新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

TPP参加後も医師が医師として生きれる社会であってほしい

2013-03-16 22:10:26 | 医療

もう一つ追加です。

 

TPP参加に関して、Yahooにこんな記事がありました。

 

 TPPを巡っては、公的医療保険制度への影響が焦点の一つに浮上している。過去の通商交渉で米側が医療保険分野への民間参入拡大を強く求めてきた経緯から、日本医師会(日医)や自民党の一部議員が「公的保険のカバー範囲が縮小し、国民皆保険が崩れる」と懸念しているためだ。ただ、政府は「医療保険制度は対象外」と説明し、議論はかみ合っていない。そうした中、厚生労働省は「米側の関心は医薬品や医療機器のシェア拡大」との見方を強めている。

 日本の医療の特徴は、全国民が公的保険に加入し、等しい医療を受けられる「国民皆保険」にある。保険診療と保険外診療を組み合わせる「混合診療」も原則禁止だ。一方、米国の医療は民間保険に入るのが基本。所得の低い人は高度な医療を受けられない。

 外国の保険会社が広く参入したり、営利企業が病院経営に参画したりすれば、高額の保険外診療が増えて病院にかかれない患者が生まれ、不採算の病院も増える--。TPPを警戒する日医は15日、横倉義武会長名で「国益に反すると判断された場合は速やかに撤退する選択肢も持つべきだ」との声明を出した。

 反対理由には投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項の存在もある。不利益な扱いを受けた企業が相手国を訴えられる仕組みだ。国民皆保険を参入規制とみなされる、との不信もあり、自民党のTPP対策委員会は13日、皆保険を「聖域」の一つに位置づけた。

 ただし、TPP交渉を担当する米通商代表部(USTR)のカトラー代表補は昨年3月、東京都内での講演で、「混合診療を含めて公的保険制度外の診療を認めるよう求めるものではない」と述べている。これらの発言をもとに安倍晋三首相は15日の会見でも「世界に誇る国民皆保険を基礎とした社会保障制度を断固として守る」と火消しに努めた。

 その点医薬品に関しては、新薬の成分情報を公開せずに済む期間の協議がTPP交渉参加国間で進んでいる。米国の巨大製薬企業群は、日本市場でのシェア拡大に躍起で、厚労省幹部は「米国は新薬の特許権保護の強化を目指している」と読む。さらに、販売好調な新薬の公定価格を下げていく日本の仕組みについても見直しを迫ってくるとみている。【佐藤丈一】

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これに関しては「医者」としての実感ですが、絶対に守ってほしい事項です。

 

過去にも書いてきましたが、少なくとも患者さん1人1人の「生存するチャンス」は平等でなくてはならないと思っています。お金や立場で「治療」が異なるというのは「平等」とは言えないと思います。

 

医者としても患者さんが治療費を払えないからと言って、有効な治療法があるにもかかわらず行わないというのは「医師であることを捨てている」ような気がしてならないですし、そういうことを要求する社会にはなってほしくないです。

 

日本の医療は本当によいと思います。

まぁ、ただ本当に医師は足りてないですから・・・そこはどうにかしてほしいところですが

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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大塚キャスターのALL再発(ちょっとALLの移植適応について)

2013-03-16 21:18:03 | 医療

こんばんは

 

今日はうちの大学の内科外来の引越しがありました。本当は運搬は業者さんがやってくださる予定だったのですが、うちのブースが最後から2番目だったので、いそいそと自分でやっておりました。本当は監督する役割だったのですが。

 

ある程度、仕事が進んだ時点で教授も来て(講師の先生も来た)、外来ブースの配置をおおむね決定して、午後にパソコンなどの確認をし終了しました。

 

さて、今日は少し気になる記事を。大塚さんがいい人だから、このニュースは大変残念です

 フジテレビで4月から始まる情報新番組「アゲるテレビ」で本格復帰予定だった大塚範一キャスター(64)が16日、定期検査の結果「急性リンパ性白血病」の再発が判明、治療に専念することになった。同番組出演も当面の間、見合わせる。

 大塚キャスターは2011年11月に急性リンパ性白血病を発病。メインキャスターを務めていた同局系情報番組「めざましテレビ」を休養、12年3月に降板した。10月に都内の病院を退院し、24日に同番組に出演したが、その中で闘病生活を振り返って、「退院の明かりが見えた時に感染症とかを併発して本来の次の治療に移れなかった。体の抵抗力が落ちているので普段なら感染しないような病原菌に苦しんだ。そのころが一番厳しい時期だった」と話した。しかし「弱音を吐いてもしようがない。少しでも前向きなことを言って自分を奮い立たせた。そういう気持ちが必要だった」と持ち前の強い精神力で立ち向かったことを語っていた。

