AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

少病少悩 ver.1.1

2021-09-23 | 人物像

少病少悩

1.「少病少悩」の解釈
私は、医道の日本平成24年1月号の新年のことばとして、以下の小文を記した。

数年前、代田文彦(故人)の奥様、瑛子先生から郵便物が届いた。開封してみると、色紙が入っており、次のように書かれていた。
 少病少悩  
 南無釈迦牟尼佛 
 氣息安穏
 (代田文誌三十三回忌に記して)

瑛子先生の添え書きとして、「これをどう解きますか?」との一文も入っていた。二行目と三行目は理解できたが、一行目がわからない。とりあえず額に入れて治療室に掲げておいた。

 

しばらく後、患者としてお坊さんが来院し、「この言葉を選ぶとは‥‥」としきりに感心し、私に解説してくれた。「少病少悩」というのは、人間、病や悩みから完全に解放されれば理想的であるが、実際には非常に困難なことである。せめて少ない病、少ない悩みならばそれで十分ではないか、との意味だという。
 代田文彦先生の「東洋医学は、たとえ治せないとしても、癒すことはできる」という言葉は、このことだったかと思った。

 

ふと一茶の俳句が頭に浮かんだ。
こういうことか?

めでたさも 中くらいなり おらが春  (小林一茶)

 

2.代田瑛子先生からの返信

医道の日本誌の当該記事が載った部分をコピーし、代田文彦先生の奥様である瑛子先生に郵送した。すると数日後、返信が届いた。私信なので、全文は公開できないが、少病少悩に関する内容は次のようだった。

私は毎朝仏様にごはんとお茶をお供えして般若心経を唱えて、その額を見ています。自分なりに解釈しております。「人間として病と悩みからとき放されているのは、即この世からの解放の時であろう。だから人間この世に生を受けている間は、ほんの少しの病と悩みを持って生きていけば、気が和らいで心安らかにおだやかに生きられるのだと」。年相応の体の心の変化が有ってこそ心の平安が有るのだと思いながら生活しております、との文面だった。

瑛子先生が毎朝向かっているであろうお仏壇のことを私は思い出した。中には文誌先生、文彦先生の位牌もあった。驚くほど質素なものだった。


質問紙を使った耳鳴分析と鍼灸の奏功例 ver.1.1

2021-09-20 | 耳鼻咽喉科症状

耳鳴の鍼灸治療については、20年近く前までは勉強したが、一通り調べると、それ以上新発見の鍼灸治療が発見できなくなった。しかし耳鳴りの治療自体に新しい内容はなくとも、鍼灸で効きそうか否かを事前に推測できれば、患者・施術とも無駄な努力をしないですむ。鍼灸有効率もあがるというものである。耳鳴り治療の有効性を推測するため、すでに10年以上「耳鳴り質問紙」を使っている。本質問紙は診療前に患者に記入してもらう。患者は5分間ほどで書き終えることができる。


1.鍼灸で効きそうな耳鳴りを抽出する質問紙(「新・耳鳴の鍼灸治療 質問紙と解釈」 2003.7.14.当ブログで発表済だが当ブログに移動)

1)医師の診察を受けましたか。( はい いいえ )
解釈:耳鼻科的なきちんとした病名がついておらず、かつ無難聴性耳鳴であれば効果ある。診断名の定まらない耳鳴は、針灸で打つ手がありそうだ。鍼灸奏功するタイプとは、頸や顎の関節症に由来するものが多いだろう。すなわち針灸が有効となる耳鳴は、首の動きや顎関節の動き(口の開閉など)により、耳鳴の音調が変化するタイプ。

2)医師の診断名は何ですか。

(突発性難聴 メニエール病 良性発作性めまい 音響外傷  慢性中耳炎 頸椎症 高血圧症 自律神経失調症 更年期障害 聴神経腫瘍 その他)
解釈:耳鼻科医の診断で、中耳炎後遺症や突発性難聴後遺症、音響外傷による耳鳴など、耳鳴を生じる診断名であるならば、針灸治療が無効となるケースが多い。発病後1ヶ月を経た音響外傷性の難聴・耳鳴も有効な治療法に乏しい。

