AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

気管支喘息に対して天突から胸骨裏への水平刺が効いている例 ver.1.3

2023-08-02 | 投稿記事

岡本雅典 氏 レポート 2022年7月18日

A.気管支喘息の症例報告

普段から体月2回ほど身体のメンテナンスで来院する48才男性。ある日の来院時、「今回また喘息発作が治まり、呼吸が浅くて息苦しい。いつもこの状態が1カ月ぐらい続く」と訴えることがあった。

その時は、仰臥位にて迷走神経刺激目的で天突に2寸♯5の鍼で、鍼体を90度くらいに曲げ、胸骨の裏に這わすように刺針。「喘息には天突」というのは教員養成科での授業で教わったもの。天突から直刺しなかったのは、気管壁へ直接刺激するのを回避する意味。

固いところに当たったら「響きましたか?」と問うとYes と返答するような具合に行った。得気が得られたらそれ以上深刺せず、また廉泉には寸6#5で刺針し、両者をクリップでつないで1ヘルツ20分間の通電を行った。廉泉刺針は、喉の奥への響きを得やすく呼吸が楽になるかもしれぬという思いからで、迷走神経刺激の意図もある。刺激が不足するようならば、徐々に100ヘルツまで上げていった。1~2分間ほど通電していると、「呼吸が深くなって、楽に呼吸できる」と喜んでいただいた。
喉を湿らすために、寸3♯1で両側の顎下腺にも鍼刺し、ここにもパルスを流した。

その後の来院の際にも天突水平刺や簾泉刺針をしたが、パルス通電はしていない。これは天突に水平刺しただけでも「呼吸が深くなる」という効果が得られたため。このような治療により、これまでリバウンドの経験はない。定喘や治喘は一度も使っていない。


なお41才、女性で同様の症状を訴える患者に対しても天突から胸骨裏への水平刺が有効だった。

※周波数の使い分けについて、現在の僕は1Hzは気管支喘息発作後、深く呼吸が出来るようにする。(2診目以降はパルスなし)、10Hzは花粉症などで喉がイガイガする場合。
100Hzは風邪で喉が痛い場合といったように一応使い分けているが、厳密に比較検討したものではない。

 

B.気管支喘息の薬物療法から考える鍼灸治療の整理

1.気管支喘息に対する現代薬物療法の概略

40年前頃までは、気管支喘息で鍼灸に来院する患者は珍しくなかった。当時の治療はステロイド内服が中心だった。しかしステロイドには強い副作用があることから、過度には使わせず、ギリギリの処でコントロールされていた。予想外の大発作が起こると、呼吸困難となり、救急車で病院に搬送されるのが常だった。

しかし現在、気管支喘息で鍼灸に来院する者はマレとなった。その意味するところは、現代医療が進歩し、代替医療として鍼灸に頼る必要が薄れた結果でもある。

治療の2本柱は、吸入ステロイド薬+気管支拡張剤である。治療の重点は気管支の炎症を軽くして気管支の腫れを引かせる方に置かれるようになった。炎症改善にはステロイド剤が最も効果的である。その投与法はステロイド錠の内服ではなく、気道狭窄の度合いを調べ、必要十分な量のステロイドを吸入する方式に変わった。これによりステロイドの使用量は数十分の一程度と激減したので、昔ほど副作用をあまり心配する必要がなくなった。

 
気管支拡張剤とは、交感神経β2刺激剤のことである。発作時は副交感神経優位になっているので、気管狭小し気管分泌物も多くなり呼吸困難になっている。この自律神経バランスを交感神経優位にする目的で気管支拡張剤を点滴する。


2.気管支喘息に対する鍼灸治療法の整理

以下は、似田敦著「現代鍼灸臨床論」の中から大幅に引用させて頂いた。自分の行った治療が気管支喘息の鍼灸治療体系の中で、どういう位置づけになるのか知ることができる。

1)交感神経優位を目的にする施術

気管支喘息の鍼灸治療は、ステロイド剤のような強力な抗炎症作用はないので、発作時に必ず効くという保証がない。鍼灸治効の基本原理は、副交感神経優位の状態を交感神経優位に誘導させるという意味では、上述の気管支拡張剤的といえるだろう。それには2つの方法が広く行われている。

