AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

右下肋部打撲への円皮針治療を通しての教訓(自験例 68才、男)

2022-08-19 | 胸部症状

10日前に懇親会に出席した。酩酊しての帰り道の際、右下肋部をどこかにぶつけたらしい。打撲部は擦り傷はないが、わずかに内出血がある。発赤・腫脹なし。起きている時は自覚症状ないが、横になる際、寝返り時に打撲部が痛む。しかしそのうち自然治癒するだろうと放置していた。

しかし1週間経っても症状に変わりはないので、強い圧痛点を3カ所選び、円皮鍼をしてみた。そのまま横になってみたが痛みはなく、寝返りの際もほとんど痛みを感じなかった。
これで略治するだろうと予想したが、円皮鍼をした2日後から以前の半分程度の痛みがぶり返した。そこで再び圧痛点を探り、最大圧痛点5カ所に円皮鍼を追加した。その結果、前回ほどの著効は得られず、症状も7割減程度であった。
 このような症例は決して珍しいものではないが、次の2つのことに思い至った。

コメント
1.強い症状は少数穴に短時間治療、弱い症状にはツボ数を増やし、長時間治療になる傾向

代田文彦先生は次のように話してくれた。
限局した強い痛み→局所への少数穴治療で大幅に痛み減少
やや広い範囲の弱い痛み→やや広い範囲への多数穴治療で、小幅に痛み減少

 

2.円皮針・皮内針の治療理論

30年以上前、中国から初輸入された円皮針は針体長2㎜、太さは和針の#8程度だった。しかし現在、わが国の円皮針は長さは最長でも1.5㎜程度、太さは和針の#1~2程度となっている。つまり真皮層は刺激するが、その深部にある皮下結合組織層を刺激しないようにしているらしい。表皮の厚みは0.2㎜、その深部の真皮の
厚さは平均2㎜となっているからだ。

真皮には血管や神経があるので、刺針によりこれらの組織を刺激する。末梢神経に弱い刺激を与えると、ゲートコントロール理論により強い痛みを鎮痛できる。また血管を刺激すると内出血するが、その損傷再生過程で、組織の改編が行われる。

あえて皮下組織に針先を入れないのは、円皮鍼を身体に入れている間、皮下筋膜(浅層ファシア)を刺激することでチクチクするのを避けるためだと考えた。

※昔、「医道の日本誌」におもしろい記事が載っていて記憶に残っているので紹介する。皮下鍼を開発したという針灸師の先生がいた。この皮下鍼というのは皮内鍼とよく似た形をしているが鍼体長は5㎜~1㎝程度(現在でも市販している)。それだけの製品なので、ちょっと長い皮内針に過ぎないという意見が出たのも当然であった。そこでこの針灸師は大御所である柳谷素霊に「皮内針の定義とは何ですか?」と質問した。素霊は「皮膚(表皮と真皮)内に針先を長時間留めておく針なり」と答えた。この答えを聞いた針灸家は「皮下針というのを考案したが、これは皮内針とは違いますね?」と念をおした。素霊は「違います」と返事したという。大家にお墨付きをもらったことで、”皮下鍼”という新単語が生まれた。

 


針灸臨床のための浅筋膜と刺激手法 ver.1.1

2022-08-13 | やや特殊な針灸技術

以前、「筋膜(ファッシア)の問題点の整理 ver.2.0」題したブログを発表したが、鍼灸臨床にあまり関係ない内容を削除するとともに、臨床的側面を追加し、新たに、上記タイトルとして整理することにした。

1.ファッシアとは  

これまで慣習的に筋々膜性疼痛という言葉が使われたが、筋肉は痛まないので現在では筋膜性疼痛という用語に変化した。そして筋膜性疼痛を起こす病態のことを筋膜性疼痛症候群(MPS:
Myofascial Pain Syndrome)とよぶ。MPSは、筋膜トリガーポイント(TP:Trogger  Point)によって引き起こされる知覚・運動・自律神経症状を呈する。筋肉から生じる関連痛は、1938年にケルグレム John Kellgren により報告された。1988年には、トラベル Janet  G.Travellと共同研究者の David G.Simons がMPSの概念を書籍にした。
 
