AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

私の鍼技法と現代鍼灸治療 背腰殿痛・膝関節痛を例に<講演終了> ver.1.3

2018-04-19 | 講習会・勉強会・懇親会

私はこの度、鍼灸学会Tokyoで、講演することに決まりました。内容はほとんど私のブログで紹介していることばかりですが、現代鍼灸で多用する鍼技法を厳選していること、また180分と十分な講演時間を確保されていることが特徴で、これまで伝えきれなかった内容を紹介できるのではないかと思っています。実際に実技を見たい方、直接疑問を私にぶつけたい方など宜しければご参加下をお待ちしています。17ページのテキスト配布します。

全日本鍼灸学会からのお知らせ

 https://ssl.jsam.jp/contents.php/040212SFUzuO/

日月:平成30年4月15日(日曜)

時間:午後1時40分~午後4時40分 

(午後1時~1時30分 鍼灸学会Tokyo平成30年度通常総会)

場所:東大医学図書館3階 大会議室
JR中央線御茶ノ水駅東口下車、聖橋を渡り終えた処の「御茶ノ水駅東口」バス停から「東大構内」行きバスに乗車。「東大病院前」下車。


参加申込み:当日直接会場へ。会員1000円、会員外3000円、鍼灸学生500円

主催:鍼灸学会Tokyo  

 

内容:
開業鍼灸師の通常業務は<常見の症状に対し、当たり前のように鍼灸治療を行い、普通通り治す>ということであろう。この場合、当たり前の治療というのは、当然ながら自分なりにベストの治療を行うことだが、その時はベストだと思っていた治療であっても、臨床験を積んでいくほどに以前と違った進化した治療となっていくのは当然である。その進歩は、科学的思考方法をもって構築されるべきである。現代鍼灸は、未完成の学問ではあが、より実効性のある治療方法へと変更を重ねることで、学問としての有用性を高めてた。今回、35年間の私の臨床により到達した現代鍼灸を、常見疾患である背腰殿痛膝痛を題材として、説明するとともに実技を供覧する。

 なお通常の講義では、症状→所見→病態把握→鍼灸治療考察→実際の治療という順序説明するだろうが、今回は端的に鍼灸技法を紹介するため、治療技法自体と、この技法の使用条件という2点に絞ってザックリと説明することにした。

A.腰背痛の治療技法
 ①背部一行刺鍼(仙椎部含む)
 ②大腰筋刺鍼と腰方形筋刺鍼

B.殿部痛の治療技法
 ③梨状筋刺鍼(坐骨神経ブロック点刺鍼)
 ④横座り位での中・小殿筋刺鍼 
 ⑤陰部神経刺鍼と内閉鎖筋刺鍼
 ⑥股関節徒手牽引
 ⑦仙腸関節運動鍼

C.膝痛の治療技法
 ⑧仰臥位膝屈曲位での鶴頂(大腿直筋停止部)刺鍼
 ⑨立位膝伸展位での膝蓋骨周囲刺鍼
 ⑩鵞足浅刺
 ⑪膝立位での膝窩筋(委中)刺鍼

 

講演会を終えての感想

天気予報によると、当日の午前は強い風雨とされていたが、見事に外れて、よくある曇空だった。会場となった東大医学部図書館とは、東大病院から1~2分の処にある古い建物で、1Fは医学博物館(現在改修工事中)、3Fが会議室になっていた。参加者は120名ほどで、広い会議室ではあったが、ほぼ満員の盛況だった。予定通り3時間の講義と11種類の実技をこなすことができた。私の隣にいるマイクを持った方は、鍼灸学会tokyoの主催者かつ日産玉川病院時代に私を指導してくれた山田勝弘先生。

 

山田先生からはご丁寧に次のようなお礼状メールを頂戴した。

似田 敦先生、今日は長丁場のご講演をありがとうございました。アンケートによれば皆さんが満足しておられたようです。再度、先生の講演を熱望する声がありましたので、その節は宜しくお願い致します。本日は、誠にありがとうございました。今後共、宜しくお願い申し上げます。  山田 勝弘 拝

 

テーマ「私の現代鍼灸システム」  -背腰部痛・膝関節痛を例にして- のまとめ 
文責:広報部 宇南山 伸  先生
 

現代鍼灸の良いところとして、術者が変わっても再現性が高い。合理的な思考の中で新しいアイディアを構築できる。医師と共通の言葉でコミュニケーションが取れる。患者の納得行く説明が容易に可能である、など多くの有利な点がある。今回、似田先生に現代鍼灸の実際をつぶさに開示していただいた。35年の臨床経験に裏付けられた理論とそれを体現する技術は素晴らしいものであった。講義の中で語られた中で『その時ベストであると信じて行った治療も、後日にはもっと良い方法が見つかり、変化してきて今がある。』という進化の過程を語られた言葉には大変重みがあった。
 
