AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

麦粒腫への二間の灸と面疔への合谷多壮灸

2023-02-09 | 眼科症状

鍼灸師の間では、麦粒腫に対して患側(健側でもよい)の二間穴に灸をすると、腫脹吸収あるいは排膿促進につながるというのが常識である。しかしながら患者も鍼灸治療で麦粒腫を治す目的は来院せず、麦粒腫瘍そのものも自然治癒しやすいので、鍼灸院でも患者に治療する機会は多くない。自分自身や自分の身内に試みるくらいなので、症例集積まで至らないのである。わかっていることは以下のごとくであろう。

①麦粒腫というのは、おそらく外麦粒腫のことである。
②二間穴は学校協会教科書の二間(「十四経発揮」の二間)と澤田流二間があるが、ともに同程度の効果がある。麦粒腫の治効として有名なのは澤田流二間の方である。学校協会の二間は、
第2中手指節関節の下、橈側陥凹部になるのに対し、澤田流二間は示指PIP関節裂隙の橈側に取穴する。

 

③二間は、健側治療、患側治療とも同程度の効果がある。
④二間の針は、効果が乏しい。
⑤せんねん灸でも、有痕灸でも効果がある。有痕灸では艾炷の大きさや壮数ともさまざまであるが、効果優劣は不明である。
⑥腫脹しているタイプは腫れが引き、膿が出ているタイプは排膿を促進させる。

筆者も内・外麦粒腫に対しては二間へのゴマ大灸施灸5壮程度を行うことが多い。これで眼のうっとうしさは少し軽減するが、症状消失までには至らない。しかし施灸した翌朝には眼が気にならない程度になるのが普通である。多壮灸の方が効果あるともいうがその経験はない。
 

1.麦粒腫の知識 

眼瞼縁からの分泌腺には、眼球結膜側から、マイボーム腺(涙の上層を覆う油液分泌)・モル腺(汗分泌)・ツァイス腺(睫毛を潤す脂分泌)の順になっている。この腺孔から黄色ブドウ球菌などの細菌が感染した病態が麦粒腫である。

1)外麦粒腫
睫毛腺(アポクリン汗腺)からの細菌感染症。眼瞼の充血・浮腫・腫脹・疼痛を生じる。外麦粒腫は通常2日から4日以内に病変は自潰し,排膿すると疼痛が治まる。

2)内麦粒腫
眼瞼腺(マイボーム腺)からの細菌感染症。内麦粒腫は外麦粒腫に比べて少ない。外麦粒腫は皮膚側へ腫れるが、内麦粒腫は結膜側へ腫れるのが普通で、瞼を返して診察する必要がある。内麦粒腫は眼瞼結膜表面に限局する疼痛・発赤・浮腫が生じる。内麦粒腫の自潰はまれで、再発が多い。内麦粒腫の治療は抗生物質内服、必要があれば切開および排膿である。

 

.麦粒腫になぜ二間を使うのか?

麦粒腫は、眼自体の疾患というより、眼瞼という皮膚疾患であることから、経絡的には大腸経病変とみなすのは古典的解釈になる。ただし大腸経上の経穴が多数ある中で、なぜ二間なのだろうか? 昔から不潔な指で目をこすったりすると麦粒腫になることが経験的に知られていて、目をこする指の部分が二間あたりになるからだと考えた。「手当て」という素朴な認識から、麦粒腫の治療穴として二間を思いついたのかもしれない。

ちなみに、代田文彦先生は、「眼球前の皮膚には二間を、角膜・結膜あたりの病変には曲池を、網膜あたりの病変には風池・天柱を使う」と話していた。さらに「膜」には血流があるので鍼灸が奏功する理由があるとも語った。その意味で、白内障の鍼灸の効果に対しては否定的だった。


3.眼瞼の血流増多が治効を生むのか?

針灸治療で二間の灸は有名だが、二間の針では効果がないという。麦粒腫に対する現代医学的治療は眼瞼部の温罨法、ときに抗生物質内服である。唐麗亭は、閉眼させ1.5吋30号針で、眼瞼全体を上下に6回、左右に6回程度まんべんなく接触刺して皮膚が発赤し、患者の患部周囲が気持ちよく感じるまで行うと記している(三種刺法在眼病的応用、「北京中医学院三十年論文選」、北京中医学院編 1956~1986、中医古籍出版社)。この治療法は原理的に、温罨法と同じものだろう。                  

瞼への温罨法や接触針で、麦粒腫が改善するということは、血流を豊富にすると良いらしい。ということは、二間の灸の治効も、眼瞼の血流改善に効果があるらしいと推定できる。顔面の血流増加を意図するという点では、面疔に対する合谷多壮灸も同じである。

 

4.面疔には合谷多壮灸

1)面疔とは

 

面疔とは顔面にできたセツのこと。黄色ブドウ球菌の感染症で毛嚢炎が悪化した状態である。セツそのものは重篤な疾患ではない。

病巣部である眼窩や鼻腔、副鼻腔などは薄い骨を隔てて脳と接しているため、抗菌剤が普及していない時代には、敗血症や脳膜炎の原因となり死亡することもあった。沢田流鍼灸創始者の沢田健も面庁で死亡した。


2)合谷多壮灸

面疔の治療といえば、合谷が有名である。昭和中期まで、「桜井戸の灸」といって、静岡県の清水で面疔の治療で名をはせた名家があった。1日500人の患者が来院し、近所には患者宿泊用の旅館もでき、駅(静岡鉄道の草薙駅)もできた。

平成6年頃まで、熱心に当院に来院していた当時95歳の男性がいた。この患者は、なんと桜井戸の灸のことを実体験として知っていた。下足番もいたという。
治療は合谷への数十から二百壮の多壮灸で、面疔の痛みが取れるまで壮数を重ねた。患者は自宅への復路、東海道線に乗ったが、途中で再び痛くなると、列車内で灸する者もいたという。


3)なぜ合谷なのか

古人は発赤や腫脹などの炎症所見に対して、軽症ではやがて自然治癒するが、重症では化膿して、それが排膿した後に治癒すると考えていたらしい。排膿しなければ治らないのだから、毒素を体外に排出するため、皮膚に出口をつくる必要があった。多壮灸や打膿灸でわざと化膿させるのは、毒素の出口をつくるのが目的だったらしい。大腸経は、下顔面と関係が深いことが知られていたので、合谷を取穴したのだろう。面疔の治療穴として頤(かい)の灸がしられている。頤はオトガイで下顎のでっぱり部分をさす。頤の灸も面疔の排膿の意味があると思われた。

 

 

 

 


頭痛・眼精疲労時の太陽穴反応と刺針手技 ver,1.1

2023-01-29 | 眼科症状

1.太陽穴の名称
 
中国語でコメカミのことを太陽という。太陽穴との名称理由は不明だが、屋外で最も太陽に照らされる部位と考えたのではなだろうか(頭部は頭髪があるから陽は直接は当たらない)。ちなみにコメカミのことを英語ではテンプル temple という。これはお寺の temple とスペルも同じなのだが、外来語を英訳する際にたまたま同じ綴りになってしまった訳で両者間に関係はない。 