①仰臥位での天突刺針
天突刺針は、30年以上昔から、天突から胸骨裏にむけて水平刺(事実上は斜刺)する方法が知られていたが、仰臥位で上背部にマクラを入れ、頸を過伸展位にさせるのが大変なのか、中国でも天突から直刺する方法に変わったようだ。天突から胸骨裏へ斜刺する場合、針は縦隔中に入る。縦隔は結合識に満ちていて刺激には鈍感。壁側胸膜を刺激せず、臓側胸膜も刺激しない。ただ大動脈を刺激できる。これは大動脈壁に分布している迷走神経の刺激が治療的意義をもつだろう。天突水平刺というと、気管壁刺激のイメージとなりがちだが、気管は大動脈の奧になる。

仰臥位で天突水平刺が効いたとする場合、座位で大椎強刺激と同じように、副交感神経優位の身体を交感神経優位に誘導した意味があるのだろう。

②肺気管支の脊髄神経断区としてTh1~Th5(とくにTh1~Th3)の高さの起立筋施術として治喘、定喘、肺兪など(伏臥位)への刺針がある。
本来、肺・気管支は副交感神経優位作動性なので、基本的に内臓体壁反射は生じにくい。そのため交感神経優位の胃の治療に中脘や脾兪、同じく交感神経優位の心臓の治療に心兪や巨闕などという兪募穴治療パターンは使いづらい。

③人為的に交感神経優位の情況を作り出すため、強刺激治療や座位での治療を実施する。これには欠点もあり、強刺激になりすぎ、数時間後(とくに夜間)にリバウンド(発作の再発)しやすくなることがある。自律神経は振り子のようなもので、自然に振れ動いている限り問題ないが、人為的に大きく振り子を動かすと、反対方向にも大きく動いてしまうのである。

④このような失敗を防ぐため、筑波大の西条一止先生は太い鍼で短時間(単刺施術)・少数穴治療という考え方を誕生させた。イメージ的には、熱いバスタブに短時間入る感覚である。熱いバスタブに長時間入ると火傷するので問題外。ぬるいバスタブに長時間入ると副交感神経がさらに優位となるので逆効果。ぬるいバスタブに短時間入るならば、風呂に入る意味はそもそもなくなる。パルスをすると、どうしても長時間置針になるので、短時間治療という原則からは外れる。ただし軽度の喘息発作では、振り子の振れ幅も小さいのでパルスをしても、リバウンドについては心配するに至らなくてすむ。
 
2)首コリ肩こりの治療
 
故・高岡松雄医師は、気管支喘息患者発作時に皮内針治療を実施したところ、同じ患者でも、効く場合と効かない場合のあることを経験し次の結論を得た。患者によっては、アレルゲンや感染によって発作が起こるのではなく頚肩部の筋のコリが発作の誘因になっている場合がある。コリを緩めることで発作が楽になることもある」。アレルギーが発作の誘因ならば皮内鍼治療の効果はないとの解釈を提示した。

(高岡松雄「痛みの治療」医道の日本社)


3)灸痕による異種蛋白療法


40年ほど前の医道の日本誌に、「ガットグートつぼ療法」の記事が載っていた。ガットとはガットギターのガットのこと(昔のギターの弦は羊の腸を原料としていた)。グートは小腸のこと。すなわち羊や豚の小腸を細くしたものを、注射注射器で体内に入れる治療法である。ガットグートは体内で自然に溶けて消滅する。要するに埋没針療法の一種である。       


これは減感作療法と似た面をもつ。身体の中に異物が入ってくると、身体は退治しようとして、アレルギー反応が起きる。しかし、その異物は大した悪さをしないことが分かると、同じような刺激にあっても以降は過敏反応を呈さなくなる。そこで用いられるのが手術用の糸や絹糸の埋め込みである。