講義では、A 腰背痛 B 殿部痛 C 膝痛 の3点についての講義と実技を供覧して頂き、一般的に行われる治療法の他に、更に効果を追求したアドバンス治療の方法を開示していただいた。似田先生は、臨床家の実感として、『その時に効果を体感してもらえなければ2回目は無い、という強い気持ちがなければ、結局「治療する」機会さえ無いという現実から生れた方法である。』と強調されていた。

A.腰背痛 
     
障害のある部分に施術を行うというシンプルな方法であった。しかし「その部分」とは、浅層の大きな筋群ではなく、障害は脊柱の周囲に存在する小さな筋肉の場合が多いという考えである。脊柱に存在する頭部から仙骨につながる筋群は多くの筋の集合体である。その中でも力学的ストレスを受けやすいのは、筋長のある大きな筋群ではなく、近い椎骨同士をつないでいる短い筋群である。したがって、鍼の刺入も棘突起の近側から横突起(肋骨突起)に向かって行い、椎骨周囲の筋肉にアプローチをする。場合によっては、椎骨に鍼をあてて骨膜に刺激を与える。このような手技を見せていただいた。
     
B.殿部痛 

上殿部外側の痛みであるが、加えて大腿部・下腿部の後側・外側と広範囲に放散痛がある場合は、小殿筋の障害が考えられる。その場合は、伏臥位から中殿筋を貫き小殿筋を直接刺鍼することにより改善が見込めるということである。アドバンス治療としては、いわゆる横座りの姿勢を維持してもらい、小殿筋を緊張させた状態で刺鍼するという方法を教えて下さった。
     
静的腰痛に関しては、患側上位の側臥位で上前腸骨棘と仙骨の間にある「後仙骨靭帯」に直接刺鍼するという方法を見せていただいた。これは仙腸関節が原因であることが多く、関節周囲の筋を緩めることと関節空を広げることで改善に向かうということである。そのため刺鍼をしたまま、股関節屈曲・伸展運動をしてもらう。アドバンス治療としては、患者に立位、腰部30度に前屈位を取らせまま刺鍼を行い、運動療法を併用するというものであった。
     
間欠性跛行が出現する状態では、陰部神経刺激が有効であると言われているが、現実的に直接陰部神経を直接刺激する方法は簡単ではない。今回は、閉鎖膜を刺鍼刺激することによって陰部神経を刺激する方法を教示していただいた。上後腸骨棘と坐骨結節を結んだ線上で、二等分点より数センチ下方に刺入点を定め、ひびきのある所まで鍼を進める。アドバンス治療としては運動鍼であり、患者を四つ這い状態にして刺鍼し腰を上下左右に振る運動をしてもらうものであった。
     
C.膝痛 

加齢による身体の変化は、膝に痛みを与えるが、その本態に関しては解らないことも多い。その中で、痛みの原因を単に大腿四頭筋の筋力低下に求めるのではなく、四頭筋の過緊張を問題としてとらえ、四頭筋を緩める方針での治療を見せていただいた。

経穴としては鶴頂、外膝眼、内膝眼を中心に行われた。特に鶴頂に関しては、四頭筋の過緊張を緩めるためには重要なツボであり、アドバンス治療としても、正座するほど深い角度まで膝関節を屈曲させた状態で鶴頂に刺鍼を行うという手技を見せていただいた。

更に膝窩の痛み、伸展障害に関しては膝窩筋の関与が大きいということで、膝窩の下部の部分に治療点を求める。アドバンス治療では膝関節を90度に保たせておいて刺鍼をする方法を教示していただいた。
     
実際に受療した感想:今回は筆者もモデルとなり、背部と頸部の治療を受ける機会を得た。症状は膈兪のあたりから常に凝り感と疲労感が抜けないということと、五ヶ月前にむち打ち症となってから首の回旋時に痛みが残っている状態だった。治療は、背部患部の脊柱寄りの部分から深く入り、椎骨周囲の小さな筋肉を緩めていただいた。アドバンス治療としては、座位にて刺鍼をしたまま、体幹を回旋させ運動鍼としての治療であった。また、頸部に関しても、痛いポイントはC5,C6高位の外側で胸鎖乳突筋の外側付近であったが、実際の治療点はかなり正中より、幾分高めに刺鍼点とされたようである。