2.太陽穴の取穴


こめかみ部で、外眼角と眉毛外端を結んだ線の 中点から後 外方に約1寸の陥凹部にとる。頬骨の外縁で側頭筋前方になる。



3.太陽の局所解剖


太陽穴のある側頭筋は咀嚼筋の一つである。側頭筋の機能は下顎骨を挙上させ、食物を咀嚼することである。側頭筋は扇形に広がった形をしており、起始は側頭骨外周に、停止は下顎骨筋突起にある。力学的観点から、側頭筋は後方(緑矢印)に比べて太陽穴のある前方(赤矢印)に強い収縮力が起こることが理解できる。すなわち太陽は、側頭筋の筋収縮が起こりやすい部だといえよう。



4.緊張性頭痛と太陽穴


緊張性頭痛のタイプには、「きつい帽子をかぶっている」タイプと「頭に石が載っている」タイプの2種類あり、主に前者は側頭筋、後者は後頭筋由来だとされる。太陽の圧痛反応は、きつい帽子をかぶっているタイプに起こりやすい。
トラベルによれば本筋のトリガーポイントが活性化すれば、上歯への放散痛が生じたり側頭筋~眉上の前頭筋部の痛みが生ずることがあると記している。ただし側頭筋緊張が眼部へ放散痛をもたらさないことに留意すべきである。
このような場合、コメカミへ自分の橈骨茎状突起を押しつけならがグルグル回すと症状緩和に効果ある。指先で押圧してグルグル回すのではポイントが限定されるぎるようだ。

 

 

5.緊張性頭痛と眼精疲労の相関関係

動物は敵と戦う手段として<噛みつき>攻撃を行う。人間でもその本能が残っていて、ストレスがあると無意識的に強く噛みしめることがある。ゆえにストレスが強いと、無意識下で咀嚼閉口筋である側頭筋緊張が起こりやすい。

また頭痛と眼精疲労は同時に起きやすいことは経験的にしられているが、両者には因果関係がない。ただしストレス→頸肩コリ→眼精疲労という関連はある。前述したようにストレスは側頭筋緊張→緊張性頭痛との流れも平行して起こるので、側頭筋緊張と眼精疲労は同時に起こりやすい。

なお眼精疲労の一因としてドライアイがあり、ドライアイの原因として最も多いのは、ディスプレーを集中して見続けることによりまばたき回数の減少にあるとされている。

 


6.側頭筋に対する運動針法

過収縮した筋を緩めるには、運動針が効果的なことが知られている。そのため側頭筋の圧痛硬結をさぐり、反応点に#2~#3程度で刺針する。トラベルの側頭筋トリガーポイントと放散痛を示した図は、側頭筋のトリガー歩医院とは横に一列に並んでいる。これは噛む力を徐々に強めていった際、側頭筋の緊張したスジバリも後方から前方に移動するという観察と一致する。強く噛む際に出現するのが太陽穴ということになる。治療に際しては、噛むように指示し、その時出現した側頭筋のスジバリを治療点とするのがよいだろう。

これで満足すべき効果がみられない場合、タオル等を口に噛ませた状態で刺針。刺針したままタオルを強く噛む動作を数回行わせるとよい。

 


私の行っている眼窩内刺針の方法 ver.1.6

2023-01-20 | 眼科症状

1.はじめに

以前私は、「 眼窩内刺針が刺激対象とするもの Ver.2.12015-08-19 」と題したブログを発表した。この記事は現在削除され、当ブログ内容に反映されている。

この記事を読んだとして、眼精疲労を主訴とする患者が来院した。眼精疲労の来院患者は少なくないが、その多くは頸コリや肩コリも同時に訴えていたり、精神的ストレスがあったりしている。主訴が眼精疲労のみを訴える患者は珍しいことであった。

ところで中国や日本で眼科疾患を中心に治療している針灸施設であっても、必ず眼窩内刺針を行っている訳ではない。それは医療過誤を恐れてのことに違いない。針先が強膜(三叉神経第2枝知覚支配、毛様体神経支配)を傷つけこれが感染源となる危険性はゼロはなく、医療過誤を起こせば場所が場所だけに大変な事態になるだろう。それに加え、眼窩内刺針を行わないと結果が引き出せないとする情報もない。万が一の危険性を考慮すれば、眼窩内刺針を行うにしても切皮程度に留めておくのが無難であろう。

 

2.眼精疲労症例(21才♂、学生)

数年前から目が疲れる、とくに左右に眼球を動かすと目頭が疲れるとのこと。近くの針灸院に行って眼窩内刺針をやってほしいと頼んだが断られ、私のブログを見て当院来院した。眼窩内刺針を希望していた。眼瞼に内出血する可能性があることを理解してもらった後、
眼窩内刺針その他を行ったところ、患者は、これまでにない効果があったと述べた。
実際の治療点は眼窩内刺針の他に頭維刺針、上天柱刺針を行ったが、ここでは眼窩内刺針の技法について記してみたい


3.眼窩内刺針の技法


眼窩内刺針には上眼窩内刺針と下眼窩内刺針があり、上眼窩内刺針の方が上眼窩と眼球の間が広いので刺針しやすい。眼瞼の内出血を防ぐためと、眼球に過多な刺激を与えぬ用心のため、寸6#1などの細い針を使うことが多い。
細い針を使うこともあって、上眼窩内刺針と下眼窩内刺針とも響きはないのが普通である。眼瞼の内出血を避けるために雀啄などの手技針はせず、単刺や置針をする。

1)睛明

疲れ目に際しては、母指と示指で両方の目頭のやや上方をつまむように押圧する動作を自然に行いがちである。その部位こそが眼精疲労の刺針点として相応しいだろうと考えてみた。患者を仰臥位にさせ、寸6#2にて内眼角部のやや上方に睛明穴をとり、ゆっくり直刺すると2㎝ほど刺入すると硬いものに命中すると同時に眼に響きを得ることができた。
別の眼精疲労患者対して上睛明刺針を行てみても、やはり2㎝刺入で硬いものあたると同時に眼球に響きを得ることができた。結構、再現性がある。
睛明の深部には上眼窩裂がある。ここから三叉神経第1枝(知覚)と眼球を動かす役割のある動眼・滑車・外転神経が出る。 しかし視力機能とは関係がない。
最近、黄斑変性の患者を治療する機会を得た。いろいろな鍼灸院に通院経験がある方なので、患者的にどのような眼窩針が効果あるかを身をもって知っているようだった。その患者が言うには、上睛明より数ミリ外方を刺入点にした方が、眼に響くというこなので、新たな治療点としてこの部位に深刺すると、眼に響くということで満足したようだった。眼に響くというのは三叉神経第1枝を刺激したということだろう。

睛明は、掃骨針法で知られる小山曲泉が記しているように、「眼窩内に指を折り曲げて按圧した際、患者に快痛が得られる部が、その患者に適した治療点で、この穴に3~5番で圧痛方向に刺針して軽く雀啄すようにすると、快痛の響きがある」ということである。


2)上睛明

睛明穴の5~10㎜上方を取穴。睛明穴深部に上眼窩裂があるならば、上睛明穴深部には視神経管がある。視神経管とは視神経が通る孔、視神経は視力機能をつかさどる役割がある。すなわち視力と密接に関係しているといえよう。