異物を皮下に埋め込む方法は日本の鍼灸師には禁じられているが、その代用として
透熱灸があると浅野周氏は記した。これは皮膚を焼いて蛋白質を変性させることにより、異物を皮下に埋めたのと同様の効果がある。ただし皮下に異種蛋白ができなければならないので、上質モグサでは効果が乏しい。灸頭針用の質の悪いモグサを使い、米粒大の灸をすえる。浅野氏による喘息に対する施灸による異種蛋白療法は次のように行う。
伏臥位。大椎~至陽(督脈上の棘間穴の中から、圧痛の強い2穴を選択)、左右の肺兪と左右の膏肓(できるだけ肩甲骨を開かせてその内縁)を選択。計6点を選ぶ。灸頭針用もぐさを使用。底辺直径2~3㎜、高さ5㎜大の艾炷をつくり、上記穴に9壮づつすえる。9壮×6ヶ所=54壮になる。熱さは1壮で30秒間ほど続く。粗悪もぐさを使う処が治療のカギ(異種蛋白をつくる)である。10日前後または発作時に、再び同様に施灸する。3回程度の治療で改善するのが普通で、1年に3回治療というパターンを継続する。10日毎ならば何回すえてもよい。

ただし似田がこの方法を試してみようと、喘息患者に大椎の透熱灸を行い、人為的に火傷をつくったことがあったが、あまり手応えはなく残念な結果に終わった。異種蛋白療法として施灸痕を考える方法は、興味深いものだが、神経痛や筋肉痛の鍼灸治療などどは異なり作用機序は複雑になる。今後とも喘息のタイプ別の分類、体位や施灸刺激量などを試行錯誤による検討が必要だろう。

 

4)ヒストキシンからヒートショックプロテインへ

「異種蛋白(ヒストキシン)療法は、興味深いものではありが、実効性は疑問にある」と私(似田)は以前から思っていた。ヒストトキシンという単語が生まれたのは1930年頃で、以後は研究の進化みられていない。これに対して、現在は医学界でヒートショックプロテイン(Hsp)が注目されてきた。灸の火傷作用の効果は、Hspによるものではないか?
Hsp70について、分かっていることを簡単にまとめる。

①Hspは細胞が様々なストレスを受けた際に細胞の中で作られて放出される蛋白質で、なかでも熱に反応するのがHsp70という。Hsp70には炎症を抑制する作用がある。
②ただし自己免疫疾患(アレルギーや膠原病など)の場合には却って症状が悪化することもある。
③Hsp70を分泌させることが、免疫システムに対して良い影響を与える。たとえば40℃の湯船に20分つかると、体温は核心温度1℃上昇するので免疫反応を活性化するという。④直接灸は熱いが熱量的には大したことはないので、たとえば気管支喘息に大椎に7壮の半米粒大灸をしたからといって、Hsp70が上昇して治効をもたらすかどうかの疑問は残る。
これが打膿灸になると話は別で、打膿灸の治効はHsp70増加によるものかもしれない。


5)気管支サーモプラスティー(BT;bronchial thermoplasty)の開発

気管支を物理的に熱することで重症気管支喘息の発作を緩解させようとする治療法が開発され、2015年4月に日本でもこの治療法が保険収載された。これを気管支サーモプラスティー(BT)とよぶ。気管支鏡の先から高周波電流を出し、これにより気管支壁を65℃に加熱する治療である。肥厚した気道平滑筋を薄くし、筋肉量を減少させ、喘息発作を緩和させる。気管支に熱を加えても基本的には痛みや熱さは感じない。この治療原理もヒートショックプロテインといえるのではなかろうか。


6)次回発作までの期間を長引かせる全身治療


発作時の治療は現代医療に任せ、鍼灸は次回発作までの期間を長引かせること。すなわち発作が起こりにくい身体にすることが重要だといわれている。これは方向性としては妥当だが、実際の施術方法まで示すものではない。

 

上写真:外国人向け指圧講習会2022年。下段中央が筆者(高野山宿坊にて)

 