3)耳鳴りについて、これまでどのような治療を受けましたか。

(内服薬 高圧酸素療法 通気 療法 星状神経ブロック その他)
 解釈:一般的に現代医学で耳鳴りに効果のある治療法はない。

4)耳鳴りに気づいたのはいつですか。(
  年  月  日、  約   年前 )
解釈:当然ながら早期に治療開始した方が治りがよい(自然治癒であることも含む)。一つの目安は、半年以内かどうかである。

5)耳鳴りのきっかけになったものはありますか。(
病気 大きい音 難聴 めまい 自然に 突然に)
解釈:
①.大きい音を契機に発症→騒音性難聴(=音響外傷)
②.突然に→突発性難聴
③首や顎の運動により生じた耳鳴というのは、自分の意識としては少ない(自分では気  づいていない)。

6)耳鳴りは、どこからしますか。( 右耳  左耳  両耳  頭の中)
解釈:
①体性耳鳴(首や顎の運動時)の場合、片側性になる。両側に同じ大きさの耳鳴を生ずると、頭の中が鳴っているような感じになる。
②片側性では患側上の側臥位にて施術し、両側性では仰臥位で施術する(30~40分 間置針するので、伏臥位だと苦しく感じる者がいる)

7)どんな音の耳鳴りがしますか。(ブーン  ゴー  カチカチ  ポー  シュー キーン ドキドキ  ヒュー  ピー  ジー  その他)
解釈:耳鳴の音調は、教科書的には高音性が感音性難聴・耳鳴でキーンといった電子音。低音性は伝音性難聴・耳鳴でジーといった蝉の鳴き声の音に分類されている。しかし実際はさまざまで、音調から診断名を推定することは困難だが一応の目安としては次のことがいえる。   
①ゴーという低音:外耳や中耳など、伝音性の耳鳴。比較的治りやすい。耳管狭窄症など。
②ジージーという蝉の鳴き声音。低音性感音性耳鳴。メニエール、耳管狭窄症。
③キーンという高いの金属音・電子音:感音性の耳鳴。内耳性の耳鳴で、耳鳴全体の9割を占める。 加齢とともに耳の機能が衰えると聞こえやすい。難聴やめまいを伴うことも少なくない。突発性難聴、騒音性難聴、老人性難聴。
④「ザーザー」という雨降りのような拍動性の音→ 自分自身の頭頸部の脈拍音を聞いている。拍動性耳鳴の主な原因は、耳の病気、神経や脳疾患、血圧の常、ストレス過多など。頸部のコリを緩める治療を行うと改善するともいう。ただし拍動性の耳鳴は少ない。
⑤ゴー、ポーといった母音が「o」で終わるもの、キー、ピー、シーといった「母音+i」で終わり、かつ濁音が含まれない音は治療効果が高い。
   (清田隆二ほか:耳鳴に対するミオナールの臨床効果 耳展32:護6:473~479,1989)

8)耳鳴りの音の大きさはどの程度ですか。(非常に大きい  気になる程度  わずか  なし)

9)耳鳴りが生活の妨げになっていますか。

(何もできないくらいひどい 少し妨げになる 生活の妨げにはなるが必要なことはできる  生活の妨げになるほどではない)

10)耳鳴り以外の症状はありますか。

(難聴 めまい 不眠 頭痛 首肩のコリや痛み 顎関節症  歯科(虫歯 歯の矯正) 腰背痛  不眠 高血圧症 神経症 自律神経失調症 その他)           
解釈:耳鳴単独よりも耳鳴+難聴の方が治療は難しい。針灸が奏功しやすいのは、体性神経性耳鳴なので、顎関節症や頸椎症があると、この治療が耳鳴治療の糸口になる。めまいは不定愁訴症候群の一症状として出現しやすいが、不定愁訴一つとして難聴・耳鳴があることは少ない。


6.耳鳴症例(69歳、女性)

