では古典派の成書は非常に多いのに、ではなぜ現代派(とよべるほどの)成書はあまりないのだろうか。古典派は、古典という共通の原点があるのに対し、現代派は共通のベースとなるマトモな書物があまりないからだろう。現代針灸治療の具体例は、多くの専門書や学術発表の中に見つけることができ、また多くの鍼灸師により毎日の臨床で行われているはずなのに・・・・、である。なかには整形ペイン疾患は現代針灸で、内科方面の疾患は古典派でと使い分ける鍼灸師もいる。これは内科方面の疾患の現代針灸の方法を知らないことからくるものだ。何しろ公開された情報が少なすぎるので、現状ではやむを得ないことである。
ところで私は、針灸学校の常勤時代と非常勤の現在を通して、20年間以上針灸応用実技の教育に携わってきた。この教科は既存の教科書がなく、各針灸学校の担当教員自身が独自の方法で工夫して教えている。私も日産玉川病院研修時代に学習した内容をベースに治療の理論化を行い、「現代針灸臨床論」と題して、現代針灸の立場から整形、内科、産婦人科、五官科など、ほぼ全診療科目の針灸治療法を現代針灸の立場から学生に教えてきた。
今回、私の理解した「現代鍼灸」というものに関し、諸先生のご意見・ご批判を頂戴するとともに、「現代針灸」を普及させたく、テキスト内の臨床に役立つ部分を再構成して公開することにした。とりあえず最も需要の多い整形ペインクリニック分野からスタートするが、すこしづつでも、人があまり書いていない内科、泌尿器、産婦人科、耳鼻咽喉科分野にも筆をのばしたいと思う。