3)球後

外眼角と内眼角との間の、外方から1/4 の垂直線上で「承泣」の高さにとる。球後深部には、下眼窩裂がある。下眼窩裂は眼窩下神経(三叉神経第2枝の分枝)が通る裂孔で、臨床上は眼窩下孔(=四白)刺激と同じ意味合いになる。視力には関係ない。三叉神経第2枝の眼窩下神経は、下眼窩裂を通過して四白から頭蓋骨外に出る。四白(眼窩下孔で、眼窩下縁の下1㎝)から外眼角にむけて斜刺すると、下眼窩裂に入れることも可能である。

以上の理由から、球後刺針は下眼窩裂への刺針を目的としていない。「球後」とは、眼球の後側という意味で、中国では内眼病の治療に多用されている。球後から眼球の裏に達するほど深刺した場合、おそらく毛様体神経節の刺激になる。
この刺針の適応は不明だが、眼球の裏には毛様体神経節、長・短・鼻毛様体神経などに影響を与え、眼に対する副交感神経刺激になる。ワサビを食べると鼻にツーンと辛さを感じ涙が出るのは、鼻毛様体神経興奮による。患者は眼球が熱く腫れる感じを覚えるという。
    
    
          


4)魚腰

眉中央に魚腰をとる。眼窩上神経痛の場合、眼窩内病変や帯状疱疹などの二次性原因の他に、やはり特発性があり、特発性の場合、額から眉への水平刺が有効になることが多いが、このような施術の一貫として、魚腰穴あたりからの上眼窩刺針を行う方法がある。眼窩上神経は、顔面表情筋により絞扼されて眼窩上神経痛を起こすことが知られている。前頭部の皮神経痛を生ずる代表は眼窩上神経だとされる。(なお大後頭神経痛は、後頭部の頭半棘筋の絞扼が原因とされる)
(参考文献:清水暁:頭蓋表層の解剖学的要因による頭皮神経痛と頭痛-眼窩上神経痛・後頭神経痛・開頭術後頭痛-、臨床神経学、54巻4号(2014.5)

眼窩内刺針創始者の郡山七二は、瞳孔線上すなわち魚腰からの上眼窩内刺針は、上眼瞼部に血管があるため皮下出血しやすく、このため魚腰からは、左右いずれかに少しずらして刺入すると皮下出血を避けることができると記している。(同氏著「現代針灸治法録」)。


5)涙腺刺激

眼窩の外上方に涙腺がある。「このあたりを刺針すると涙腺刺激になるので、ドライアイに効果あるかも知れない」と考えるのは早計である。
ドライアイの主原因は涙量が減るのではなく、涙層の上にある油層が減ることで、眼球表面を覆う水層が蒸発しやすく理由による。
したがって、油層を多量に出すためには、その出どころである上瞼縁にあるマイボーム腺の分泌を活性化させるのがよい。それにはまず瞼の温罨法(蒸しタオルをあてる)などが推奨できる。針は、上眼瞼への散針を行う。

 

 


網膜色素変性症に対する中国での治療と針灸治験例(43歳男性 自営業) ver.1.3

2023-01-03 | 眼科症状

1.病名:網膜色素変性症による視力低下、視野狭窄、夜盲

2.現病歴

小5の時に上記診断がついた。小学生時代は何とか健常者と同じ学校に通学できた。以来、症状はゆっくり進行していたが最近は進行停止している。現在視力は0.06。
これまで日本各地の鍼灸院に通っている。最も効果があったのは中国の先生の治療だったが、その先生は鍼灸治療自体を引退してしまった。当針灸院にはブログを見て来院。職業は父親と共に自営業をしている。

 

3.網膜色素変性症の概略

眼科疾患の一つで、成人中途失明の3大原因の一つ。数千人に一人の頻度で起こるとされている。盲学校ではこの病気の生徒が一番多い。進行性眼科疾患で、遺伝的要因が大きい。
始めは桿体細胞(明暗に関係する細胞)が機能しなくなり、徐々に錐体細胞(視力や色に関係する細胞)も機能しなくなる。
まず夜盲→次に視野狭窄(横から飛び出してきた自転車を避けきれない、視野外にある茶椀をひっくりかえす)→発病20~30年後に失明
※改めて調査すると60歳以上で、7割の者が視力0.1以上を保っている。両眼とも失明(光も感じない)者は1%

 

4.網膜色素変性症に対する中国の鍼灸治療
 
1)昭和62年8月の新聞記事で、中国における網膜色素変性症の針灸治療の驚異的効果が紹介された。網膜色素変性症の患者が針や漢方薬による5ヵ月間の治療で、視力0.3が0.8となり、5°の求心性狭窄だった視野角が55°に広がったという。

2)これに対する日本医事新報(昭63.3.12)
の質疑で次のような回答があった。中国における治療の前後にこの患者にあたった複数の医師によれば、「視力は治療前後で不変、治療後の検査で耳側に若干の視野拡大を認めた」とする報告もある。本疾患の本態が、視細胞外節に始まる網膜組織の変性、崩壊、消失であることを考えると、一旦変性に陥った細胞が再生することはありえず、視力が改善し視野が格段と拡大するような治療法は現在はありえない、と。


3)この日本医事新報の回答を読むと、回答者の見解が正しく、新聞記事の情報が眉唾ものに思えてくる。なぜなら網膜色素変性症は不治の病だというのが定説なのだから。
私もそのように認識し、だから中国の発表は信用できないのだと思った。しかし最近、当院通院中の網膜色素変性症の女性患者から、牟田口裕之著「暗闇からの生還 網膜色素変性症とたたかう」(自費出版)1991.11.19発行 をお借りできた。
非常に興味深い内容であり、中国での牟田口氏への治療が本当に効果があった事実だけでなく、社会的反響への戸惑いまで書かれている。すでに絶版でもあり、内容をかいつまんで紹介したい。


5.網膜色素変性症患者の中国での針治療内容  自費出版 

「暗闇からの生還」難病網膜色素変性症とたたかう 牟田口裕之著



1)著者の牟田口浩之氏1931年生(書店主)は昭和51年の40才の時に自分の目の異常に気づいた。野球をしていて外野フライを捕ろうとした際、球が消えるように見えなくなった。市内の眼科を受診したところ、網膜色素変性症だと診断された。 眼底を覗くと網膜変性が分かるので病名を出すのに誤診はまず起こらないという。50才を過ぎたあたりから進行は加速した。起床時は眼がかすみ、しばらくは何も見えない状態になった。
58才の時には、視野は左右5°まで狭窄が進行(健常者は左右それぞれ90°、上下は60~70°)。視力は右0.06 左0.08となった。視野5°というのは、竹筒を覗いて見ているという情況で歩行も困難になる。定期的に通院している医師からは、もう来なくてよいという話になり、「外国に行っても同じことで、成果は出ていない。ただし中国のことは分からないが・・・」と発言した。これをきっかけとして中国で治療する道もあるかもしれないと思い、一縷の望みをつないだ。

