AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

機能性側弯症に対する操体法治療

2020-12-14 | 現代医学的針灸の公開にあたって

1.機能性側弯と器質性側弯の鑑別

まずは側弯症が機能性か器質性かを鑑別する。検者は被験者の後方に立ち、立位前屈するよう指示する。この時、左右の背部の高さに差がなければ機能性、で差があれば器質性と判断する。


2.脊柱側弯症の典型的パターン

下図は右脊柱側弯症の典型パターンで、重心は右側に寄り、右側が伸びている。骨盤は右に傾斜し、右下肢の方が長くなったかているように見える。脊柱は傾斜している側に疼痛性側弯が生じている。
右下肢の膝窩筋(委中)は体重がかかているので緊張が生じる。膝窩筋が緊張している意味は、脊柱の歪みの早期診断点だと書いているものの、それ以上の説明はない。私は膝関節が立位固定されておらず、膝屈曲待機状態にあること、つまり利き脚になっているという意味だと解釈している。
この例では、右腰部と左肩甲間部に脊柱の凸があり、この側に椎間関節接衝や長・短回  旋筋緊張による痛みが生じることが多い。逆に膝窩筋の筋緊張が強ければ、その側の骨盤か降  下していることを示唆する診断点ともなる。
 
これは側弯症の典型的なパターンだが、実際の骨盤や脊柱の歪みは多様性に富むので、たとえば右骨盤が下がっているからといって、必ずしも左肩が下がっている訳ではない右骨盤が下がっていて左肩が下がっている場合もあるので、治療としては肩峰の左右差の矯正、そして骨盤・下肢の左右差の矯正と個別にみてゆく。両方が異常な場合、骨盤・下肢の矯正を先行させる。

3.機能的側弯症に対する操体法 

機能性側弯に対して、これまでも整体的技法が行われてきた。これは側弯を是正するとともに、側弯によって二次的に生じた、頭痛・頸肩コリ・腰臀痛などの自覚症状を改善することを目的としている。ただ整体には種々の流派があって正体がはっきりしない。ここでは橋本敬三の操体法の方法を説明する。操体法は、左右の動きを比べ、動かしにくい位置から動かしやすい位置まで自動運動させ、術者はこれに抵抗を加えるという方式。PNFストレッチの応用手技といえる。
操体法の特徴は、脊柱や骨盤の歪みがあると、必ず膝窩部のシコリが出現するとし、膝窩部のシコリをとることが脊柱や骨盤の歪みにつながると主張していることである。


1)肩峰の左右の高さに差がある場合


椅坐位で、左右の肩峰の左右の高さを比較し、骨盤の左右の高さを比較してみる。肩峰の高さに左右差がある機能的側弯の場合上部脊椎の歪みを矯正する。それには図に示す通り、坐位にさせ、上体を上下左右あるいは回旋させる操体法を実施。


2)骨盤の左右の高さに差がある場合 

骨盤の左右の高さに差がある場合、見かけ上の下肢長にも異常は反映され、骨盤が下がっている側の下肢が長く見える。短く見える下肢の足底を床に置いた本やレンガの上に置き、骨盤の左右の高さが同じになるようにすると、敷物の高さを記録することで下肢長の差を知ることができる。
 
   

仰臥位または伏臥位にさせ、図のような下肢の操体法を実施する。

 

   

 


  


当ブログの目的

2020-11-01 | 現代医学的針灸の公開にあたって

                 「現代医学的鍼灸治療」に、ようこそ

 

これまで鍼灸を学び、迷いながら患者様のへ施術をおこなってきました、針灸臨床を始めて32年(令和2年現在)が過ぎた現在、自分なりの針灸治療も確立しつつありますが、中間報告の形でまとめることで、これまでの自分の成果を緒先生方に報告することにしました。発表するのは年令的(身体的・頭脳的に)に、余裕がなくなってきていることもあります。
結果的にですが、臨床5年経過あたりで、現代鍼灸を志すことになりました。現代鍼灸の治療は、端的にいえば論理的であることに尽きます。これまでのところ論理的に考えていこうとする鍼灸臨床理論は現代鍼灸以外にありません。なぜそのツボを使うのかとか、どうして鍼ではなく灸を使うのか、あるいはなぜその手技や体位で施術するのかなどに対し、自分なりの回答を与えました。究極の目標というより願望となりますが、現代鍼灸医学の理論体系づけにあります。