<質問紙回答>
1)医師の診察を受けましたか。(はい)
2)医師の診断名は何ですか。(診断がつかなかった。年だからしょうがないといわれた)
3)耳鳴りについて、これまでどのような治療を受けましたか。(治療は受けなかった。薬も出なかった。)
4)耳鳴りに気づいたのはいつですか。(1年半くらい前) 
5)耳鳴りのきっかけになったものはありますか。(自然に)
6)耳鳴りは、どこからしますか。( 両耳とくに左耳)
7)どんな音の耳鳴りがしますか。(キーン)
8)耳鳴りの音の大きさはどの程度ですか。(気になる程度)
9)耳鳴りが生活の妨げになっていますか。(生活の妨げにはなるが必要なことはできる)
10)耳鳴り以外の症状はありますか。(難聴、首肩のコリや痛み、膝痛)

<診察所見>
1)頸部:側頸部中央で胸鎖乳突筋後方の斜角筋の押圧で驚くほどの圧痛あり。 後頭部や後頸部に圧痛硬結なし。
2)顎関節:異常なし(開口制限、下顎左右ずらし・下顎引きつけ・下顎出しすべて正常、頬車、下関の圧痛なし)
※顎関節症と耳鳴が関係するらしいことは知られているが、その機序は不明。ただし三叉神経第3枝の分枝である耳介側頭神経が、鼓膜知覚・外耳道知覚・顎関節知覚に関与していることが関係しているかもしれない。トリガーポイントで有名なトラベルは、咬筋と外側翼突筋が耳鳴と関係することを指摘している。


7.考察と治療内容

本症例は原因不明の耳鳴だが、耳鳴の程度は軽い。耳鼻科で診察済でもあり、特別な耳疾患は考えにくく、強いていえば首コリからくる耳鳴りと推定。

1)仰臥位、2寸#5にて下耳痕穴から1~2㎝直刺。耳奥に響きを与える。30分置鍼。10分毎に手技をして響かせる。

解説:私の耳鳴の鍼灸治療は、仰臥位で下耳痕(=難聴穴)から2㎝直刺で耳奥に鍼響を与え、30~40分置鍼することを共通治療としている。耳奥(鼓膜~中耳)に響かせるのは本穴からの刺針しかないため。鼓室神経(舌咽神経分枝)刺激となる。筋を完全にゆるめるには、30分以上の置鍼が必要。なお鼓室神経は中耳と鼓膜を知覚支配している。内耳を知覚支配する神経はないので鍼で直接響かせることはできない。
なお「下耳痕」は私が命名した。深谷伊三郎が「難聴穴」と命名したのはこの下耳痕に一致しているが、深谷は灸で治療していて、耳奥に響かせるのは困難だろう。


2)座位または仰臥位で側頸部後斜角筋あたりの緊張部に運動鍼。

コリを緩めるには仰臥位で健側に顔を向かせる。耳の下に位置する側頸筋(≒後斜角筋)のコリに対して手技鍼。この治療は座位で行う方が効果的だが、強刺激になりがち(脳貧血に注意)。

※なお項部のコリのばあい、項部刺針をする。これには座位で、下を向かせて顎を引いた姿勢で、天柱、風池などに刺針

 


3)「鳴天鼓」の指導

古典的内気功の「八段錦」の一方法で鳴天鼓(めいてんこ)とよばれているものがある。

①両肘を左右に張り出し、手掌中央で耳穴をぐっと押さえて外耳道を密閉させる。
②そのまま頭の後ろに指を添えて、中指はお互いの方向を指す。
③中指の上に人差し指を乗せ、そこからはじくように人差し指を落として頭を叩く。その衝撃波が耳孔の空気を伝わり鼓膜を震わせるようにする。あるいは弾いた示指が、後頭部を叩く衝撃が骨伝導として耳奥に刺激を与えるのか。
④1日2回、1回につき20~40回これを繰り返す。

 効果には個人差がある。効く者は手を離すと耳鳴りが治まっていることに気づく。耳鳴が停止している時間は2~3分間だが、長く繰り返すほど止まっている時間が長くなる者もいる。