2)牟田口氏は静岡県の沼津市に住んでいるが、中国の岳陽市と友好都市の関係を結んでいた。山岳陽市に児童遊園地をつくろうという計画があり、日本の担当者にお願いして中国の病院探しをお願いした。山岳陽市の市長の計らいで、長沙の張懐安医師の紹介して下さった。張先生は、長沙市湖南中医学院第一付属医院眼科医師で、中国国内でも眼科の中医として有名な先生だった。

1987年(昭和62年)、眼の治療のため退職し3月から張先生の治療を開始した。牟田口氏はホテルに長期宿泊し、先生方がホテルに往診治療をするという形となった。
滞在後1ヶ月半して視力や視野に好転の兆しが現れ、計5ヶ月間治療を継続した。
治療内容は、鍼灸、推拿、漢方薬、薬膳、太極拳の総合的ものだった。
5ヶ月間の経過のなかで治療穴は次のように変わっていった。

①1ヶ月目:曲池、足三里
②2ヶ月目より:陽谿、霊道、外関あるいは支溝、陰陵泉、三陰交、懸鐘、脾兪、腎兪、肝兪
  5ヶ月間を通して行ったのは梅花針で以下の部位を軽く叩くこと
  眼の周り、頭項部から耳にかけて両側に下る、頭頂部中央から下って風池を充分に叩く、背部両側を上から下へ
③帰国後の医師による治療穴:睛明、承泣、球後、百会、風池、天柱、頭維、合谷、光明

5ヶ月間の中医治療を受け、次のように変化した。
視力 左0.08 →0,4   右0.06→0.6
視野 5°→50~55°
なお5ヶ月間の費用は治療費と滞在費を含め、合計200万円だった。

 

3)帰国後の反響
帰国後1ヶ月、著者の変貌ぶりが周囲の人々から伝わり、記者会見を開くまでになった。それはテレビでも放映されたことで、その晩からら問い合わせの電話が殺到することとなった。それは私も中国で治療を受けてみたいというものもあったが、網膜色素変性症は治らないのだから、あなたの話は信じられないというものが大半だった。
その翌朝の朝刊には「中国の針と漢方薬で5ヶ月で回復」もいった記事が載った。あまりにも反響が大きく、詳しい話を聴きたい者が多いことから、沼津市民センターで3時間の説明会を開くことにした。すると800名の人が集まり会場に入りきれない情況にもなった。

本症が治る筈のない病気であって、もし改善したというのであれば、それは網膜色素変性症ではなかったのではないかと考えたのが東大病院の医師で、牟田口氏はわざわざ東大に出向き、何枚も眼底写真を撮られたあげく、やはり網膜色素変性症で間違いないことが判明した。

網膜色素変性症の日本人患者が改善したことが日本で知られるようになったことが中国にも伝わり、中国の病院にも千通を超えるほど届くようなった。観光ビザで中国の病院に直接出向く人も出てきた。日本人相手だとすると中国人側も治療費を値上げし、400万円,600万円、800万円とはね上がっていった。

医師が治らないといった病気が、中医治療をしたからといって治るわけがないといった日本の医師の感情。また中国側の日本人を手玉にとった商魂。この2つが絡み合い、事態はどうかるかと思えた。すると岡崎嘉平太氏(実業家で戦後全日空をはじめ多くの企業を造った)の事務所から連絡があった。この先生の力が絶大で、中国医師を招聘して講演会、日本から中国へ円滑に患者を送る手筈などについて協力する旨の返事を頂戴することができた。

4)中国に5ヶ月滞在するとなれば費用もかさんだものになる。もう少し安い費用で国内で治療ができないものだろうか。この切実な悩みに対して、群馬中国医療研究協会(略称は群馬中医研)が対応を示した。新しい診療病棟が完成し、これまで使っていた古い診療所を合宿治療所として転用できるようになった。20名定員で、網膜色素変性症患者を3ヶ月間ほど合宿させる。費用は色々含めても1日5千円を超えない。この施設の治療には、クルミ灸も行った。針がねでメガネの枠をつくり、クルミの殻をはめ込み、上から温灸モグサで温める、なおこのクルミの殻は、クコの実や菊花を浸した液に一昼夜つけ込んだもの。

5)中国に患者を送り続けて4年目。この間、個人的なツテを頼って行った者も含めると、すでに500名近い人数にのぼっている。

長沙の湖南中医学員第一附属医院から送られてきた28名分の治療成績は、視力・視野ともかなり改善2名、視力好転2名、視野好転6名。多少効果あった者は視力で7名、視野で9名だった。
岳陽中医医院の41名の治療成績は、総合有効率81%でそのうち顕著な有効率は51%だった。たとえば視野が50°以上に広がった者2名、30°以上に広がった者2名となった。
北京広安医院での治療成績は、治療終了した者全員71名にアンケート調査をした。回答者は54名(回収率76%)。その結果、視力改善は12名(22%)、視野改善は
17名(33%)。中国の病院も最初のうちは治療成績にばらつきがあったが、回を重ねるごとに治療成績も似たようになりどこも向上していた。

厳しくみて快方に向かっている人は30%を越え、進行が止まった人まで含めると50~60%が、「治療を受けてよかった」と感じている。
それでも日本の眼科医は、以前としてこの現実を認めようとしていない。


6.当院での鍼灸治療

1)患者の要望に応える

この患者は、いろいろな鍼灸治療を試みており、どの治療が最も効果的だったかを自分自身知っているので、どういう施術を希望するか聴取し、次の回答を得た。
①針は中国鍼のような太い針がよい
②眼窩内刺針で、とくに睛明あたりからズンとくるような響きが欲しい
③眼窩内刺針ではたまに眼瞼に内出血することがあるが、自分は針先が血管に当たったことが分かる。その感覚があった際、伝えるのでそれ以上深く入れないでほしい。
⑤眼窩内刺針以外には、頭頂部に針が欲しい。太陽・頭維・天柱・風池の刺針はとくに効果を感じない。

2)睛明付近眼窩内刺針

①仰臥位。眼窩の骨際と眼球の境に指を曲げて按圧しつつ、眼窩内縁の硬結を探る。発見した反応(睛明~上睛明部位となることが多い)点から2番針(ときに4番針)を用い、2本程度刺入、内部で緊張した筋内に針先を入れる。深度3㎝前後。左右計4本。30分置針。10分毎に眼窩内刺針を雀啄刺激。置針中、時々自分で黒目をぐるぐると動かす運動を行うよう指示。なお使用鍼では中国鍼も使ってみたが、刺痛が強いので和針に切り換えた。
睛明穴の深部には、上眼窩裂があり、ここから眼球を動かす役割のある神経や眼球知覚の三叉神経第1枝が伸びている。睛明のすぐ上の上睛明穴の深部には視神経孔があり、これは視力そのものをつかさどる神経なので、視力と最も関係が深い。

②百会あたり数本30分置針。
③坐位にて上天柱、下風池手技針 
④他の部位は施術せず

 

3)球後刺針

球後とは眼球の後側という意味で、文字通り眼窩下縁で、深部に下眼窩裂があるあたりを取穴する。ただし下眼窩裂は三叉神経第2枝が正円孔を出て眼窩下孔(=四白穴)に向かう途中にすぎないので、臨床的意味はあまりないと思われた。(四白である眼窩下孔を刺入点として外眼角方向に刺入すると、下眼窩裂に達するが)
むしろ眼球後部中央に広がる毛様体神経節に影響を与えているのではないだろうか。内眼病治療穴として中国で最も頻用されている。

