遺伝子が復活!」ということになるわけです。

 

骨髄異形成症候群やそこから進展した白血病などは「増殖がゆっくり」であることが多いです。どちらかというと異常な細胞が死ななくなったようなグループが多いので。

がん遺伝子…の異常というよりは「がん抑制遺伝子」の異常のような感じがしませんか?

 

まぁ、実際に調べてみるとMDSの細胞では、がん抑制遺伝子のCpGアイランドと呼ばれる領域にメチル化が起きていることがわかってきて、アザシチジンを使うようになったわけです。

 

すなわちアザシチジンの狙いは「メチル化によって機能しなくなったがん抑制遺伝子を復活させること」です

 

他にも殺細胞効果があったり・・・もしかするとBloodなどの有名な雑誌には出ていますが、骨髄移植後に使用するとGVL効果を高めGVHDを減らす(要するにいいことばっかり)とかいうデータも出てきています。

 

まぁ、アメリカのほうで治験が動いているみたいですが。

 

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