AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

講習会:私の現代針灸システム-2 頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)、無事終了しました。

2019-04-24 | 講習会・勉強会・懇親会

平成30年4月に行った<背腰殿下肢と膝痛>の現代針灸の第二弾の実技供覧講習会です。

鍼灸学会Tokyo主催
講演:私の現代針灸システム-2  頸部痛・肩関節痛 (実技供覧)

日時:平成31年4月21日午後1時30分~4時30分頃
場所:JR山の手線「代々木駅」北口下車徒歩1分
 東京医療専門学校(呉竹学園)、代々木校舎       
  〒151-0053 東京都渋谷区代々木1−55 TEL.03-3320-1815

https://ssl.jsam.jp/contents.php/040212oPR5Es/


 

講師:似田敦
お申し込み方法:当日会場で受け付け
参加費:一般3000円、会員1000円、学生(学生証提示)500円

演者ごあいさつ
私が現代針灸を続けて40年が経った。この間、現代鍼灸も周辺医学の進歩とくにファッシア理論を取り入れることで、実際に役立つ効果的な治療手段として変貌を遂げた。
 私は昨年(平成30年)4月に針灸学会Tokyo(会長:山田勝弘先生)にて<背腰痛、殿下肢痛・膝関節痛>の現代針灸治療理論と実技供覧を行い、幸いに好評だったことから、第2弾として<頸痛・肩関節痛>の現代針灸の理論と実技供覧をする運びとなった。諸先生方の針灸臨床に、参考となることがあれば嬉しく思います。

内容(一部未確定)

A.頸痛の治療技術(テキスト11ページ)


1.後頭下筋過緊張に対する上天柱深刺と運動針技法

2.後頭下筋過緊張による頸性めまいと眼精疲労の治療理論
3.頭板状筋緊張に対する坐位運動針技法
4.頭半棘筋緊張に対する頸椎一行刺針とくに治喘治療の意味
5.頸部の長・短回旋筋症状と頸部一行刺針
6.脊髄神経後枝興奮症状と背部一行刺針部位の選択
7.斜角筋症候群、頸神経叢症状に対する天鼎の合理的な取穴と刺針
8.小胸筋症候群に対する上中府刺針
9.バレリュー症候群に対する肩中兪深刺


B.肩関節痛の治療技術(テキスト12ページ)


1.棘上筋腱炎に対する肩井から棘上筋腱に達する斜刺

2.棘上筋腱炎に対する肩髃から棘上筋腱への水平刺と刺針体位
3.肩甲胸郭関節可動筋に対する大円筋(肩貞)刺針と肩甲下筋(膏肓)刺針
4.棘下筋TPs放散痛に対する天宗刺針と刺針体位
5.凍結肩に対する伝統的整復手技
6.凍結肩に対するリズミックスタビリゼーション手技

 

講習会を終えて‥‥

今回の講習会参加は、目算で80名程度で、前回の東大での講習会よりも少なかった。しかしさすが針灸専門学校内で開催されるだけあって、ベッド・骨模型・ピンマイクなど備品が完備され、スムーズな進行ができた。時間配分も予定通りで、よい出来だったと自負している。あまりに自信満々に高圧的に話したためか、参加者が恐れをなしたかもしれない。あまり質問が出なかったことは残念であった。

 

 

(写真撮影:小宮猛史先生)

 


足底の異常知覚に、然谷・公孫の刺針が有効だった症例の考察(64歳、男性)

2019-04-23 | 下肢症状

1.主訴

足の裏が格子の上に乗っているような感覚がある 現病歴 半年前から脚のふらつき、大腿のしびれ、足底が格子の上に乗っているような感覚出現。4ヶ月前MRI検査で、第11~12胸椎部黄色靭帯骨化症と診断され、手術を受け、入院20日後に退院した。しかし上記症状は少し軽くなっただけで不満が残った。医者に質問するも、よく分からないとの回答だった。退院後3ヶ月して当院受診。


2.鍼灸治療(その1)

下背部第11~12胸椎に棘突起に沿って3㎝ほどオペ痕あり。このレベルの脊髄の障害で患者の訴える症状が出るとは考えるには無理があると思ったので、足底圧痛を調べると、足底筋膜に強い圧痛を認めたので黄色靭帯骨下化症とは無関係に足底筋膜炎と考えた。なお脚のふらつき、大腿のしびれは主訴ではないので、当面は無視することにした。

足裏の圧痛点は第一指MP関節裏の足底筋膜停止部と土踏まずの中心部にあったので、母趾背屈して足底筋膜をストレッチさせた肢位で寸3#1で単刺。足底筋膜と下腿後側筋が発生学的に類似性あることから、腓腹筋の圧痛点であった承山に刺針+円皮針を実施した。なお下腿後側膀胱経部は、ヒラメ筋のトリガーポイントが活性しやすい部であり、ときに踵部に痛み放散することがしられている。 すると治療直後から足底症状の大幅な軽減をみて、「針灸がこれほど効くとは思わなかった」と患者も話してくれた。

 

 

3.鍼灸治療(その2)

本患者は痛みに過敏であることから、できれば足底の刺針を避けたかったので、仰臥位で公孫・然谷から寸6#1で2㎝刺針して5分間置いた。また下腿は膀胱経だけでなく脾経の圧痛も調べてみようと思い、脛骨内縁を触診するとヒラメ筋等沿って強い圧痛を発見したので、地機・三陰校を中心とした脛骨内縁にも寸6#2で3本程度置針してみた。すると前述の治療よりもさらに改善した。患者は「下腿の内側に針を多く打つようになってから、さらに症状が軽くなった」と評価した。    

公孫・然谷刺針は長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱であり、それぞれの足母趾と足第2~第5趾の屈曲作用である。またその元になる長母趾屈筋・長趾屈筋は下腿内側の脛骨骨際にある。この部への刺針が効果あることは足底筋膜炎の症状といっても、その正体は長母趾屈筋・長趾屈筋の過収縮が、長母趾屈筋腱・長趾屈筋腱の伸張を強いられた結果として、足底筋膜炎様の症状を生むのではないかと推察した。  


この考え方は、バネ指に対する長・短指屈筋刺針の類似理論となる。
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/e5b5616ff27ed725e4841034d9eee012

 

 

 

 

4.針灸治療(その3)

足裏が格子の上に乗っているとの感覚が軽減したためか、「脚がふらつく」症状は治療できないかと質問された。一応頸性めまいの一種かもしれないと思い、胸鎖乳突筋圧痛もなく、足底の知覚異常もなかった。運動失調かと考え直して、開眼ロンベルグ試験をすると、数秒間も姿勢保持できないことを発見。まず坐位で上天柱深刺するもロンベルグ試験に改善はみられなかった。次に立位で左右の中殿筋(大転子と腸骨稜の中点)に深刺単刺し、また開眼ロンベルグ試験を行うと、片脚で直立できる秒数が3倍以上になった。治療効果の明確な違いをみせつけられた。