もう一つのテーマは、古典鍼灸特有の、非合理的な考え方をした理由を突き止めたいと思ったためでもあります。おもに自然の観察から人間の機能を類推したものなので、我々も古代人の気持ちに立ち返っての自然観察により、その謎も解けるのではないだろうかと考えました。古典医学そのものではなく、なぜそう考えたの方が重要なのです。

なお本ブログは、平成18年3月10日から配信開始しています。記事<「現代医学的鍼灸治療」にようこそ の日付は、3017年となっていて誤りではありますが、ブログ閲覧で最初になるようにしたためです。

当なお、本ブログのタイトルに続くVer.○○との表記ですが、当初はすべてVer.1.0(初回版)になりますが、その数は多く、Ver.1.0に限っては表記を省略しています。後日これに改修を加えることもあって、小さな改修には、小数点以下の数字を、大きな改訂の場合には小数点以上の数字を与えて区別しています。たとえば、Ver.2.1の場合、大きな改訂を1回行い、小さな改訂を2回したことを示しています。

ブログに対して、ご意見・ご感想を頂戴することは歓迎するところです。しかし今後匿名で私に回答を強いる質問等につきましては、今後返信しないことにしました。(平成30年2月15日)

 

本ブログの記事(文字+図表)のみを、Wordで印刷する方法

本ブログの記事を図や写真入りで印刷して残しておきたい。余計なものは印刷したくない。そんなときの印刷方法。

①インターネット上で、プリントアウトしたい範囲を左クリックしつつドラッグ(滑らせ)選択。すると、文字、図や写真が反転。
②選択した上で右クリックし、メニューの中の「 コピー 」をクリック。(インターネットは終了してもOK)
③Wordを開く。白紙を開いて、「貼り付け」をクリック。
④余白を狭くして,改行等も編集するなど、Word上で微調整し、プリントアウトする。
このWordファイルを「名前を付けて保存」すれば、ファイルとして保存することもできる。

※一太郎で行ってみると、文字だけは上記方法でプリントアウトならびにファイル保存できるのだが、図は保存できなかった。図に対してはマウスを右クリックし、「名前を付けて保存」を実行し、パソコン画面上に一度ファイルを作成し、さきほど保存した文書ファイルに図を挿入するようにするとよい。

 

系統的に現代鍼灸を学習するためのCDも販売中です。これまで数百名の先生方にお求めいただきました。
現代針灸臨床論Ⅰ5,000円、現代鍼灸臨床論Ⅱ6,000円で、ⅠⅡ同時購入では10,000円となります。


◎現代針灸臨床論Ⅰ  第16版(令和2年8月31日時点) 本文p323
整形外科・末梢神経障害・歯科  

第1章 頭痛 p23  
1節 針灸不適応の頭痛の除外   2節 針灸適応となる頭痛の概要   3節 頭痛の鑑別診断   4節 頭痛の針灸治療

第2章 頸腕痛 p32 
1節 頸腕痛疾患の概要  2節 頸肩腕症状の鑑別診断    3節 頸肩腕痛の針灸治療    4節 肩こり性 

第3章 肩関節痛 p26   
1節 肩関節の動きと作用筋   2節 結帯動作制限・結髪動作制限と治療   3節 肩関節疾患と針灸治療   4節 いわゆる五十肩
5節 アナトミートレイン