治療を受けた感想であるが、鍼管無しで打たれていたのでしょうが、切皮痛は全く無く、瞬時に目的の深さまで到達しているように感じた。頸に関しては、まさに「そこでした!」という感じの鈍いひびきがあり、長い間の万年雪が解けていくような感覚を味わうことができた。施術後は、内部が暖かくなり痛みは限りなく無しに近づいた。この文章を書いている現在、2週間経過したが、痛み、不快感などの戻りは感じていない。

以上のように、多くの手技を開示して頂きましたが、その度ごとに必ずその理論の根拠が示され、説得力のあるお話しを聞かせて頂くことになりました。また、実技供覧ではそのスピードと的確さに関しては素晴らしいものを見せていただけたと思いました。
 多くの先生は、その一歩先のいわゆる「治療のコツ」は中々他人には明かさないことが多いように思いますが、似田先生に限っては詳細なテキストと実技では、全てを惜しみなく開示して下さり、明日の臨床から直ぐに使える貴重な内容の講義であった。

 


鍼灸院における設備・備品の改良アイデア(その4)ver.1.3

2018-04-11 | 雑件

1.以前、赤外線スタンドの根元に「二つ折りした鉄製の格子」(百均で購入)を取り付け、そこを診療中のカルテ置き場とした。しかし使いづらく、壁に移したことで、必要に応じて簡単にカルテを手にとれるようになった。この場所はカルテ置場と小マクラ置場の兼用である。患者を側臥位にさせた時、通常の角マクラだけでは頭が低くなるので、角マクラの上に小マクラをのせることで丁度良い高さになる。

 

 ↓ 変更

 

 

 2.以前はワゴンの下にティッシュケースを取り付けたが、手が届かないことがあるので、赤外線スタンドに縦に設置することにした。Ω型の取り付け金具は、ホームセンターで購入した。ティッシュケースはダイソー百均で購入した。非常に使い勝手がよいが、本来は台などに置いて使用するものだろう。直立した状態で取り付けたので、ティッシュ箱が空になると、フタを開けて交換してその都度セロテープで開かないよう固定しなければならない。

 

 

.ベッド脇には小さなワゴンを置き、モグサや線香、灰皿等を置いているが。しかし使用中の鍼皿を置くには、遠すぎて手が届かない。といって、臥位になっている患者の傍らの脇に鍼皿を置くと、急に患者が手などを動かすことがあり、この時鍼皿が触れて鍼シャーレーが床にころがり落ちることが多々あった。

この対策としてベッド脚を利用した鍼皿の設置台を考えた。当院治療室には電動ベッドと普通の診療ベッドが各1台あるが、電動ベッドの方は、脚の上面部分が平らになっているので、ステンレストレーを両面テープで取り付けるだけで完成。

 

普通の診療台は、脚に角材を当てて、結束バンドで固定。上の方はL字金具2個使って、ステンレストレーの置き台を作った。両面テープでステンレストレーを取り付けた。
角材上部が光っているのは、アルミテープを巻いたためだが、かえって素人工作っぽくなってしまった。このステンレストレーはダイソー百均で購入したものだが、縦180㎜×横85㎜で鍼シャーレーを載せるにはジャストサイズだった。

 

 

 

 

 

 4.普通診療ベッドの脚に作り付けたステンレストレーだが、格好悪くて気になるので、早速改良した。見栄えの悪い脚は取り外した。ベッドの脚は円柱形なので、ステンレスシャーレーの土台となる台座も、断面が直角三角形の木材をつけ、重量負荷に耐えられるようにした。

 

 

 

5.普通診療ベッド下には、一時的にカルテを置くスペースをつくった。このバスケットは、横幅20㎝、奥行22㎝でスチールでできている。これもダイソーで購入。B5カルテが縦向きに入れることができる。一見すると術者の膝にぶつかりそうだが、ベッド端にあることと、ベッド外端からは9㎝内側にあることで、 ぶつかることはない。

 

 

6.モグサ入れ
これまで茶色万能ツボ(中)をモグサ入れとして使っていたが、必要以上にモグサは入る一方で、線香点火用ライターは入らなかった。しかし百均で「ワンプッシュフラップ」という小物入れを発見し、これをモグサ入れとして使ってみることにした。非常に使いやすい形状で、中にライターも併せて入れることができる。ただし完全密封にはならないので、アルコールカット綿を入れるには不適だろう。本商品は、セリエまたはCan do で購入できる。

当院の灸療セット

下の線香入れは、透明プラ性ペンケースを流用したもの。