こんばんは
昨日、今日と比較的病棟などが忙しく大変でした。…というよりも、研究中心で生活している僕が病棟に出っ張る必要があるほど忙しい状態だった・・・というべきでしょうか。
ただ、周りの人間は異口同音に言います(病棟が移動になった前副師長と廊下ですれ違った時にも言われた)
「先生が病棟に行ったから、病棟が大変だったんだって?」
「逆です。病棟が大変だったから、僕が行ったんですよ」
まぁ、いいのですが。
さて、本日はまずこちらの記事を紹介します。
<iPS>赤血球量産の技術開発 輸血用血液製造に期待
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130322-00000013-jij-sctch
毎日新聞 3月21日(木)20時22分配信
あらゆる細胞になる能力を持つヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から赤血球を豊富に作る技術を、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)の中村幸夫細胞材料開発室長らが開発した。実用化されれば、少子高齢化で不足が懸念される輸血用血液の製造につながる可能性がある。21日に横浜市で始まった日本再生医療学会で発表した。
中村さんらは、赤血球を次々と生み出す「赤血球前駆細胞」をマウスで既に作製しており、これをヒトiPS細胞に応用した。貧血治療に使われる薬「エリスロポエチン」の成分など血液増殖につながる物質を使って培養し、同様の前駆細胞の作製に成功した。
この前駆細胞の集まりを赤血球にしようとすると、約25%がうまく変化するが、残りは不完全だったり、前駆細胞自身が死んでしまったりするという。前駆細胞自体はほぼ無限に増えるため、輸血に必要な量の赤血球は作れるが、コストを抑えるのにさらに技術改良が必要で、実用化には数年かかるという。
iPS細胞から作った組織は、ヒトに移植すると異常な形で増殖してがん化する恐れがあるが、赤血球は他の細胞と違って核がなく、自分で増殖しないためその心配はない。ほぼ万人に輸血可能なO型Rhマイナスの赤血球を作って貯蔵すれば、ほかの血液型にも対応できるという。
中村さんは「前駆細胞から赤血球を作製する効率を、現在の25%から100%に高めることが必要で、さらに研究を続けたい」と話している。【野田武】
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iPSで白血球培養=院内感染治療など期待―北海道大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130322-00000013-jij-sctch
時事通信 3月22日(金)1時23分配信
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って、細菌の増殖を抑える特定の白血球を大量に培養することに、北海道大大学院の若尾宏准教授らの研究チームが成功した。薬が効かない院内感染や多剤耐性結核の治療法につながる可能性があるという。米科学誌セル・ステムセル電子版で22日発表した。
研究チームは、結核菌の感染から体を守るヒト白血球の一種「マイト細胞」に着目。この白血球はそのままでは培養できないため、いったんiPS細胞に変えて大量に増やした上で、マイト細胞に分化させた。免疫不全のマウスに移植したところ、細菌の増殖を抑える効果が確認できたという。
iPS細胞を作る際には遺伝子を傷つけない特殊なウイルスを使うため、移植後がんになる危険もないとしている。
院内感染の原因となるバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)や多剤耐性結核菌など、薬剤では治療が難しい病気で治療に活用できるという。若尾准教授は「iPS細胞で新たな細胞治療を実現したい」と話している。
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マイトって何かと思ったらmucosal-associated invariant T cellということか。マイト細胞と書かれても何が何だかわからなかったw
http://www.hokudai.ac.jp/news/130322_pr_med.pdf
さて、輸血に関してですが本当にiPSから輸血用の血液が作れたらよいですね。
実は輸血もわかっていないことがたくさんあります。有名なアレルギーの話もありますし、TRALI(輸血関連急性肺障害)などもあります。TRALIは基本的に献血者の血漿成分と患者さん側の関連があるといわれていますが(抗顆粒球抗体が原因と言われながらも、実際の抗体の保有頻度とTRALIの発生頻度に違いがあり、まだ分からないことばかりです)、こういう心配もなくなりますよね。
実はFFP(新鮮凍結血漿)や血小板のほうがTRALIの可能性は上がりそうなんですけど、呼吸困難の発生頻度は赤血球もそれなりに報告されているし…よくわからないですよね。
http://www.jrc.or.jp/vcms_lf/iyakuhin_shiryou080925-03.pdf
ちなみに上のpdfの一番下のあたりにも書いていますが、女性の血漿製剤は基本的に使われていないです(イギリスの話になっていますが、日本でも血小板は使われていますが、血漿は男性のみのようですよ)。そういう意味では血小板には血漿が必ず混入するんですよね。それがまた問題です。
妊娠中の女性の方も抗顆粒球抗体が出る可能性があるので献血はしてはいけないことになっています(ほかにもいろいろ理由はあると思いますが)
http://medicalfinder.jp/ejournal/1543102327.html
http://www.tokyo.bc.jrc.or.jp/current/index2.html
ということで、安全な輸血製剤を作るという意味では本当に素晴らしい話だと思います。
一番輸血をしているであろう血液内科医だから思うことかもしれませんが・・・。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。