本患者に自宅で鳴天鼓を1回2~3分、1日3~4回実施するように指導した。1回2~3分は長くて手が疲れるという感想を漏らしたが、鳴天鼓をすると、数分間耳鳴りが楽になるということだった。

本患者は、初回治療で治療効果を実感できず、治療2回目で治療効果を得た。2回目治療は、座位で側頸筋ストレッチして後斜角筋圧痛点に手技鍼をしたこと。(1回目はストレッチ肢位をとらなかった)および鳴天鼓を追加したことである。


凍結肩に対するROM拡大の刺針手技 ver1.1

2021-09-09 | 肩関節痛

1.凍結肩の関節裂隙刺針

 凍結肩状態にある五十肩は、症状を修飾している筋緊張症状は針灸で改善できても、本質的には肩甲上腕関節関節包の癒着なので、筋・神経・皮膚を刺激目標にした鍼では効果を出すことは難しい。

塩沢幸吉は、関節破裂隙に対する刺針を紹介している。
「関節腔に対してはなるべく深刺する。五十肩の場合は肩関節前面において、上腕骨頭と肩甲骨関節の関節間隙をねらって、2~3カ所深く強く刺針すると、上肢の内旋・結帯動作が拡大される。他に肩峰下・肩関節後面・腋窩より、それぞれ肩関節腔へ直接刺針する。」 
 
                                                  

 

2.肩関節関節包切開術(医師)

凍結肩の関節包癒着に対し、医師は硬くなった関節包をメスで切開する手段をとることがあり、この手術によりADLは術後から大きく改善できる(ただし痛みが長期に残存することがある)。塩沢の関節腔刺針は、この手術療法と似ている。


3.肩関節裂隙刺針の肢位工夫


関節口腔を開いた状態で関節裂隙に刺針した方が深刺できるので、前方の肩関節裂隙に刺入するには、座位で結帯動作をさせて行いたいが、刺針鍼が強いことを勘案すれば、臥位で実施するのが実際的だろう。肩関節上部の間隙(前肩グウ~肩グウ)と前部の間隙は結合組織が薄いので関節包を刺激するのは容易。しかし後方(ひじゅ)や下方(極泉)からの刺入は結合組織が厚く、関節包に入れるのが難しい。5~8番程度で関節の隙間を狙って、コツコツをノックして癒着を剥がすように数回雀啄する。

 


咽喉異常感症(咽頭神経症)の針灸治療・手技療法 ver.2.0

2021-09-09 | 耳鼻咽喉科症状

1.咽喉異常感症の特徴的症状   

咽喉異物感では、まず咽喉神経症(ヒステリー球、梅核気)を思い浮かべるが、以下の疾患を除外する。

R/O 食道癌:「食べた物が下に入っていかない」と訴える。    
R/O 喉頭癌:嗄声が初期症状。進行すると呼吸困難出現。   

器質的な異常がみつからない場合、器官神経症(心臓神経症、血管運動神経症、胃腸神経症などと同類)と断定されてしまうので、患者は苦悩する。咽頭神経症は、かつてはヒステリーの重要症状とされていたが現在は否定されている。咽喉異常感症の特徴は次のようである。  
・食事摂取時には問題ない。  
・唾を飲み込む時は気になる。  
・痛みではなく、何かが使えている感じ(患者自身、癌を心配している)  
・数ヶ月~数年の期間で症状の悪化はない。(症状の悪化があれば他の疾患を考える) 


2.咽喉異常感と嚥下運動の関係

耳鼻科での検査で異常がみつからない咽喉狭窄感といのは、前頸部の筋緊張がもたらした結果だとする見解がある。

ノドのつまり感は、嚥下の際に強く自覚する。嚥下運動は、咽頭にある食塊を喉頭に入れることなく食道に入れる動作で、この食塊の進入方向を決定するのが喉頭蓋が下に落ちる動きである。この喉頭蓋の動きは喉頭蓋が能動的に動くのではなく、嚥下の際の甲状軟骨と舌骨が上方に一瞬持ち上がる動きに依存している。嚥下の際のゴックンという動作とともに甲状軟骨が一瞬上に持ち上がり、喉頭蓋が下に落ちる動きと連動している。

