代田文彦先生は、多忙な臨床の傍ら、精力的に原稿執筆された。それは本や雑誌となり、印刷された形として発行され、一部は著者ということで手元にも郵送されてくる。 3)足三里‥‥上部消化器の病、健脚
玉川病院鍼灸スタッフは、こうした印刷物を見て、初めて代田先生の考え方を知ることも多かった。
1979年11月~1980年8月に、3回シリーズで季刊誌「理療」という雑誌に、「迷いながらの鍼灸」というタイトルで書かれた記事がある。2011年1月11日付の本ブログで一度その内容を紹介したこが、手持ちの資料不足で紹介できない部分が相当あった。しかし2012年1月、玉川同期の百合草正博先生が、「その資料なら持っている」というので郵送してくれた。その結果を受け、今回は、代田文彦先生のツボのイメージの全部を掲載することができた。
1)三陰交‥‥婦人科一切
・下腹部とりわけ子宮との関係を強く感ずる。
・子宮頸部に特に関係があり、三陰交の刺激は子宮頸部を緩ませる。
・従って妊娠初期しは刺激しない方がよい。
・子宮頸部の収縮が強いために径血の排出がスムースにいかないことにより月経痛の人は、これをゆるませるために三陰交を使う。
・肝の亢ぶりによる自律神経の調整作用。
2)陰陵泉‥‥婦人科一切
・下腹部領域のイメージ。それも何となく後腹膜という感じ。
・臍からみぞおちにかけての領域で、とりわけ胃の働きを活発化する。
・鼻から咽にかけての作用もある。
・胃の噴門から上部の中空の管と関係するようで、これはゲップ感覚に似ている。
・古来は長旅をする際には、必ずここに灸したものである。
4)照海‥‥足冷・咽痛
・咽喉部と足首以下の血流障害との関連。
・咽との関連から、腎機能低下しているために派生してきていると思われる浮腫・頭痛等々に何となく取りたくなる穴
5)委中‥‥項頸部次いで腰部
・腰が痛い人が来ると、委中に血絡があるかどうかが気になる。
・項頸部の血絡あるいは紅斑を目にする時、項の局所から瀉血がしたくなると同時に、委中に血絡をみつけて瀉血してみたいと思うほどに、この二点間の対応関係は密である。
6)承山‥‥肛門付近、痔
7)懸鍾‥‥項頸部
寝違いの治療は、局所をさけてここだけで奏功することが多い。
8)陽陵泉‥‥身体の側面
・側頭部痛にはじまり、肩関節痛、片痲痺に結びついている。
・胃酸過多では、足三里の代行
・膝の要
・胆嚢穴との関連から胆・肝との関連も除外できない。
9)中封‥‥脳とりわけ視床下部付近
10)内関‥‥上咽頭から胃の噴門の下付近
・上咽頭から胃の噴門の下付近まで
・それに左胸痛の心臓の領域に属するあたりが含まれる
・横隔膜
・食道とか胃の上部も漿膜の水っぽいというか、浮腫のきた状態
・針を用いて灸は用いたくない
11)尺沢、少商‥‥咽
・尺沢は咽の領域。高さは口蓋垂の基底部から喉頭軟骨くらい
・どちらかというと正中に近い範囲が有効
・深さ的には、口腔、咽頭、喉頭の粘膜表面から頸筋、頸椎の領域まで及ぶ
・尺沢が咽の正中に近い領域なのに対し、少商は外側。
・咽は咽でも扁桃領域。アデノイドの付近まで及ぶ。
12)少海‥‥頸の側面~耳
・頸の側面、それも中心よりやや後の領域から耳にかけての領域、顔面外側の副鼻腔付近
・後頭部から後頸部にかけての、コリ、痛み、つれ、あるいは耳閉塞感、耳鳴などに使って効果の現れることが多い。
13)合谷‥‥針麻酔
合谷は、針麻酔の時に使う。抜歯、副鼻腔炎の手術の時に多用した。
合谷は重要穴とされるが、小生は針麻酔の時以外は、あまり使う機会がない。
その理由は、灸の痕を虎口に残すことに抵抗があるからである。
顔面に効かせるというニュアンスは、合谷よりも手三里に印象が強い。
顔面で顎とか歯とのかかわりが強いのは、手では温溜、列缺付近である。
上顎よりも下顎に強く作用する。
列缺は、顎よりも、もっと奥の咽から期間の領域とも関連が深い。
14)曲池、和髎、天柱‥‥目
曲池は目の領域である。目といても表面の結膜とか角膜の領域。目の表面と関わるように、
皮膚の比較的表層とは、全身にわたって何らかの影響力をもっていると考えたい。従って皮膚がかゆいときとか、皮膚病のときに取穴したくなるし、ごく表層の病変ということで、風邪のときにも取穴したくなる。
和髎・目窓は、少し奥に入った虹彩付近と関わり合いが深い。
天柱・上天柱あたりは、網膜から視神経と関わり合いが深い。