 

4)治療効果と感想

睛明や上睛明には解剖学的な特異性があるとは思えないが、誰しも眼の疲れを感じた時、鼻根をつまむように内眼角を押圧する癖がある。この深部にあるのは内直筋で、眼球を内転させる機能、つまり左右の眼球を鼻側に寄せて近見視しすぎるデスクワークのような作業と関係しているのかもしれない。

上記の当院の治療を行うと、毎回施術後に視力向上するも、その効果は当日止まりといった状況である。ただしこの患者は、片道1時間の通院時間にもかかわらず、週1回ですでに6ヶ月通院を続けていることを勘案すると、この治療に何らかの長所があると感じているらしい。


ドライアイの原因と眼の温熱治療

2022-12-10 | 眼科症状

1.ドライアイの原因  

涙は涙腺でつくられ、排泄溝を通って眼球表面に流出する。眼精疲労を訴える者の6割はドライ
アイ状態とされる。この原因は、涙液減少型はマレ(代表疾患はシェーングレン症候群)で、大部分は、涙が蒸発しやすい涙液蒸散型だとされる。

※目がショボショボするとは?
「目が乾きやすい」という乾燥感が主症状で、これに異物感、目の痛み、まぶしさ、目の疲れなど様々な症状が合わさったもの。

 

2.涙液の三層構造

眼球表面は涙液膜で覆われるが、外側から内側に油層・水層・ムチン層という三層構造になっている。最も内側にあるムチン層は、水層を眼の表面にとどまらせる接着剤の役割をする。目やにの主成分はムチンである。

角膜と水層を密着させる役割があり、外層の油膜は、水層の蒸発を防ぐ役割がある。ドライアイで問題となるのは、油層減少により涙蒸発量が増加した結果である。油層は、眼瞼縁にあるマイボーム腺で作られるが、油の性状が変化すると固まりやすくなり、分泌量が減少する。これをマイボーム腺梗塞とよぶ。


2.ドライアイの治療

 
マイボーム腺の分泌を回復させることが目標。眼瞼マッサージは、油が固まっていると効果がない。目やに状に固まったマイボーム腺を溶かすには、眼瞼を5分間以上40℃程度に温める必要がある。顔全体ではなく、目周囲のみ温めたいと言う場合、赤外線や遠赤外線は向かず、マイクロウェーブそもそも目の照射に禁忌である。ポリ袋に包んだ蒸しタオルを瞼の上にあてる方法がポピュラーだが保温持続時間
が短くなってしまうのではないか。ホットアイマスクという製品(1000円~3000円)も市販している。ちなみに眼科で処方されるドライアイの点眼薬の主成分はヒアルロン酸である。


3.くるみ灸

東洋医学らしい治療としては、クルミ灸がある。クルミにはいくつかの種類があるが、殻が固くで厚い鬼クルミが適している。鬼グルミはわが国で自生しているクルミで、古くから食用とされてきた。味は良いのだが、殻が厚く固いので、専用のくるみ割り器具が必要になる。

鬼クルミを半分に割り、身を取り出す。鬼クルミの殻を、閉眼した瞼の上に置く。その上に小指頭大の粗悪モグサをのせ、点火する。クルミを少し濡らすとモグサが付きやすい。しかしクルミ灸は、被験者が少々顔を動かした場合、クルミも火のついた粗悪モグサも転がってしまうという大きな欠点がある。

中国では下写真のようなメガネ型の道具を使う者もいるらしい。メガネのレンズに相当する部分にクルミ殻を固定、その上には針金がとび出ていて、そこに棒灸欠片を串差しにして燃やすというもの。このスタイルであれば座位で治療もできる。見かけは不格好であるが。

 

このクルミ灸めがねには、進化形があって、モグサを取り付ける部分が金属メッシュのカゴになっている。これならば落下する危険性はない。アマゾンでも入手できる。

 

 

 

 


眼精疲労の鑑別と鍼灸治療 ver.1.2

2021-01-08 | 眼科症状

1.眼精疲労の鑑別
 
最もみられる眼科的訴えは眼精疲労であろう。本当に眼精疲労であるなら、眼を休めれば回復するが、休養しても治らない場合、器質的疾患を疑う。
 本当に単なる眼精疲労か?
 
①眼痛(+)→緑内障

②見えづらい:眼がかすむ

白内障(糖尿病性白内障の可能性)
ぶどう膜炎(サルコイドーシスの可能性) 
眼底出血(糖尿病性網膜症、高血圧症の可能性)
像が歪む、像の一部欠損→中心性網膜炎、網膜剥離 
チラつく→生理的飛蚊症(網膜剥離、ぶどう膜炎の可能性)

③目の乾燥感→ドライアイ(シェーングレン症候群の可能性)
上記を否定できれば、機能性眼精疲労、仮性近視、心身症を疑う。

※全身疾患の部分症状として眼症状を訴える疾患はつぎの通り。
ベーチェット病、サルコイドーシス、シェーングレン症候群


2.眼精疲労に対する鍼灸治療の考え方

1)後頭下筋のコリの治療→上天柱
 
後頭下筋は、頭蓋骨のブレがあっても視点のブレがないようにする役割がある。現在のデジタルビデオカメラには手ぶれ防止装置がついているのが普通になった。これにより、歩きながらで、あまりブレのないムービーをとるのができるようになったわけである。これと同じ意味の機構が後頭下筋になる。
平成31年2月13日放映NHKテレビ放送「ためしてガッテン!」では頚のコリと後頭下筋の関連について放送していた。横から卓球のラリーを見る観客は、玉を追うために眼球が左右に動くことになる。その際、無意識に顔面も左右に小さく動いていることが観察された。この顔の動きは後頭下筋の緊張によるものだそうである。
後頭下筋疲労の改善には、上天柱から深刺し、鍼先を後頭下筋まで入れて置針する。

2)大後頭三叉神経症候群としての治療→天柱、頭皮上圧痛点刺針

大後頭神経の興奮は三叉神経をも興奮する。眼の知覚は三叉神経第1枝であり、大後頭神経の鎮静目的に、天柱深刺置針を行う。
百会の手前2/3の頭皮知覚は主に三叉神経第1枝支配、百会の後方1/3の頭皮知覚は主に大後頭神経支配である。頭皮上の圧痛点に斜刺し、10分間程度の置針をする方法も広く行われている。

※三叉神経第1枝は知覚性で、上眼窩裂から眼窩内に入り、鼻腔・角膜・結膜・ 毛様体・虹彩の知覚をつかさどった後、前頭神経として額~頭頂部皮膚知覚をつかさどる。なお私は、眼精疲労の原因をズバリ一言でいうなら、三叉神経第 1枝神経痛のバリエーションだと考えている。

3)  天柱刺針は交感神経を緊張させ眼精疲労を改善させているのか?