わが国の医学者は、fascia(ファッシア)を筋膜と和訳したものだが、これは後々誤解を生じる元となった。fascia はラテン語の  fascis(ファスキス)「束」を意味する。ファッシアはシーツのような薄い一枚の膜を意味するが、意訳すると、人体における様々な構造物を「包むもの、
隔てるもの」になる。その代表が深層筋膜であるが。皮下組織中には浅筋膜(浅層ファッシア)がある。


 

2.浅層ファッシア(=浅筋膜、皮下筋膜) Superficial fascia

 

 

「膜」といえば、筋を包む膜(=深筋膜 深層ファッシア)のみを考えがちであるが、皮下組織を包む膜もあって、これを浅筋膜(=浅層ファッシア)とよぶ。浅層ファッシアは、皮膚と筋の間にあり、互いに絡み合ってネットワークを形成しているので、どこか一か所を引っ張ること、全体的な緊張やバランスに影響をあたえる。
皮膚をオーバーコートと仮定すると、浅層ファッシアはコートの裏地のようなものである。皮膚と筋の間のスライドを援け、外部からの圧力に対して筋肉を保護する。もし浅層ファッシアがないとなれば、コートはゴワつくので着心地が悪いものとなる。

浅筋膜は広大な面として広がるので、個々の筋応じた深筋膜と箱となり。頭部・頚部・胸部とった身体区分で分ける。

  
3.浅層ファッシアへの刺激手法

1)挫刺針(塩沢幸吉著「挫刺針法」医道の日本社、1967より)


塩沢幸吉創案の挫刺針法は、この浅層ファッシアの癒着を剥がすので効果があると考える者がいる。塩沢は「挫刺針法とは、挫刺に適する針先が「J 」の字になっている特殊な針を使用し、表皮・真皮及び皮下組織の一部を極めてミクロな状況下において刺切し、挫滅することによって、‥‥」と記している。この治療は患者に強い痛みを与えるので、コリの強い者に対する最終手段として行うようだ。
   
塩沢の症例報告:右側の背部から肩頚部に強度の疼痛を発し、さらに右上肢に強い倦怠を訴えて通院する慢性胃炎の患者の鍼灸治療を1年2ヶ月色々な方法で治療してみたが疼痛は一向に軽快しなかった。しかし皮下組織とおぼしきところまで数回にわたって線維を引き出しては切除したところ、患者は今までの苦痛が一掃したとの治験を紹介した。

2)撮診


   
皮膚と皮下組織を一緒につまむと、痛みを強く感じる部とさほど感じない部があることに気づくが、この現象を治療に応用したのが成田夬助(かいすけ)が報告した撮診(=skin rolling  スキンローリング)である。撮診の異常所見で、「撮痛」は皮神経の閾値低下部位であろうが、痛みの有無は被験者にしか分からないことである。しかし撮診時、他部位と比べて「皮膚と皮下組織が分厚く感じる」のが常だが、これは検者が感じる所見である。分厚く感じるのは、浅層ファッシアの反応を捉えていると思えた。


日常的鍼灸臨床で、よくみるのは深層ファッシアが存在しない腱・腱鞘部の反応である。腱鞘炎時にいける手関節背面の撮診反応は、撮診すると跳び上がるような痛みを感じ、また撮んだ皮膚が厚ぼったく感じる。 厚ぼったく感じる理由こそ、 浅層ファッシア反応なのだろう。鵞足炎時の膝関節内下方の撮診でも同様のことがいえる。
結合織マッサージやロルフィング(1930 年代にアメリカでアイダ・ロルフによって開発された浅層ファッシア癒着を解放する治療)は同様の意義をもつと思えた。


4)走缶法(スライドカッピング) 

     
事前に皮膚面にオイルや石鹸水を塗り、滑りをよくしておく。  その上から吸玉を一つかぶせ、吸玉を手指で肌上で滑らす。陰圧が強ければ強刺激になる。陰圧が弱すぎれば、吸玉を滑らす際、空気が中に入って皮膚から外れやすくなる。通常の吸玉治療よりも短時間で皮膚を発赤/充血させることができる。

