筆者は、2011.2.6付「組織別の最適な治療手法」と題し、筋膜、筋付着、腱鞘等の興奮症状に対する刺針法を報告した。今回はアキレス腱を中心とした各疾患について、具体的に針灸治療法を記すことにした。各疾患説明は、どの本にも書いてあるので省略した。
1.アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎
1)下腿三頭筋が緊張し、短縮すると結果的にアキレス腱に加わる牽引力は増加する。アキレス腱炎を生じる誘因がこの下腿三頭筋緊張にあるので、下腿三頭筋へ置針し、筋緊張を緩める。
※下腿三頭筋へ運動針をするには、伏臥位で、足関節背面にマクラ等を入れ、足関節の背屈底屈が自由にできる姿勢にする。(「春日鍼灸治療院、鈴木昭彦先生HPより)
2)アキレス腱本体に知覚は鈍い。ド・ケルバン病や鵞足炎と同じように、アキレス腱炎の痛みは、皮神経の興奮による。皮神経の興奮の有無は、皮膚を摘んで調べる(=撮診)とよくわかる。この撮痛部に対し、皮膚刺激(皮内針など)が効果的である。
※刺絡抜罐法(=刺絡して吸い玉をつける)の処置を加えることで即効的となり1~2回で治癒するという。(「はぐれ針灸学」HPより)
皮内針より強刺激なので、この方が効果があるかもしれない。
2.アキレス腱付着部症
1)アキレス腱炎と同様に考え、下腿三頭筋刺針を行う。
2)アキレス腱の踵骨付着部を丹念に触診すると、鋭い圧痛点が数カ所発見できることが多い。この圧痛点に対し、ピンポイント的に刺針する。これは痛みに対する局所治療点であると同時に、腱紡錘を刺激することで下腿三頭筋の筋トーヌスを緩める狙いがある。
3.アキレス腱滑液包炎
1)下腿三頭筋の緊張を緩める刺針をすることはアキレス腱関連疾患に共通である。
2)腫脹改善:局所の血行を改善することで、滑膜の炎症を鎮める。それには、腫脹部と腫脹周囲部に置針(3番針以上の太さ)。
※この治療方針は抽象的過ぎるが、実際に効果があるので今なお用いられている。リウマチや膝OAの際の膝関節腫脹に一定の効果あるが、ベーカー嚢腫には効果が乏しい。
3)滑液包の存在意義は、組織と組織がこすれあう部の摩擦軽減である。何らかの理由で 可動域が狭くなると、筋力を使って可動域をなんとか保持しようとするが、その時、滑液包の滑液量も増産して、摩擦を少なくするように動く。その結果が滑液包炎である。
治療は、可動域制限のある部分を発見し、可動域拡大を図ることが滑液包炎の治療方針になる。具体的には、足の底背屈、距骨下関節での踵骨の内反・外反などで、刺針ポイントはこれらの筋付着部になる。
上述の考え方は、徳山接骨院TOKUヤン先生HPを参考にした。実際の効果はまだ追試していないので不明だが、方法に具体性があって好ましい。