岡本  雅典
あはき師、元東京医療専門学校講師     
オフィス:The 立川鍼灸院 治療室ホスピターレ
     東京都立川市柴崎町3-3-3 櫻岡ビル4F
                  電話 042-526-0766

 


私の得意とする現代鍼灸技法  原稿募集

2022-06-29 | 投稿記事

当ブログ「現代医学的鍼灸」は約17年間にわたり420題を越える内容を発表してまいりました。それは私基準で精選した内容であるわけですが、まだ世間にあまり普及していない現代鍼灸の方法を実践している方がいらっしゃると思っています。そこで次のような企画を提案しました。ブログ「現代医学的鍼灸」は gooブログ310 万中、約1000位で、毎日平均500名の方々が訪問していただいています。このブログに載ることで、多くの読者の目にとまることが期待できます。


1.私の得意とする現代鍼灸技法の原稿募集
 
1)自分のオリジナルな内容。オリジナルではなくても他の先生の治療を改良した治療内容
2)他の先生の発表した内容の追試報告(他の先生の発表した内容を単に紹介したものは不可)
3)すでに発表済のものであってもかまいません。その場合、いつ、どこで発表したのかを併記してください。


2.ご注意
 
1)原稿料は出ません。 
2)原稿文字数は、原則として400字詰原稿用紙換算で、2~5枚程度。
3)図・写真・表はこの分量に含めない。図や写真は添付すると人目につきやすくなる。
4)私(似田)が選者となり発表に値すると判断するものを選出する。
5)主旨を曲げない範囲内で、文章の手直しをすることがあります。また執筆者に手直しをお願いすることもあります。
6)報告者の氏名・住所・電話・治療院名等の公開の有無はご要望に応じますが、当方へ原稿をお送り下さる時は、明記をお願いします。
7)原稿は当方へのメールでお送りください。
8)〆切りはありません。
                    
3.原稿送送付、ならびにお問い合わせ 先                             

あんご針灸院  似田 敦
電話042(576)4418
 nitadakai825@jcom.zaq.ne.jp
〒186-0004   東京都国立市中1-11-26


円形脱毛症に対する鍼灸治験例およびその考察

2022-06-21 | 投稿記事

柏原 修一氏 レポート  2022年6月21日
                                                                              
1.まえがき
 
本症例は、私が実際の臨床にて、初めて受け持った円形脱毛症患者で、見事に発毛し鍼灸治療の効果の大きさを実感した症例である。特に灸治療が有効であったような印象がある。

この症例報告および免疫学的観点からの考察は、2017~2018年にかけて在籍した明治国際医療大学通信制大学院で免疫学課題レポートとして提出した。ただ免疫学という性質上、臨床鍼灸師にとってなじみの薄い内容が多々あるものとなった。臨床にあまり関係のない部分を割愛し、趣向を変えて改めて症例報告することにした。

 
円形脱毛症はウイルスや細菌を排除するリンパ球が、毛根を「異物」と誤認し攻撃してしまう。毛根が炎症を起こし、毛の根元が細くなったり、途中で切断してしまう。脱毛機序は、ヘアサイクルとは無関係で男女の別なく全年齢に発症する。これはストレス→交感神経緊張→頭皮の血管収縮→末梢の血流障害という病態生理を想定したものである。現在では以前ほど精神的要因は重視されていない。


2.症例報告
【患者】40歳、女性
【主訴】①首の痛み ②通常型円形脱毛症(単発型)
【現症状】円形脱毛症は一年前に発症。原因はストレス。現時点まで無治療。花粉症あり。
【治療法】東洋医学的診断に基づく全身治療を行った後、脱毛部位に対し、集毛鍼で皮膚に充血が見られる程度に刺激し、のちに脱毛部位を囲むように糸状灸を施灸した。治療   間隔は週一回。
【経過】治療開始時を図1に示す。頭頂部付近に直径4㎝程度の単発型円形脱毛あり。10回目の治療で脱毛部に産毛様の発毛を確認。その後発毛速度が速くなり、16回目で脱毛部位はほとんど目立たたなくなったので治療終了とした(図2)。その一か月後に別主訴で来院したので確認したところ、さらに毛髪の密度が濃くなっていて、完全に正常状態になっていた(図3)。