   
これは毛細血管を充血させ、浅層筋膜の緊張を緩めている。強い陰圧では吸玉痕が何日も残る   が,これは毛細血管が破れ内出血した状態である。この内出血は自然と皮膚に吸収されるが、完全に消失するには何   日もかかる。痕が消失した後でなければ、再び走缶法をするのは痕が消退しにくくなるなどの医療過誤を生ずる恐れがある。

走缶法をエステやリラクセーションの場で行い、患者に満足感を与えるのであれば営業として行う価値があるのだだろうが、医療的価値は判然としない。
 
5)刮痧(かっさ)療法
「刮(かつ)」には削るという意味で、「痧(さ)」は滞って動かなくなった血液を示している。つまり、刮痧とは「肌をこすることで滞っている血液を刺激し、滞りをなくす」療法をいう。
     
専用の板片や中華料理のレンゲを使い、不調を感じる部分をこすることで、肌の表面に瘀血を浮き上がらせると同時に、血流やリンパの流れが促進されることで、老廃物をスムーズに排出することができるとされている。これも浅筋膜刺激になるだろう。


刮痧療法で肌をこすると、皮膚が充血・発赤して痛々しいほどに見える。これは内出血そのもので、これが瘀血だとするのは科学的な見方とはいえない。

毛細血管が切れた状態となるのではないか?
しかし透熱灸すると皮膚が火傷し、これが疾病治癒に効能があるとする論法からすれば、内出血させることが疾病治療に有益な作用をもたらすという見方もある。問題なのは、皮膚をこすって充血・発赤させる行為が度を越える危険性があることである。事情を知らない者が見たら、ムチで打たれた痕のように思うかもしれない。  前述した走缶法にも増して皮膚に痕がつくから、事前に患者に覚悟してもらった上で行う。痕がつくという欠点以上にメリットがあれば行う価値があるというものである。

かつての教え子に、徐園子先生がいて、すでに十年以上カッサ療法に取り組んでいる。8月12日は徐由美先生(旦那が兄弟)と一緒に当院までお越し頂き、私にお試しでカッサ療法を体験させてもらった。徐先生はグイグイと押してくる性格。
治療時間は40分コースと他の治療と組み合わせる80分コースが用意されているという。私はお試しということで15分ほどやってもらった。その結果、下の写真のようになった。非常に痛々しいが、受けた感じだが、少し強めのマッサージという程度のもので、痛みに我慢するという性質ものではなかった。カッサについては、今後詳しく説明するつもりでいる。


虚血性心疾患に対する針灸治療の検討 Ver 1.4

2022-08-05 | 胸部症状

開業針灸にとって、虚血性心疾患に施術することは、十分な配慮を要するが、患者は現代医療の管理下にあるならば、針灸治療そのものは禁忌ではない。

1.虚血性心疾患の痛みの機序


1)交感神経による心臓の支配は、左T1~T5に関係があり、なかでも左T1~T3の関与が最も大きい。この範囲内で、交感神経性デルマトームと体性神経デルマトームの体壁に反応が出る。

2)左Th1分節に入る交感神経が強い場合には、腕神経叢を介して、とくにC8Th1支配領域である左上肢尺側に放散痛をもたらすことがある。

3)心臓に関係する最大の傍脊神経節は、星状神経節である。交感神経興奮の程度が強ければ、星状神経節(下頸神経節)や上・中頸神経節まで興奮し、頭顔面症状を呈する。

4)心臓は横隔膜隣接臓器なので、横隔膜神経を興奮させ、C3C4デルマトームやミオトーム上、すなわち頸肩のコリや痛みを生ずる。


2.心疾患の体壁反応

心疾患により生じた胸部や上背部の筋緊張を緩めることは、心臓への悪影響を減らす役割がある。
石川太刀雄著「内臓体壁反射」によれば、皮電点分布の統計では下記のようになるという。虚血部位による反応点の大きな違いはあまりないようだ。皮電点は、皮膚の交感神経興奮度を電気的に調べる器械である。撮診は、皮神経の疼痛過敏帯を調べる方法だが、交感神経興奮が交通枝を介して体性神経を興奮させた場合には同様の結果となると筆者は考えている。また撮診法に熟練すれば、軽度の皮下浮腫帯の存在も把握できるので、この場合には交感神経反応を捉えていることになるであろう。

