AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

脊髄神経後枝興奮による腰痛の診療 Ver.1.3

2012-06-22 | 腰背痛

1.脊髄神経後枝痛由来による腰背痛
下肢症状がなく、腰背痛を訴える者で最も高頻度なのが脊髄神経後枝の興奮によるタイプであろう。背腰が痛むのは、この部を知覚支配する脊髄神経後枝が興奮するからである。ではなぜ後枝が興奮するのか、その原疾患としては椎間関節性腰痛、脊椎辷り分離症、変形性脊椎症、脊椎圧迫骨折など種々の疾患があり、それぞれ機序は異なる。ただし鍼灸治療法としては後枝痛症候群として一括した治療が可能である(治療効果は種々異なる)。

2.動的腰痛の大別
動的腰痛(体動時の痛み)を鍼灸治療パターンから区分した場合、筋々膜性と後枝性に大別できる。まずこの2つを鑑別する。側腹位にし、患者の訴える痛む部位を起点とし、斜め45度内上方(脊柱方向)に向けて仮線を引き、脊柱と交わる点の背部一行上の圧痛を押圧して調べてみる。この斜め45度というのは、脊髄神経後枝皮枝の走行に沿って調べるという意味がある。
1)一行圧痛(+)であり、仮線上の撮痛(+)であれば後枝症候群。
2)ともに(-)で起立筋上の圧痛(+)であれば筋筋膜性腰痛。

※上記の記述を裏付ける図を発見したので、載せることにする

 

3.後枝症候群の針灸治療
2)の治療は後日解説することにし、1)の治療について説明する。治療点は背部一行上の圧痛点に行う。圧痛を調べるには、側腹位にて棘突起の側面を指頭で押圧するように行う。反応ある場合、グリグリした組織が触知を伴うので、慣れれば圧痛の有無をい患者に問わなくても分かるようになる。鍼は棘突起の側面をこすりつけるように刺入し、硬い組織中に鍼は入っていく感覚を得るようにする。寸6#3~#5程度の鍼を使用。もし鍼がスカスカするようならば、もっと棘突起の直側から刺入し直す。5~10分置針して抜針する。

大部分の症例で上記方法は著効を得られるが、中には効果不十分の者がいる。おそらくこれは椎間関節性腰痛であるが、その場合、棘突起の外方5分~7分程度外方から直刺深刺(骨に当たるまで)することで椎間関節を直接刺激する方法をとる。5~10分置針して抜針する。

 私は以上のパターンで鍼灸治療をしているが、「斜め45度内上方を探り、その脊椎直側に刺針する」方法をとると、L5やS1椎体直側刺針以外の腰痛は胸椎直側に刺針することになる。意外なことに、上~中部腰椎一行の圧痛は、まれな存在になるだろう。


4.背部一行に反応が出現する訳
脊髄神経後枝は、腰背部の筋を広く神経支配している。では、なぜ背部一行に相当する、棘筋や多裂筋部に障害が多いのだろうか。一般に脊柱傍筋は短い筋で、背部二行線や三行上にみる最長筋・腸肋筋・腰方形筋は長い筋である。腰に強い外力が加わった際、長い筋は、遊びがあるので、この衝撃を受け流すことができるが、短い筋には、力の逃げ場がなく、衝撃をモロに受けるからだと説明される。


現代鍼灸科学研究会 H24.5.20の紹介

2012-06-08 | 講習会・勉強会・懇親会

私達有志は10年ほど前から、年2回、春と秋に現代鍼灸を中心とした鍼灸勉強会を行っている。元々は玉川病院東洋医学科に在籍した鍼灸師の集まりだったので、玉川現代鍼灸研究会と称した。しかし現在では玉川とは無関係なので、「玉川」の名称を省略することにした。すると現代鍼灸研究会となるが、既存に類似の会があるので、半年前から「現代鍼灸科学研究会」という名称に変更した。
今回は、平成24年5月20日、東京都立川市の市民会館で行った。メンバーはその都度異なるが、今回は13名の参加を得た。参加費は、発表者500円、非発表者は1000円であり、講師への謝礼という考え方はもっていない。互いに教え、教わるという姿勢が原則だからである。 

「現代鍼灸研究会」(旧称)というプラカードを持っているのは、代田文彦先生(故)の弟さんの代田泰彦先生。

発表内容(発表者敬称略)
1.鍼灸と自律神経所感2012 by小宮猛史   
2.なぜ、「これ」は健康にいいのか?(順天堂大 小林弘幸)資料提示  by小宮猛史
3.山元式新頭針の概略 by似田敦 
4.和田清吉先生の頭髪際刺針法の概略  by似田敦
5.東京都保険福祉局痛く学術講習会「鍼灸による逆子の胎位矯正」(岩元健太朗報告)
  の内容紹介 by紺野康代
6.山本中式奇経治療の紹介および奇経診断のための打診法 by紺野康代  
7.坐骨神経痛の鍼灸治療 症例報告 by金城美智子
8.五十肩および膝関節痛の針灸治療 症例報告 by高秀喜幸

総評
当会の基本方針は、「新しい知見を参加者に知らしめる」ことにある。新しい知見を見いだせなかった者は発表できないことになる。半年前の前回の発表会は、そのプレッシャーからか発表した者は3名だけだった。私は大いに憤慨して、全員報告して下さいというメールを全員に送ったこともあって、発表数は確保できたと思っている。しかし臨床に密着した発表が少なかったのは残念だった。運・不運があるのでやむを得ないことであろう。
「新しい知見を知らしめる」という課題だけでは厳しいので、通常の症例検討でもよいことにしている。むしろこちらの方が討論が活発になるので、これはこれでいいと思う次第である。
次回勉強会は、11月中旬の日曜、東京都立川市の市民会館で行います。10月になったら、参加者募集要領をお知らせします。発表できる方の参加をとくに歓迎します。