甲状軟骨の動きは、甲状舌骨筋でつながる舌骨の動きによるもので、舌骨の動きは舌骨上筋群が収縮した結果である。すなわち舌骨上筋群緊張→舌骨挙上→喉頭蓋下降という運動連鎖になる。   なお開口状態では舌骨上筋が弛緩するので、嚥下しづらくなる。なお舌骨上筋には、顎二腹筋・顎舌骨筋・茎突舌骨筋オトガイ舌骨筋がある。

座位で頭を背屈して舌骨上筋を伸張した状態で、それぞれの筋走行部を押圧し、圧痛点を発見して押圧・刺 針。頭部の前後屈運動を10回程度実施させる。

 

3.舌根(=上廉泉)刺針>
 
舌根刺針は舌骨上筋刺激になる。舌骨上筋緊張すると舌骨が挙上する。なお舌の根元は、咽喉奥にあるのではなく、下顎骨の後縁にある。

①舌根刺針は、舌扁桃刺激にもなり、舌下腺刺激にもなる。舌扁桃痛軽減や唾液分泌を促進させる意味もある。
②この部は舌咽神経支配が知覚支配しており、刺針すると舌根や咽喉に針響を与える。  

 

 

 

4.舌骨下筋の過緊張

嚥下時に舌骨が挙上しづらいのは、舌骨下筋の過緊張による可能性もある。本法は、Ⅰb抑制を使った筋緊張緩和手技に相当する。
座位で前頸部気管の両側筋の硬結に刺針し、上を向かせて舌骨下筋を伸張させて刺針。

 

5.胸鎖乳突筋と広頸筋
ヒトは上を向くと呼吸しやすくなる。(ゆえにラジオ体操で深呼吸の際、上を向かせる)
ストレスなどで前頸部筋緊張すると下を向き気味になるので、胸鎖乳突筋や広頸筋を伸張させることはストレッチ手技尾として意味がある。

1)胸鎖乳突筋ストレッチ

①椅坐位で、頸の過伸展位置をとらせ胸鎖乳突筋を伸張させる。
②その姿勢のまま患者自身(または術者)の両手をザビエルの肖像画のように胸元で交叉させ、左右母指で胸鎖乳突筋起始部である鎖骨と胸骨部を順に軽く押圧し続る。  
③過伸展位にした頸を左右に回旋することで、さらに胸鎖乳突筋を伸展させる。    
④次第に胸鎖乳突筋の緊張が緩んでくるにつれ、咽の狭窄感も軽減する。  



2)広頸筋ストレッチ手技          

下顎骨の下縁から、上胸部にわたる頚部の広い範囲の皮筋。首の表面に皺を関連する筋膜を緊張させ、口角を下方に引く働きを持つ筋である。  
坐位で、口角を横に広げつつ下方に引き、前頸部に縦シワをつくるようにする。この動作を何回か繰り返すと視認できる。

 

 

 

5.咽頭異常感が改善した症例(30才男性、会社員)

患者の母が少々自慢げに言うちころによれば「会社では、同期トップの成績だった」が、心身ともに疲労して休職している。

全身疲労と咽の詰まり感が主訴。詰まる感じは右前頸部にあるとのこと。坐位で両側胸鎖乳突筋停止部を押圧するもあまり圧痛なく、胸鎖乳突筋筋腹をつまんでみたがあまり痛むことはなかった。下顎窩を押圧すると筋硬結を触知したので、上記の舌骨上筋部のストレッチ手技を行い、また坐位で頸を背屈させて右広頸部筋を触診すると、つっぱり感じがあったので、前頸部~前胸部あたりに広範囲に単刺した。
治療終了すると、患者はアレッという声を発したが、その時は聞き流した。

翌日、患者の妹が治療を受けに来院した。昨日のお兄上の具合をきいてみると、球が下に落ちたと語ったとのこと。