3.体性神経を刺激すること

心疾患における体壁反応は、第一義的には交感神経興奮に由来するが、針灸治療では、圧痛や硬結反応を重視するので、二次的に生じた脊髄神経興奮による症状に重点をおくのが普通であろう。針灸の治効機序は、脊髄神経刺激→交通枝→交感神経へ影響ということで、交感神緊張の減少にあるという説が支持されている。
治療点の選択は、心疾患であるといっても、肋間神経痛の治療と同じように、とくに体性神経が深層から表層へ出る部の圧痛硬結に施術する。皮膚や筋の痛みを緩和することで、心臓に由来する痛みも改善できることがある。ただし針灸で症状が軽減したからといって、心臓神経症などの機能性の疾患だとみなす論法は通用しない。

3.筋や皮膚への刺激が心臓に与える影響 

1)TravelとRinzlerは狭心症や急性心筋梗塞の患者9名に対して、胸部の痛みを誘発 する部位の真上にあたる皮膚にプロカイン局麻剤を浸潤させたり、エチルクロライドで 表面を冷却させると、多くの場合痛みが長時間にわたって完全消失することを見いだした。(フェリックスマン著「鍼の科学」医歯薬出版)

2)一方、Pastinszkyらは、ネコの左側胸部皮膚に刺激性溶液を4週間塗布し続けることで、皮膚や皮下組織に紅斑や浮腫を生ぜしめ、潰瘍も生ぜしめるに至ったが、これにより大部分のネコでは陰性T波、房室ブロック、徐脈、不整脈、脚ブロックなどの心電図変化が生じた。心筋の毛細血管は拡張し、心筋の幾本かの繊維には微小壊死がみられたことを報告している。(フェリックスマン著「鍼の科学」医歯薬出版)

3)大胸筋トリガーポイント活性は、体性-内臓反射による心機能障害を引き起こす。
上室性頻拍の原因は胸骨と乳頭線の中央にある右第5第6肋間の左大胸筋のTPは心疾患患者の61%にみられる(トラベルとサイモンズ)。 
※上記部位は、歩廊穴に相当している。

4.その他の針灸治療の文献

1)内関刺針

中国では、内関穴に手技針を行うことが広く行われている。実際に内関穴に中国鍼の30号で手技針をすると、非常に強い響きになる。生きるか死ぬかという緊急時には試みられるだろうが、わが国の針灸の環境下では、このようなケースは針灸守備範囲外となる。
理論的には、T1交神経は頚部交感神経節→鎖骨下動脈→上肢動脈血管壁へと走行するので上肢の動脈血壁に影響を与える刺激が有力な手段となる。すなわち内関穴刺針は、星状神経節刺(加えて大椎一行深刺)とは同じ作用機序になる。 
    
虚血性心疾患患者3名の左内関に1番針を刺入し2分間雀啄し10分間置針を行ったところ、平均6%程度の冠拡張がみられたが、ニトログリセリン舌下錠5mgでは平均15%の冠拡張がみられた。つまり内関はニトロに及ばなかった。なおこの時、ニトロでは血圧、心拍数ともに増加するが、内関では変化ない。
しかし不安定狭心症1名(安静にしていても頻繁に発作出現)では内関刺針で狭心発作は消失し、運動負荷耐久も向上した。この患者は亜硝酸剤等の薬物療法でコトロール困難な患者であった。針治療は冠動脈拡張という直接効果と、治療中止後も良好な経過を得るという長期効果の2つに分けて考えた方がよい。不安定狭心においては自律神経の不均衡が症状発現に大きく関連していることを考えると、治療はこの不均衡を調整する働きがあると思われる。
(岡孝和ほか「狭心症の針治療」日本東洋医学雑誌 第38巻2号  1987)