 2月4日にも「めざまし-」に出演し、4月からの新番組での待望の本格復帰への意気込みを見せていた矢先、14日に再発が判明。来週早々に入院することになった。

 フジテレビは「一刻も早いご回復をお祈りしています」とコメントした。

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僕も回復されることを祈念しておりますとしか言いようがないです。

専門家として一言書きますと、闘病生活を振り返って・・・と書いていますが、通常急性リンパ性白血病では維持療法を行っている時期です。患者さんが強い希望をもってやらない・・・と言わなければ、通常急性リンパ性白血病は維持療法をします。

急性骨髄性白血病はしません。維持療法をしなくても、現在行っている地固め療法(だめおし)をやることで、治療成績が変わらないことが治験で示されています)

白血病の再発というのはこのように一気に来ます。普通の癌では考えられない速さで白血病細胞は増えてきます。大塚キャスターも2月には復帰を考えていたということは、このころの定期受診では異常がなかったが、次の健診で再発していたということだと思います。

 

ちなみに当院でも再発された患者さんがいらっしゃいますが、同様に直前の外来受診時(2週間前)にはわからない状況でした。本当はもっと早く再発を感知できる検査があれば(すなわち、それは寛解の深さもわかるということですが)良いのですけどね。この検査で病気がわからなければ再発はしないというような検査が・・・。ないから「完全寛解」という言葉を使うわけですが

 

僕は白血病の治療後の方は基本的に最初の2年近くは2週間おきに診ています。そうでなくては患者さんの再発をかなり腫瘍量が増えた状況でしか見つけられない可能性があるからです。外来の込み具合で、実際には1年半くらいから3週間おきにしてみたり「WT-1」 などで追ったりもしていますが、増えてくるときには非常に早いというのが実際のところです。

 (追記で白血病でもAggressiveなリンパ腫でもそうですが、DFS(無病生存期間)は最初の2年以内が急峻に低下していきます。逆を言うと2年以内が再発リスクが高い時期ですので、かなり慎重にやっています。その後も再発しないわけではなく、だからこそ5年くらい診療を継続するのですが・・・。ちなみにこの追記は、白血病で治療を受けられた患者さんを無為に不安にさせてしまう内容だと思ったので、ここに記載させていただきます。不安を感じられた方、申し訳ありません。基本的には余命の話にも書きましたが、完治をすると信じて治療を行い、治ったと思って経過観察をしています。治ってないと思うなら同種骨髄移植など、治ったと患者さんも自分自身も信じられる治療を行います

急性リンパ性白血病であれば…35歳以下であれば積極的に移植を考えると思う(小児用プロトコールでの成績改善も報告されていて、この治療を行える人たちはやらないという選択肢もありますが)のですが、60歳を超えるとなると一般的に移植は難しいという考え方です。もちろん、個人個人で適応は異なりますが、統計学的には35歳前後で同種移植の成績が分かれてしまいます(ほかの評価もするのですが)。それ故、移植という選択が本田美奈子さんのような若い患者さんと異なり、選択肢に上がらなかったのだろうと思います。

http://www.jshct.com/guideline/pdf/2002.pdf

しかし、再発した今回であれば…再度完全寛解(病気が一般的な検査ではわからないレベル、末梢血が回復した時点で骨髄中の芽球が5%未満)に入ったうえで「完治」を目指すのであれば、リスクをかけても同種移植の他はないのだろうな・・・と思います。これは僕個人が同じような条件の患者さんを診た時に、その患者さんに対いて厳しくとも提案するであろう・・・という意味での話で、絶対的なものではありません。

 

僕は直接患者さんを診察しているわけではありませんし、何とも申し上げられないのですが…再発した急性リンパ性白血病に対して「こうすれば絶対に良いです」という選択肢、ガイドラインのようなものは今現在はありません。まぁ、それを言うと再発した悪性リンパ腫に対して自家移植は行うでしょうけど、Salvage療法が決まっていないというのも似たようなものでしょうけど。

それ故に患者さんである大塚さんと主治医の先生(たち)がよく話し合って、大塚さんが望まれる治療を行っていくしかないと思います。

全ての医師は患者さんに対して「メリット」がでるようにいつも考えています(たぶん、すべての医師)。初発時は一般的なことを行うことが、患者さんのメリットになる。ただ、これからは患者さんが何を希望されているのか、患者さんの体力などはどうか、感染症に苦しんだと書かれていますがその状態は…、一番重要なことは寛解に入るのかどうか。

 

ともかく、大塚さんの病気の回復と治療の成功を祈念しております。

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 

P.S:僕たち医者というのは患者さんの希望に合わせていくつかの選択肢を提示し、より良い選択肢を患者さんの希望に合わせて(患者さんの希望に合った・・・治りたい、けどリスクは望まない。できれば完治しなくてもよいから、外来ベースで家族と一緒にいたい)一緒に選択していくものだろうと思います。

通常完治するのを目指す場合は、現在行われている標準治療を行うという話になるとは思いますが・・・。

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