1.五臓五腑あるいは六臓六腑?
古典では陰陽五行説が支配しているので、内臓は五臓五腑に分別する。五臓とは肝・心・脾・肺・腎、五腑とは胆・小腸・胃・大腸・膀胱である。ところが経絡の正経は12経あり、それぞれに所属臓腑があるので、五臓五腑ではなく六臓六腑として把握される。臓には心包が、腑には三焦が加わるのである。
三焦と心包は現代医学にない概念であり、解剖してもその実体がないことから、これまで心包と三焦は何を意味するものか、大いに議論されている。心包とは心嚢を指し、三焦とは腸の大網を指すという見解もあるが、私は、心包の機能とは心臓を動かす力であり、三焦とは体温を生む機能だと考えている。
その理由を記す。
2.心包・三焦の機能は生きていることのバイタルサイン
生者と死者の臓器は基本的に同一である。ただ生者はそれが機能しており、死者は機能していない。では死者を死者とする所見は何だろうか?それは心停止と体温低下、(さらに瞳孔拡大)であることは今も昔も変わることがない。すると生者にあって死者にないものを探せば、心臓を動かす力が心包の機能であり、体温を生む力が三焦の機能であることが自ずと知れてくるのである。換言すれば、心包と三焦の機能停止が死となる。生者は六臓六腑が機能し、死者は五臓五腑になるともいえるだろう。
3.手に属する経絡と足に属する経絡
上左図の高橋晄正医師考案の図は、手に所属する臓腑、足に所属する臓腑の区分についての、示唆を与えてくれる。体幹内臓を横隔膜を境として胸部内臓と腹部内臓に区分されているが、この2つは相似形になっている。体幹内臓を立体的に描いているのは手に所属する6臓腑で、縁に簡略的に示しているのが足に属する6臓腑である。
12経絡の何が手の所属で、何が足の所属なのは、明確な回答がないようだが、この図を見るとそれも理解できる。手に属する臓腑は、生命活動工場設備そのものである。工場稼働スタンバイの状況にあり、三焦が機能して地熱発電所(=ボイラー)の温度が上がり、心包が機能してモーターを回転させ工場を作動させる。
その状態になった後に足所属の臓腑が活躍して工場が稼働する。外部から原材料を運び(脾・胃)、加工して製品をつくる(肝・胆)。その過程で産業廃棄物(腎・膀胱)は廃棄される。これを続けることで生命活動が営まれる。
4.ゴールドを火で溶かして、この養分を四肢末端まで行き渡らせる
ところで、この生命活動工場は、何を製造しているのだろうか。これも五臓色体表から導き出すことができる。
胸部臓腑は、心(火)・心包(火)・肺(金)であり、腹部臓腑は、小腸(火)、三焦(火)、大腸(金)である。
これを高橋晄正医師の図に当てはめると、胸部内臓・腹部内臓とも、るつぼに入れた金(ゴールド)を火で溶かし煮詰めている場面が思い浮かぶ。このゴールドは身体隅々にまで養分として行き渡るのだろう。あたかも古代中国の錬金術さらにその背後にある道教思想まで想いをはせることができる。
金丹とは?
中国道教で説く仙人になるための薬。金丹の金は、火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられた。我が国ではお伊勢参りの土産物として、今日でも萬金丹とよばれる漢方の丸薬が販売されている。トイガンで使うBB弾ほどの球状で黒く、少量の金箔(?)をまぶしている。ちなみに萬金丹(マンキンタン)は、アンポンタンの元ネタ。
長らく宮本先生がコメントして下さったのに気づかずにおり、失礼しました。
三焦は知熱発電機で、心包はモーターと捉えることもできますね。三焦は熱をエネルギーに変換し、心包はこのエネルギーを利用して
ポンプを作動させる。まさに宮本先生の発想そのものでしょう。
×知熱発電機
○地熱発電機
誤字の指摘です。 ^^.
本当にいい文章です。 漠然と私は精米所の餅を作る機械を連想していましたが、地熱発電機とモーターという概念が本当に新しく学びます。 ありがとうございます。
>小腸(火)、三焦(火)、小腸(金)である。>> 大腸(金)... への返信
ご指摘の通りでした。早速修正いたしました。