第4章 腰痛 p26  
1節 腰痛疾患の概要    2節 腰痛の不適応の判定    3節 効かせるための針の技法   4節 殿部痛

第5章 腰下肢痛 p32  
1節 腰神経叢症状   2節 仙骨神経叢症状と腰椎椎間板ヘルニア    3節 脊柱管狭窄症   4節 股関節疾患  

第6章 膝関節痛 p31
1節 針灸不適応の膝痛疾患   2節 膝関節痛の鑑別診断    3節 針灸適応の膝関節痛の針灸診療  4節 変形性膝関節症の針灸診療  

第7章 顔面症状 p23  
1節 顔面痛    2節 顔面神経麻痺   3節 顔面部の痙攣  

第8章 上肢部症状 p35 
1節 肘関節痛     2節  手関節痛・手指痛   3節 上肢の神経麻痺と神経絞扼障害  

第9章 下肢部症状 p36  
1節 下肢の常見疾患     2節 足部の常見疾患   3節  下肢の神経麻痺と神経絞扼障害  

第10章 歯科症状 p23   
1節 歯の基礎知識    2節 歯科の主要疾患    3節 歯科領域の針灸治療   4節 口内炎  5節 顎関節症   

第11章 総論的知識 p26   
1節  神経線維と運動制御     2節  MPS(筋膜性疼痛症候群)     3節『鍼治新書』の要点                 

 

◎現代鍼灸臨床論Ⅱ 第23版(令和2年8月31日時点)本文p371
内科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・産婦人科・皮膚科他    

第1章 上中腹部消化器症状  p37
1節 腹痛の代表疾患  2節 針灸院における診察手順  3節 内臓体壁反射と針灸治療パターン  4節 横隔神経と体壁反応   5節 胃疾患と針灸治療  
6節 肝炎患者の扱いと慢性肝炎の針灸治療   7節 胆道疾患と針灸治療  8節 膵炎と針灸治療        

第2章 下腹部消化器症状  p27  
1節 下腹痛と体壁反応  2節 針灸院での下腹診察と針灸治療   3節 下痢   4節  便秘    5節 下痢・便秘の針灸治療    6節 虫垂炎と針灸治療   7節 痔疾と針灸治療         

第3章 鼻科・咽喉科症状  p31  
1節 鼻の疾患  2節  咽頭の疾患  3節 喉頭の疾患   4節 くしゃみ・しゃっくり   5節 かぜ症候群

第4章 胸部症状  p26  
1節 胸痛の針灸診療  2節 動悸・息切れ  3節 咳嗽・喀痰の針灸治療  4節 気管支喘息の針灸診療     

第5章 末梢循環器症状   p32 
 1節 冷え症   2節 ほてり・のぼせ  3節 末梢動脈閉塞性疾患   4節 メタボリックシンドローム  5節 低血圧症

第6章 精神症状と全身症状 p40  
1節 不眠症  2節 疲労倦怠および貧血  3節 不定愁訴症候群・神経症・更年期障害   4節 肥満 

第7章 腎・泌尿・生殖器症状  p32  
1節 腎・泌尿器と体壁反応    2節 主な腎疾患    3節 疼痛を生ずる尿路疾患  4節 頻尿・尿失禁・排尿困難   5節 夜尿症  6節 ED          

第8章 産婦人科症状  p29  
1節 性周期とホルモン  2節 婦人科の主要疾患  3節 婦人科疾患の体表反応と針灸治療  4節 月経異常   5節 月経随伴症状と針灸治療    6節 不妊症   7節 産科の主要疾患   8節 乳房症状           

第9章 眼症状 p32
1節 眼の構造と機能    2節  代表的な眼症状と鑑別診断  3節 代表的な眼科疾患  4節 全身疾患の一部としての眼科症状  5節 眼科の針灸治療            
第10章 耳科症状  p38  1節 耳の構造と機能    2節  難聴・耳鳴の診察  3節 めまいの診察  4節  耳痛と針灸治療  5節  耳科疾患の概要   6節 難聴・耳鳴の針灸治療   7節 めまいの針灸治療    

第11章 皮膚科症状 p23  
1節 皮膚腫瘤   2節 アトピー性皮膚炎   3節 毛髪の異常

第12章 その他の主要疾患  p20  
1節  関節リウマチ   2節 脳血管障害   3節 パーキンソン病  
巻末資料:体性神経デルマトーム図


◎同梱の資料(令和2年8月31日時点)
1.經絡経穴学 37ページ
2.医学語呂1100(基礎、応用、東洋医学) 67ページ
3.東洋医学臨床論(中医学)P92ページ+舌診5ページ+腹診3ページ

 


 

 

 