2)少沢刺絡

急性の心臓症状に対しては、旧来から少沢や少衝からの井穴刺絡がよいとされている。これは中国より我が国で信じられているものだが、緊急事態の情況なので実際には実施することはもちろん、こうした場面に出会う機会はほとんどないと思われるなか、次の発表が参考になる。

急性心筋梗塞者に少沢穴刺絡(左右)を試みたところ、心電図、血圧、臨床症状がともに改善した。(萩原正識ほか「急性心筋梗塞と鍼灸治療とくに刺絡について」全日本鍼灸学会誌 33巻、4号)

代田文彦先生から聴いた話。玉川病院で先生が当直していた夜、鍼灸師の先生も見学にきていた。その晩、心筋梗塞だったかの患者が搬送された。するとやはり鍼灸の先生から、「小沢から刺絡したらどうか」という意見があり、代田先生は「やってみたらどうか」と答えた。話はそれで終わり。それで終わったのは、効果なかったからなのだろう。

 

6.筆者の行っている治療

かっては内臓体壁反射の中核部位である左C6~C7棘突起の傍点からの深刺を行っていた。これは「後頚部第6~7棘突起の外側で椎骨すれすれに直刺4㎝以上が最良」だとする郡山七二の見解を参考にしたものである。左Th1~Th3の高さの起立筋部、左乳根穴、左天池穴あたりに治療点を求めることもある。刺針すると、数分後から左胸部の苦しい感じがとれてくることが多い。

当院来院するのは非急性なので、現在では左右のTh1~Th5の短背筋筋膜まで刺入、5分程度の置鍼が中心となっている。短背筋筋膜のTP活性化すると、あたかも肋間神経痛のように痛みが回り込む(=放散痛)ということを根拠としている。


1)96才、男性(元開業医)


狭心症のたびたびの発作あり、冠状動脈狭窄もあることから、2年前に冠状動脈ステント手術をした。しかし左前胸部、左上背部に重圧感が時々生ずる。左前胸部全体と、左背部Th1~Th5の高さに撮痛を求める。これが心臓-体壁反射の反応だと解釈して、仰臥位・伏臥位にて反応点にそれぞれ5分間置針。すると直後から重苦しさが軽減。1週間後再来、以前の撮痛帯は大幅に軽減するも、今度は左C7~Th3の高さの上背部が凝るという。

この範囲に撮痛があり、同じ高さの棘突起直側に強い圧痛点があったので、棘突起直側刺を実施し、治療直後より症状軽減。
結局、上記症状は、出没を繰り返すが、鍼治療するたびに軽減する。患者自身も、心疾患発作の予兆を鍼灸で食い止められていると感じている。

 
2)46才、男性(会社員)

数年前から、時々動悸がする。ホルダー心電図をすると、1日数回期外収縮が生じているのが判明した。医師は心配しなくてもよいとうが、不安感が強いという。
別の針灸院に通院したこともあったが効果が実感できなかったというので、片道2時間かけて来院した。
左前胸部胸骨~乳頭線の間第3~肋骨下縁に撮痛を認めたので、数カ所に寸6#2で1㎝程度の置針5分間実施。左Th2~Th7棘突起の高さにある起立筋部の撮痛もあったので、反応点数カ所に1ン㎝程度の置針5分。さらに反応点の最も顕著な数カ所を選んでせんねん灸を実施。同部に毎日のせんねん灸(自宅施灸)を指示。
以来、2週間に1回程度来院。動悸の回数は1週間に数回程度と、大幅に減少している。

 

3)90才、女性

以前から左を下にして寝ると左胸部の苦しさを感じていた。医師から狭心症だといわれ、ニトロ舌下錠やニトロ貼布薬を頓服的に使用している。こうした薬を使うと、苦しさは減るのだが、完全になくなる訳ではなく、漠然とした苦しさがあるという。本患者は、つらくなると時々当院の針治療を受け、その都度数日間は、狭心痛から開放されている。