1ヶ月以上ブログを更新できていな状況にある。その訳として<鍼灸奮起の会>の準備もあるが、今話題の「閃く經絡」を読み始めたからである。
2ヶ月ほど前、驚いたことに韓国の李珉東先生から「閃く經絡」(日本語訳)が届いた。これには大いに感謝したのだが、読み解くのに時間がかかっている。どういう感想をもったのかを、李珉東先生に報告できていないことに苦痛を感じている。今回はとりあえず「閃く經絡」の初見の印象を記すことで、ず李先生への返信に代えたい。
古典とは違って文章自体は平易なのだが、内容が難しい。難しいというより、読者がすでに各分野の科学知識を理解していることを想定している。当面、発生学(三胚葉、形成中心)、ファッシア、フラクタル理論などの知識が必要となる。(本書後半は未読なのでさらなる知識が必要となるだろう)
一般的な読者は、知らない概念を、パソコンで基礎概念を調べながら、ゆっくりと繰り返し読み進めることになる。
ところで他の読者はどのような感想をもっているのか気になったので、パソコンで読者コメントをチェックしてみると、コメントを書いている者は少なく、その内容もマト外れなものが少なくなかった。本書を、スゴイ、革新的だ、眼からウロコなどと表現してはいても、どうスゴイのか書いていない。まともな読者であれば、読み解くのに時間がかかっているのだろう。
読破することが難しい本として、例えば石川太刀雄著「内臓体壁反射」がある。私が復刻版を購入して30年経つが、まだ時々読み返して新たな発見がある。代田文彦医師は、「この本は世に出したのが早すぎた」と話していた。当時の人々には理解を越えていた内容だったというのがその理由。
本書は発生学と經絡に関係について論じているが、むかし石井陶白氏も同じようなことを書いていた。石井は、間中喜雄・代田文誌・柳田素霊などと同時代に活躍した鍼灸家で、多細胞生物の生長過程で、三胚葉のへの分裂が人体の前・後・側の変の分化の原点であって、外胚葉から肺・大腸・胃・脾経が生まれ、中胚葉から心包・三焦・肝・胆・経が生まれ、内胚葉から心・膀胱・腎経が分化したと自説を展開した。石井陶白が最も脚光を浴びたのは終戦後で、当時駐留軍により鍼灸を禁止させられそうになる危機があり、石井氏の研究が、鍼灸継続に向けての役割を担うという側面があり注目を集めた。言葉は悪いが鍼灸業界は石井氏をリーダーとし、鍼灸の正当性をGHQに理解させようとした。
石川太刀雄らの「内臓体壁理論」の求心性神経二重支配則とともに、このような努力が実を結んで進駐軍に鍼灸継続の承諾を得ることに成功した経緯があった。
※求心性神経二重支配則とは?
Langleyは遠心性神経支配が交感神経と副交感神経とによって二重に支配されているという説を主張した。これを遠心性神経支配二重支配則とよぶ。これに対して石川は求心性神経二重支配則も存在することを主張した。求心性神経神経も遠心性神経も自律神経により二重に支配されていることは今日では常識的な定説となっている。
そのことを思うと、書籍「閃く經絡」は、良いタイミングで出版されたと思う。本書が重要性を多くの読者は理解できるまでに成長したからである。
本年中に、本書を読み解き、ブログとしてまとめてみたいと思っている。