現代針灸治療の公開にあたって

2006-03-29 | 現代医学的針灸の公開にあたって
 針灸治療は大きく、現代針灸治療と古典針灸治療(中医学治療を含む)にわけられる。現代針灸治療とは、現代医学の知見に基づく治療のことで、解剖学的針灸とは現代針灸治療の一側面をいう。針灸学校教育では両者の基本を教えるが、それぞれの考え方は非常に異なるので、国家試験免許取得後は、医師が自分の標榜診療科目を決めるように、趣向に応じて、どちらか一つを選択し、一生の課題として深く学び始める。

 では古典派の成書は非常に多いのに、ではなぜ現代派(とよべるほどの)成書はあまりないのだろうか。古典派は、古典という共通の原点があるのに対し、現代派は共通のベースとなるマトモな書物があまりないからだろう。現代針灸治療の具体例は、多くの専門書や学術発表の中に見つけることができ、また多くの鍼灸師により毎日の臨床で行われているはずなのに・・・・、である。なかには整形ペイン疾患は現代針灸で、内科方面の疾患は古典派でと使い分ける鍼灸師もいる。これは内科方面の疾患の現代針灸の方法を知らないことからくるものだ。何しろ公開された情報が少なすぎるので、現状ではやむを得ないことである。

 ところで私は、針灸学校の常勤時代と非常勤の現在を通して、20年間以上針灸応用実技の教育に携わってきた。この教科は既存の教科書がなく、各針灸学校の担当教員自身が独自の方法で工夫して教えている。私も日産玉川病院研修時代に学習した内容をベースに治療の理論化を行い、「現代針灸臨床論」と題して、現代針灸の立場から整形、内科、産婦人科、五官科など、ほぼ全診療科目の針灸治療法を現代針灸の立場から学生に教えてきた。

 今回、私の理解した「現代鍼灸」というものに関し、諸先生のご意見・ご批判を頂戴するとともに、「現代針灸」を普及させたく、テキスト内の臨床に役立つ部分を再構成して公開することにした。とりあえず最も需要の多い整形ペインクリニック分野からスタートするが、すこしづつでも、人があまり書いていない内科、泌尿器、産婦人科、耳鼻咽喉科分野にも筆をのばしたいと思う。

現代医学的鍼灸学習のための書籍は?

2006-03-26 | 現代医学的針灸の公開にあたって

 先日ベテラン針灸師を集めて針灸研究会をしたが、私にとっては常識的とも思える本を読んでいないばかりか、こうした本の存在を知らない人が多いのに気づいた。後日の追加もあるが、とりあえず思いつくままに、参考となる本のリストを示すことにした。※印のついた書籍が絶版で、それもかなり多い。学校の図書室や古本屋などでチェックしてほしい。最近では古書店に行かなくても、ネットから簡単に検索し、注文できるようになった。

 1.筋々膜痛の臨床 ハリ治療の西洋医学的手法
   C.CHAN著 大村昭人・北原雅樹訳 克誠堂
 2.※内科的疾患の神経領帯療法 
   F.ディトマーE.ドブナー著 間中喜雄訳 医道の日本社
 3.※内臓体壁反射(復刻版)
   石川太刀雄 木村書店
 4.※鍼の科学
   FELIX MANN著 西条一止ほか訳 医歯薬
 5.※ドクトルなおさんの治療事典
   枝川直義 地湧社
 6.秘法一本鍼伝書
   柳谷素霊 医道の日本社
    長期間絶版だったが、東洋針灸専門学校より再版となった。
 7.※鍼灸臨床実例集
  郡山七二 自費出版
 8.※現代鍼灸治法録
   郡山七二 自費出版
 9.鍼灸臨床の科学
   西条一止監修 医歯薬
10.※図解痛みの治療 神経ブロックを中心として
  山本了、若杉文吉著 医学書院
11.医家のための痛みのハリ治療
  高岡松雄 医道の日本社
12.※「愁訴からのアプローチ」シリーズ 医道の日本誌記事
  全日本鍼灸学会東京地方会
13.北京堂ホームページ 
  淺野周
14.「運動と医学の出版社」刊行のYouYube動画および書籍
  園部俊晴(代表)