1.皮毛
皮膚(表皮+真皮)とウブ毛のこと。
2.腠理(そうり)
1) 皮下組織(皮下脂肪組織)をさす
もともと真皮と皮下組織はゆるく結合している。残酷な話であるが、小動物の毛皮の採取には、動物を生きたままの状態で剥ぐこともあるらしい。剥ぐ時、筋肉は苦痛のあまり緊張し収縮するので、剥ぎやすくなるという。剥がす面を腠理といったのではないか? ここを經脈が流れるという、現代でいう地下水のような認識であろう。流水下では卵の殻を剥くと作業しやすいように、地下水が流れている時、すなわち生きている時には、毛皮が剥ぎやすいと考えていた。
2)体液が出る部
腠理は「汗腺の元」という意味でも用いる。毛口のことを腠理とも呼ぶが、毛口は汗の出口であって、汗腺の元が腠理であり、毛の根元でもある。要するに古代中国人は汗腺と毛孔を区別していなかった。腠理は地下水脈で、毛口は井戸口のようなものである。
また体毛や表皮に皮脂膜をつくるため、毛口からは皮脂も分泌する。古典的に脂は血が変化したものと考えれば、腠理という地下水脈を流れるのは、水と血であることが推定できる。この水や脂を外に放出するのは、「気(この場合はとくに衛気)」の推動作用であり、結果として皮膚表免にも気血水が存在するといえる。
地下水脈と井戸口を結ぶ、井戸の縦坑は、一定の広さではなく、状況により広がったり狭まったりする。
縦坑が広がることを、腠理が開くとよぶ。腠理が開く目的は、衛気を外に発散して外界に対する防御のためであり、津液を汗として体外に放出するためである。これを宣散作用とよぶ。腠理が閉じる目的は、津液が体外に漏出することを防ぐことにある。これを固摂作用とよぶ。
古典的に毛孔の開閉は、衛気による防衛の作用とされる。古代中国人は、寒い日に、皮膚から立ち上る水蒸気を観察することで、衛気という概念を想像したのだろう。運動中は体温が高くなり、そのため汗や水蒸気の出る量も増える。これは宣散作用によるものである。
一方「腠理が開く」とは、衛気の活動が乏しく、気の固摂作用低下で自汗(暑くもないのに汗が出る)するようになる。
「固摂」:スリットを閉じ、津液が体外に漏出することを防ぐ作用
「宣散」:スリットを開き衛気を外に発散し、津液を汗として体外に放出する作用。
3.肌肉と筋(すじ)
古代中国人は、筋肉を、肌肉と筋(すじ)に区別して認識していた。体幹の背部、胸腹部にある軟らかい筋を肌肉とよび、前腕、下腿にあるスジ状の筋肉や腱を、筋(スジ)とよんで区別した。
剣術の修業では、持久力よりも敏捷性を重視した。俊敏性を身につけるため、体幹の筋肉を落とし、四肢の筋肉を鍛える修業をした。だから剣術の達人は、一見すると痩せている人が多い。かつて野球のバッティングの練習で、2本バットを持って振ることは、現代では持久力はつくが、動きが鈍くなるので好ましくないとされるようになった。