こんばんは
昨日は当大学の卒業パーティがありまして、二次会から参加してきました。二次会といっても各診療科ごとにやっているわけですが、血液内科は6年生3名と5年生2名が来てくれて、それなりに盛り上がっておりました。
血液内科の若手が少ないというのは事実ですが、最近うちの大学(血液内科)はコンスタントに人が増えていて、第二次黄金期に向かっているのかもしれません。
まぁ、そうなるといいなぁと思っています。
さて、ずいぶん昔に「アザシチジンで困る・・・」という記事を書きました。
実際に保険適応がしっかりあって・・・ある意味エビデンス(根拠)がしっかりしている治療薬は他にないですよね(実はエビデンスではタンパク同化ステロイドやビタミンDやビタミンKよりも免疫抑制療法のほうがありますが、日本では保険適応はないし)。
アザシチジンについては昔も書いたような気がしますが「高リスクの骨髄異形成症候群(MDS)」に対して使用する薬剤です。高リスクというのはIPSSという分類法でInt-2、High riskに分類される患者さんたちで、生存期間中央値(50%の患者さんがなくなる期間)が診断されてInt-2が1.2年、Highが0.4年です。
これらの患者さんたちに対し、それまでの一般的に行われてきた治療法では15か月で半分の患者さんがなくなりましたが、アザシチジンのグループは24.5ヶ月と明らかな生存期間の延長を認めました。
それ以来、高リスクのMDSの標準治療とされています。
最近、低リスクにもアザシチジンを使用する臨床試験などもやっている施設があるようですが、今のところは様子見をしたいところですね。理由は何もしなくても生存期間中央値が5.7年(low)、3.5年(int-1)はある低リスクMDSの患者さんたちにアザシチジンを使用して、有害事象が多くなると嫌だからです。例えば成おzン中央値が10年以上になった…というなら考えます。あとは輸血依存がほとんどないならば考えますが、有害事象がない薬ではないので二の足を踏みますね。
治療というのはメリットがデメリットを大きく上回るからこそ行います。抗癌剤治療の類や手術、放射線治療などすべてそうです。体に少なからずダメージがいきますので、それを超える効果がないといけません。
ですので、メリットが確実に出るだろうと思う「高リスク」群はともかく、低リスクに使用する根拠はまだないですし…。低リスクでも特殊な状況(輸血依存で、それをどうにかすることが大きく患者さんのメリットになるなど)なら、メリットがデメリットを上回ると思いますが。
さて、アザシチジン。学生さんには説明するときにはこんな風に言っています。
「アザシチジンは脱メチル化薬と言われる仲間なんだけど、どういう薬かわかりますか?」
だいたい・・みんなよくわからないといいます。
簡単に書きますが脱メチル化…というのにはこういう意味があります。
「遺伝子」というもののなかに「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」というものがあります。
「がん遺伝子」というのは増殖を高めるようなものが多く、「増えろ~。増えろ~」と命令してきます。
がん抑制遺伝子は「あれ、これはおかしいぞ。増殖ストップ」とか「あぁ、もうこのままではがん化して、皆に悪い影響を与えてしまう。そうなる前に死んでしまおう」など…どうにかしてがん化を起こさせなようにするグループです。
そりゃそうだろうといわれると・・・こまるのですがw
メチル化…というのは遺伝子に「メチル基」というのが引っ付いたときに、うまくその遺伝子は働けなくなります。そういうのをエピジェネティックな異常…とかって言いますが、要はメチル基を取り除けば「がん抑制遺伝子が復活!」ということになるわけです。
骨髄異形成症候群やそこから進展した白血病などは「増殖がゆっくり」であることが多いです。どちらかというと異常な細胞が死ななくなったようなグループが多いので。
がん遺伝子…の異常というよりは「がん抑制遺伝子」の異常のような感じがしませんか?
まぁ、実際に調べてみるとMDSの細胞では、がん抑制遺伝子のCpGアイランドと呼ばれる領域にメチル化が起きていることがわかってきて、アザシチジンを使うようになったわけです。
すなわちアザシチジンの狙いは「メチル化によって機能しなくなったがん抑制遺伝子を復活させること」です
他にも殺細胞効果があったり・・・もしかするとBloodなどの有名な雑誌には出ていますが、骨髄移植後に使用するとGVL効果を高めGVHDを減らす(要するにいいことばっかり)とかいうデータも出てきています。
まぁ、アメリカのほうで治験が動いているみたいですが。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
http://blog.with2.net/link.php?602868
人気ブログランキングへ←応援よろしくお願いします
それでは、また。