本来、人間は近くを見ているとき、意外にもリラックス状態にある。というのは、原始時代、人間は仕事として獲物を狩り、そして狩ってきた食料を住居で食べて生活するという形をとってきた。そのため遠くにいる獲物を探したり、狩るときは交感神経が優位になり、家の中で家族と食事をしている時は副交感神経が優位になることが正常な自律神経サイクルだったのだろう。
     
ところで眼精疲労患者に対して、伏臥位や座位で天柱手技針をすると、「施後に頭や首がすっきりし、眼の疲れがとれ、外界が明るく見える」といった反応が得られることが多い。天柱深刺は比較的強刺激になっていると思うのだが、このような刺激で眼精疲労が改善するというのであれば、交感神経緊張→網様体筋弛緩という機序が働いたのかもしれない。日本人は、真剣に物事に取り組もうとする時、ハチマキ巻く習慣があり、これも緊張度を高める一つの方法として認知されている。すなわち、眼精疲労改善は、頭~項頸部を交感神経緊張状態に誘導することで改善できるのではないか? 
      
4)側頭筋刺激→頭維から客主人に向けて水平刺

中世の医学では、血液のよどみが病気の原因であると考えられたため、血管を切開した。頭痛ではコメカミの血管から血を出し、頭痛の軽減を図ろうする方向へ発展した。コメカミから血を出す方法は、小刀や矢先を用いた。

顔面で顔面表情筋は顔面神経支配だが、咀嚼筋は三叉神経(第3枝)支配である。咀嚼筋というのはストレス筋の一つであり、側頭筋は最大の咀嚼筋であるから、ストレス状態で緊張を生ずる。側頭筋部は、三叉神経節興奮時に反応が現れると思われ、側頭筋のコリを緩めることがストレス改善、そして眼精疲労の改善に役立つと予想する。

ストレス筋というのは、ストレス状態にある時、働く筋をいう。たとえば動物が敵と遭遇した場合、戦うか逃げるかしなければならい。噛みつき攻撃は動物にあっては戦う手段として当たり前のことであり、側頭筋の緊張が関係することが知れる。


5)リラクセーションを目的とした治療

眼精疲労が眼周囲の筋の疲労の結果起こるという見解は、疑問視されている。たとえば眼瞼痙攣の者は必ずしも眼精疲労を訴えない。心身症者の眼精疲労は、眼に問題があるのではなく、大脳の情報処理能力の疲労だとする意見がある。要するに脳の疲労であるから、リラクセーション目的の施術が有効になる。
 

 


調節性眼精疲労に対する針灸治療の考察 

2015-01-14 | 眼科症状

1.機能性眼精疲労の分類
機能性眼精疲労の原因は、次の2つに分類されるが、調節性眼精疲労の方が主なる原因であるとされている。

1)調節性眼精疲労(=内眼筋障害) 

毛様体筋の疲労による。毛様体神経節は、目の焦点を合わせ、虹彩の開き具合を調整する機能がある。眼精疲労は、この毛様体神経節および毛様体筋の疲労であると考えられる。 

2)筋性眼精疲労(=外眼筋障害)

輻輳(=より目)不全、斜視による。左右の眼の動きの不統一。                


2.調節性眼精疲労と毛様体筋

瞳孔括約筋は、虹彩の内周にある。巾着袋のような作用で、筋緊張すると口が狭まり、縮瞳になる。瞳孔散大筋は、虹彩の外周にある。瞳孔括約筋と逆で筋緊張すると虹彩が開き、散瞳になる。

遠見時:毛様体輪状筋が弛緩して輪が広がる → チン小帯はピンと張る→ 水晶体は引っ張られて薄くなる。
近見時:毛様体輪状筋が緊張して輪が狭まる → チン小帯が緩む→ 本来もっている性質により、水晶体は厚くなる。

 

 

3.調節性眼精疲労の針灸治療

1)調節性眼精疲労は副交感神経緊張によるのものだろうか?

眼精疲労を訴える患者に対し、伏臥位で天柱から深刺手技針を十数秒間行なった後、患者は「目がすっきりし、外界が明るく見える」などの喜びの声をあげることは、日々の臨床で普通にみられる。ただ筆者は昔から、「外界が明るくなった‥‥」という返答から、虹彩が開いた状態になった、すなわち交感神経緊張状態になったと理解すべきかどうかを悩んでいた。
常識的に考えれば、ストレス→交感神経緊張→眼精疲労という機序の改善は、副交感神経緊張状態に誘導すべきだと考えがちなのだが‥‥

2)調節性眼精疲労の機序の考察 

①成書には調節性眼精疲労は、副交感神経緊張→毛様体筋収縮→水晶体厚くなるという機序が載されている。これは一見すると意外で、交感神経緊張の間違いではないかと考えがちである。


しかし考えてみれば、本来、人間は近くを見ているとき、リラックス状態をつくっている状態にる。というのは原始時代、人間は仕事として獲物を狩り、そして狩ってき食料を住居で食べて生するという形をとってきた。そのため、遠くにいる獲物を探したり、狩るときは交感神経が優位なり、家の中で家族とご飯を食べている時は副交感神経が優位になることが正常な自律神経サイクルだったのだろう。


副交感神経緊張→毛様体筋収縮→水晶体厚くなるというのが調節性眼精疲労であるなら、これは毛様体過緊張による仮性近視状態になっているともいえる。この状態での対処法として、凸レンズめがね(=老眼鏡)をかけてみるのも一つの方法である。凸レンズめがねを使うと、水体が以前より厚くなる必要がない→毛様体筋収縮緩和→眼精疲労改善という機序になる。

(以上、さくら眼科 院長とスタッフblog )

②天柱深刺で眼精疲労がとれる機序は、身体を交感神経緊張状態に誘導した結果だと考える。わが国の習慣として、気合いをいれて物事に取り組もうとする時、ハチマキ巻くことがある。これも交感神経緊張度を高める方法として広く知られている。こめかみにメントール軟膏を少々塗って、眠気を防ぐのも同様である。こめかみ部は、経穴では太陽穴に相当している。

太陽穴の局所解剖
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/fa45a20b1cb0137a5678eaf59e4c5fac


眼科針灸治療の法則性を探って

2013-08-15 | 眼科症状

1.代田文誌・代田文彦による眼科治療穴   

代田文誌著「針灸治療基礎学」(昭和15年、発刊)の巻末にある疾患別経穴一覧の眼科疾患の項をみると、眼科疾患別に治療穴が載っている。ご子息の代田文彦先生は、この中の法則性を見出し、内容を再整理した。 


これを要約すると、①眼前部に対しては大腸経の手の遠隔治療穴(二間、合谷、曲池)の灸治を多用すること、②眼構造前部障害に対しては、痛みや眼の充血改善目的でコメカミ~側頭部(太陽、頭維)に刺針・刺絡が行われること、③眼構造後部障害に対しては天柱から上天柱などが行われることなどが読み取れるものとなっている。
以下、代田文彦、迷いながらの鍼灸、理療、1979~1980より

 

 ①曲池
目の領域。目といても表面の結膜とか角膜の領域。目の表面と関わるように、皮膚の比較的表層とは、全身にわたって何らかの影響力をもっていると考えたい。したがって皮膚がかゆいときとか、皮膚病のときに取穴したくなるし、ごく表層の病変ということで、風邪のときにも取穴したくなる。