図1

図2

図3

 

3.症例を通じて学んだこと

1)円形脱毛症に対する鍼灸の現状
   
本邦における円形脱毛症の鍼灸治療は、患部への刺鍼や灸といった局所治療中心で、中国においてもあまり情況は変わらない。どれも一応の効果を上げているようであるが、診療ガイドラインにおけるエビデンスの推奨度は、C2(行わない方がよい)と厳しい判定を受けている。これは鍼灸来院数としてはかなり少ない円形脱毛症患者を一元的に集めることが難しく、統計処理ができるデータ数に達していないためであろう。


2)円形脱毛症の現代医療

円形脱毛症は、脱毛が進んでいる「進行期」か、症状が落ち着いた「固定期」があり、その時期により現代医学の治療法が異なる。進行期に脱毛をすぐに止める治療はない。固定期には、自己免疫疾患による円形脱毛症の場合は局所免疫療法を行う。局所免疫療法とは、頭皮皮膚の脱毛部分にかぶれや炎症を起こすSADBE(サドベ)という物質を塗り、T細胞を毛根ではなく炎症部分に集めるのが狙いである。発毛が見られるまでは1~2週間に1度の頻度で塗布し、平均3ヵ月で発毛が見られるという。なおSADBE治療は自費診療になる。

最近の研究では、振動圧刺激が薄毛治療に効果があることが明らかになった(ヘアメデカルグループ・日本医科大学形成外科・株式会社アンファーの共同研究)。毛髪を生やそうとするシグナルを出す毛乳頭細胞に、超音波でブルブル…と振動圧を与えたところ、無刺激の場合と比較し、この細胞が約1.3倍に活性化したとのこと。以前から「マッサージで血行が良くなると髪にも栄養が行きわたって良い」ということは何となく常識として知られていたが、血行促進が発毛効果につながるのではなく、刺激そのものが細胞に働きかけ、効果をもたらすことが判明した。


3)円形脱毛症の鍼灸治療理論

脱毛症で鍼灸が有効なのは、円形脱毛症に対してであり、男性型脱毛症(AGA)には無効とされる。
脱毛症の病態生理や治療薬について現代医学が近年長足の進歩を遂げる中にあって、脱毛症の鍼灸はこの数十年ほとんど進歩していない。とはいえ、その脱毛部に対する鍼灸治療という従来的方法が結果的に現代医学の局所免疫療法と似たような考えになっているのが興味深い。
 
たとえば木下晴都著「最新針灸治療学」(昭和61年9月発行)では、<脱毛部が直径1㎝以内の時はその中央に半米粒大灸を3~5壮施灸する。脱毛部が直径2㎝大の時は脱毛面境界部を1㎝間隔で単刺し、半米粒大灸を中心あたりに2箇所行う。脱毛が直径3㎝以上の時は鍼で単刺を同様に行い、境界部に3~4箇所施灸すると数か月後に治癒する>というような内容になる。ここで木下氏の治療を例に出したのは、みな同じような治療をしているので、その代表例として妥当だと思ったからである。

 
お灸について五十嵐純知氏(麗明堂鍼灸院)(下記文献1)は「毛包組織を攻撃する過剰な免疫が、灸刺激による灸痕に攻撃の目標を切り替えることにより、脱毛部位の回復が起こるのではないか」との仮説を提唱している。ただ、その際脱毛部への過剰な刺激は新たな皮膚疾患の原因にもなりかねないので慎重に配慮するよう求めている。


【参考文献】
1)三瓶真一.症状の分類に応じた円形脱毛症に対する鍼灸治療.医道の日本.2014年3月:77-81
2) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
3) 東家一雄.灸療法による免疫学的効果の発現に関する検討.全日本鍼灸学会誌.2002:52(1):15-17
  

柏原 修一 Shuichi Kashiwabara
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