※曲池とよく似たイメージとして、合谷穴がある。抗生物質が発明される前の明治から昭和初期まで、面疔の灸 として桜井戸の灸が有名だった。左右合谷に50~200壮、顔面の痛みが止まるまで5週間施灸する。

 
②和髎・目窓
少し奥に入った虹彩付近と関わり合いが深い。

※和髎:頬骨弓後端の上際。浅側頭動脈拍動部。浅側頭動脈拍動上。
※目窓:瞳孔線上で前髪際付近に頭臨泣をとる。目窓はその後1寸。

③天柱・上天柱
網膜から視神経と関わり合いが深い。


④中国では、網膜疾患や眼底疾患に対しては、眼窩奥にある上眼窩裂(=睛明)や下眼窩裂
(=球後)の刺激も行われ、それぞれ30分程度の置針が試みられるものの、この部分の疾患は一般に難病である。


2.代田文誌・代田文彦による眼科治療穴の再検討 


1)現代では眼の炎症症状には抗生物質を使う


眼の痛みや充血、すなわち結膜炎、角膜炎、虹彩炎等では、現代では抗生物質やステロイドの点眼薬を使って上手に治せることが多い。これらの治療のために針灸の門を叩く者はほとんどない。眼の疼痛・充血治療であるコメカミ~側頭部筋への刺針・刺絡が効果的だというが、今日では出番はめったにないであろう。  

コメカミ~側頭部への施術は、側頭筋緊張性頭痛に付随する眼精疲労ともいえる。  

2)毛様体神経(毛様体筋)-三叉神経第1枝-大後頭神経症候群とのアセスメント


代田文誌は、視力障害には眼構造項部を刺激するとあるが、乱視や仮性近視、眼精疲労などにも項部を施術する点が、現代的感覚と異なる処であろう。項部刺激が視神経や網膜に影響を与える可能性のあることを考えたらしいが、ここは毛様体神経-三叉神経第1枝-大後頭神経の機能異常と捉えるのが妥当であろう。


①毛様体神経:球後(部位的に使いづらい)

②三叉神経第1枝:睛明、魚腰、目窓、頭臨泣、上眼窩内刺針
③大後頭神経:本神経はC2C3後枝であり、知覚枝と運動枝がある。
知覚枝→上天柱、玉枕  運動枝→項部筋を広く支配。

※眼精疲労の針灸

眼精疲労の原因については種々あるが、調節性眼精疲労(毛様体筋疲労)またはと筋性眼精疲労(輻輳不全、斜視)が2大原因であり、調節性眼精疲労の方が多い。調節性眼精疲労に対しては、その支配筋である三叉神経第1枝を刺激する目的で、魚腰、上眼窩内刺針、目窓などを刺激する。または大後頭神経が三叉神経につながる部分であるC1~C3 脊髄神経後枝を刺激する目的で、天柱や上天柱を刺激する。

3)眼の表層の治療


動物の本能として、腹が痛い時は腹をさすり、腰が痛ければ腰をさする。同様に、目が悪ければ目をさする。目をさする場合、多くは自分の二間や合谷を閉じた目の部分にあて、こすることになる。基本的には、瞼をこすることにより、血行改善させ、それによって涙腺やマイボーム腺分泌の活性を図っているのだと思う。したがって、上眼瞼を蒸しタオルで温めたり、刺激するような意味があるのだろう。

 
3.毛様体神経節刺針(≒球後)とは 

1)毛様体刺針法の意義

毛様体神経節刺針法とは1979年、中村辰三先生が発表した刺針法である。毛様体神経節は副交感神経性の神経節(眼の栄養、分泌、疲労回復などの機能)であることから、この部への刺針が眼症状に試みる価値があると予想した。実際に試みると、針治療により急速に視力が改善するという。針治療が眼底出血に有効である症例があったとの治験も得た。

※単に球後から刺入するだけでも心理的に抵抗が強いのに、毛様体神経節刺針は、下眼窩から深刺するので、多少なりとも危険が伴うであろう。経験の浅い針灸師が行うべきでない。

 

2)毛様体神経節刺針法

眼耳水平面(眼窩下縁の最低点と耳孔最上部を結ぶ面)から、上向き角度約30度、正中面に対する内向き角度約30度で、眼窩下縁と外側縁の交点から、眼球の後方に向けて約3.5㎝内側上方へ刺入。1号針を用いた10分間置針。軽く雀啄後に抜針。

※球後刺針:外眼角と内眼角との間の、外方から1/4 の垂直線上で「承泣」の高さを取穴。眼窩内に直刺、その後針尖を上内方に少し向け、視神経孔方向に刺入。


眼瞼下垂に対する針灸治療の検討

2011-08-23 | 眼科症状

1.眼瞼下垂をおこす疾患 
 内科的には、動眼神経麻痺、ホルネル症候群、重症筋無力症が主要疾患となる。眼科的には腱膜性眼瞼下垂症が主要疾患となる。



1)動眼神経麻痺
上眼瞼挙筋(動眼神経支配)の麻痺により、一側の眼瞼下垂が起こる。同時に、毛様体筋(動眼神経支配)麻痺により散瞳になる。     

2)ホルネル症候 
眼に対する交感神経支配の消失状態。相対的に頸部交感神経機能亢進により縮瞳になる。また、交感神経は上瞼板筋を支配するので、交感神経支配が弱くなれば眼瞼下垂になる。ホルネル症候の3第徴候は、縮瞳・眼球後退・眼裂狭小で、軽度の眼瞼下垂も出現する。 
ホルネル症候群は、眼の交感神経機能低下や星状神経ブロック時に出現する。星状神経節ブロックは、バレリュー症候群時の頸部交感神経刺激症状の改善目的や、顔面神経麻痺時の頭蓋内血流改善目的で実施される。

3)重症筋無力症
全身骨格筋の筋力低下。とくに両側性に眼瞼下垂が起こる。瞳孔は正常。

4)腱膜性眼瞼下垂症
腱膜性眼瞼下垂症は、片側性で、瞳孔大は正常である。視力自体は正常。
眼瞼挙筋の下端は腱膜を介して瞼板に付着する。すなわち、眼瞼挙筋は腱膜を介して瞼板を持ち上げることで、上眼瞼が上がる。後天性腱膜性眼瞼下垂症の大部分は、眼瞼挙筋と瞼板の接合部が剥がれた状態になる。剥がれる原因としては、常にまぶたを擦る習癖、コンタクトレンズの常用、事故、老化などがあげられる。腱膜性眼瞼下垂症は程度の差はあれ、多くの老人で起こるので老人性眼瞼下垂症とも呼ばれている。
先天性の腱膜性眼瞼下垂症は、眼瞼挙筋が線維化し、収縮力が弱くなることが原因である。   
症状としては、まぶたが重い、夕方になるとまぶたが開かない。眼瞼挙筋を余計に収縮させているために目の奥が痛い。歯を食いしばってまぶたを開けているので咀嚼筋の疲れ、痛み、歯が浮く、顎関節の症状がおこる。眼瞼挙筋が働かないので、ミューラー筋の収縮を強いられるようになるので、頭顔面部の交感神経緊張状態にもなる。



2.上眼瞼の解剖と機能 

上眼瞼は表層から順に、皮膚、眼輪筋、眼瞼挙筋、ミュラー筋、眼瞼結膜という層構造をとる。上眼瞼の開閉には次の筋が作用する。
1)開眼作用
眼瞼挙筋:動眼神経支配。意志により開眼させる。動眼神経麻痺では上眼瞼挙筋麻痺が生じ、瞼が閉じない。
ミュラー筋:交感神経支配。驚愕や興奮時、意思とは無関係に少し目を見開く。

2)閉鎖眼作用:
眼輪筋:顔面神経支配。意志により閉眼させる。 顔面麻痺では眼輪筋麻痺となり、瞼が開かない(兎眼)。
※要するに、顔面麻痺では完全には閉眼できず、動眼神経麻痺では完全には開眼できない。

3.眼瞼下垂の針灸治療
1)腱膜性眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋が瞼板から剥離している状態なので、針灸適応とはいえない。しかし加齢性などで上眼瞼挙筋の伸張により眼瞼下垂を生ずることはあり、鍼灸院環境では両者の鑑別は難しい。したがって腱膜性眼瞼下垂を疑う症例であっても、鍼灸が奏功する場合がある。

2)粕谷大智先生が顔面神経支配である眼輪筋刺激を目的として、上眼瞼縁部への2㎜程度の浅刺(皮内針でもよい)をすること報告した。眼輪筋と上眼挙筋は拮抗筋の関係なので、上眼挙筋を緊張させるには、輪筋筋緊張を弛めるのがよいと考えた訳である。上眼挙筋は眼瞼の深部にあり、また上眼窩内にあるので、直接刺激することはためらいがある。
私の所属する「玉川現代針灸研究会」にて、紺野康代先生は、老人性陳久性の片側性眼瞼下垂症に対し、この治療法を2~3ヶ月追試し、ほぼ正常にまで回復した症例を報告した。

3)頭部外傷後遺症による片側性耳鳴りを訴える例に対し、鍼灸をおこなうと2回治療で非常に効果あったのだが、この患者は、患側に眼瞼下垂があった(頭部外傷受傷前には存在しなかった)。バレリュー症候群のたぐかと考え、星状神経節刺を行うも眼瞼下垂状態に変化はなく、眼瞼縁への多数浅刺を行っても変化なく、上眼瞼挙筋刺激を目的として上眼窩内刺を行っても変化なかった。
主訴である耳鳴りが改善したから治療成功例だが、眼瞼下垂には無効だった。結局本症は、ホルネル症候群だったのかもしれない。ホルネル症候群には有効な治療があまりない。

4)ある常連患者の不定愁訴症候群で、本日は左瞼が開きにくいという訴えをがあった(外見上に左右差はなかった)ので、眼瞼縁に多数浅刺したところ、だいぶ改善したが、眼窩上縁部を指さし、このあたりが動かないと訴えたので、その上眼窩内刺針点部に1㎝ほど単刺をすると、良くなったとの返答を得た。これは軽度の上眼瞼挙筋の伸張症だったのだろう。

5)普段は眼瞼下垂を呈していても、本人の好きなテレビをみている時や、趣味に没頭してる時など、交感神経緊張状態でミュラー筋が緊張した結果、眼瞼下垂が一時的に改善されている場合がある。この時の治療は、ワゴトニー(副交感神経緊張状態)体質を是正する目的で、気管支喘息の治療と同様に考え、上背部督脈に施灸すればよい。(単に一過性に改善させるだけならば、身体のどこにでも響かすような鍼をすれば済む)。

 


ドライアイの針灸治療

2011-04-18 | 眼科症状

1.涙の産生と排出 
涙は主に主涙腺で作られて、瞬きによって目の表面に運ばれる。また、瞬きによって鼻側ある上下二つの涙点から排出される。通常では涙の10%が眼の表面から蒸発する。

2.涙液膜の三層構造
1)外側:薄い油膜のような「油層」
睫毛の生え際にあるマイボーム腺より分泌。瞬きで上下の瞼がくっついて離れる時に涙の表面に油膜をはる。涙の水分蒸発防止の役割。
2)中間:栄養分と水分をたくさん含んだ「水層」
涙の主成分。主涙腺で産生され、瞬きによって眼の表面に運ばれる。 瞬きには、角膜(三叉神経第1枝支配)を刺激し、涙腺からの涙の分泌を促す作用もある。汚れた涙を涙点(目頭にある涙の排出口)へ運ぶのも、またたきの働きである
3)表面:タンパク質でできた粘りのある「ムチン層」
結膜にあるゴブレット細胞から主に分泌。水層を眼の表面にとどまらせる接着剤のような役割。
目やにの主成分は、ムチンである。

3.ドライアイの原因
眼精疲労を訴える者の6割はドライアイである。ドライアイはその原因によって大きく二つのタイプに分けられる。
1)涙液蒸散型
涙の蒸発量が増える。軽度のドライアイに多い。マイボーム腺の分泌量低下であり、涙分泌量は正常。分泌減少する者は高齢者に多い。マイボーム腺が分泌減少する原因は、油の性状が変化して固まりやすくなり、ときには腺が詰まることもある。
この改善の目的で行う眼瞼マッサージは、油が固まっていると効果がない。固まった油を溶かすには、40℃程度のおしぼり(または遠赤外線。赤外線ではまぶしすぎる。マイクロウェーブは禁忌)で、眼瞼を5分間以上温める方法がある。

2)涙液減少型
シェーグレン症候群(皮膚、粘膜、眼の乾燥症候群)が代表。シェーグレン症候群は膠原病の一種で、免疫異常が原因。涙腺と唾液線を自分の体の免疫が攻撃して腺組織が破壊。涙腺分泌減少すると、目のかさつきや乾燥性角膜炎が起こり、唾液分泌減少すると口腔乾燥による齲歯等が起こる。その他に、気管支腺分泌低下で気管支炎、膣液分泌低下で性交障害が起こることもある。40~60歳女性に多い。治療法はなく対症療法として人工涙液や人工唾液を使用。基本的には鍼灸不適応であろう。 4.ドライアイの症状
「眼が乾く」と感じる人は意外に少なく、はじめは、なんとなく目の違和感、目の疲労感として自覚症状が出現する。めやに、流涙、ゴロゴロ感、乾燥感、かゆみ、視界がかすむ、重たい感じ、まぶしい感じ、不快感、充血なども出る。

5.ドライアイの針灸治療
瞬き数は交感神経緊張で減少することが知られている。またたき回数は、読書では通常の1/2に、車の運転やパソコン操作では、通常の1/4にまで減少する。
このような交感神経緊張性涙液抑制が針灸適応になる。

治療は三叉神経涙腺枝への働きかけを行う目的で上眼窩内刺、涙点刺激目的で睛明刺を行う。本治的には、交感神経緊張状態の是正すなわちストレス改善目的で天柱や百会に置針する。
ドライアイは眼精疲労の原因にもなるので、眼精疲労と同様の針灸を考える。眼精疲労の代表穴は、天柱、百会、太陽である。太陽は側頭筋刺激として、緊張性頭痛の治療としても用いることが多い。