1997年7月25日発行のART&CRAFT FORUM 8号に掲載した記事を改めて下記します。
ハンドウィバーは言うまでもなく自分のアイデア、デザインを自分の手で織る事を仕事としています。一方インダストリーは量を目的とし、他人のアイデア、デザインを効率よく機械生産する事に主眼があり、両者の姿勢には大きな隔たりがあります。
しかし、私はこの一見遠く離れているかに見える両者を結び付ける事に、今後のテキスタイルの魅力と可能性があると信じています。
手織りはペーパー・デザインでは気づかない多くの体験を与えてくれます。この無限の可能性を秘めた手織機での実験により、初めて創造的、革新的な布が生まれます。
ハンドウィバーとインダストリーを結び付ける上で一番の問題は、共同作業者としての「もの作りの姿勢」、コミュニケーションです。
私たちによって提案された布がインダストリーに移され、プレ・プロト、プロト、試作、多量生産と進むにつれそのコンセプト、英気が稀薄になり、最終的に面白味のない布になりがちです。
私か作り出す布は、現実にそのまま生産できないと言う点ではプレ・プロトタイプの布です。生産を前提とし用途を規定されながら、それをも越える創造性豊かな布は、今後のインダストリーを変える力を秘めていると自分に言い聞かせて制作しています。 幸い私の住む信州には糸加工、染色、製織と一貫した仕事が出来る小規模織物工場が数多くあります。
そんな工場の皆さんと心を通わせ、ハンドウィバーとインダストリーの理想的な関係を模索している毎日です。
もの作りは微細な世界から
私が作品を作る時の発想、何かを表現してみたいと感じる源は、ほんの微細な自然界の表情(樹木の樹皮、草木の葉脈、小石の凸凹、昆虫の羽etc)に起因している事がほとんどです。
この表情を布に乗り移せないか、服に表現できないか………と、思考が続いて行きます。ですから、使う技術は固定していません。草木染めからコンピュータ、化学加工まで表現したいものに合わせて、手織で出来る最善の手段を使います。
写真1~6(1994~1997年作成)は量産を目的としたプレ・プロトタイプ・ファブリックです。いずれも織物組織、絹素材と収縮性素材の組み合わせにより表情を作ったものです。長野冬季オリンピックの会期中に行われるファッションショーに使用されます。
写真7~10(1996年作成)は捩り織と絣技術を組み合わせ、昆虫の羽をイメージした生地です。捩り織、絣技術は共に信州に古くからある和装品の製織技術を応用したものです。
写真11.12 は現在試作しているコンピュータ一応用作品と織フェルトです。
手織からデザイン原型を作るという事は何も新しい試みではないですが、ハンドウィバーが創造性の上に用途と市場を学び、インダストリーが創造性を最大限に生かす心と技術を確立すれば理想の「布作り」が可能になると確信しています。
ハンドウィバーは言うまでもなく自分のアイデア、デザインを自分の手で織る事を仕事としています。一方インダストリーは量を目的とし、他人のアイデア、デザインを効率よく機械生産する事に主眼があり、両者の姿勢には大きな隔たりがあります。
しかし、私はこの一見遠く離れているかに見える両者を結び付ける事に、今後のテキスタイルの魅力と可能性があると信じています。
手織りはペーパー・デザインでは気づかない多くの体験を与えてくれます。この無限の可能性を秘めた手織機での実験により、初めて創造的、革新的な布が生まれます。
ハンドウィバーとインダストリーを結び付ける上で一番の問題は、共同作業者としての「もの作りの姿勢」、コミュニケーションです。
私たちによって提案された布がインダストリーに移され、プレ・プロト、プロト、試作、多量生産と進むにつれそのコンセプト、英気が稀薄になり、最終的に面白味のない布になりがちです。
私か作り出す布は、現実にそのまま生産できないと言う点ではプレ・プロトタイプの布です。生産を前提とし用途を規定されながら、それをも越える創造性豊かな布は、今後のインダストリーを変える力を秘めていると自分に言い聞かせて制作しています。 幸い私の住む信州には糸加工、染色、製織と一貫した仕事が出来る小規模織物工場が数多くあります。
そんな工場の皆さんと心を通わせ、ハンドウィバーとインダストリーの理想的な関係を模索している毎日です。
もの作りは微細な世界から
私が作品を作る時の発想、何かを表現してみたいと感じる源は、ほんの微細な自然界の表情(樹木の樹皮、草木の葉脈、小石の凸凹、昆虫の羽etc)に起因している事がほとんどです。
この表情を布に乗り移せないか、服に表現できないか………と、思考が続いて行きます。ですから、使う技術は固定していません。草木染めからコンピュータ、化学加工まで表現したいものに合わせて、手織で出来る最善の手段を使います。
写真1~6(1994~1997年作成)は量産を目的としたプレ・プロトタイプ・ファブリックです。いずれも織物組織、絹素材と収縮性素材の組み合わせにより表情を作ったものです。長野冬季オリンピックの会期中に行われるファッションショーに使用されます。
写真7~10(1996年作成)は捩り織と絣技術を組み合わせ、昆虫の羽をイメージした生地です。捩り織、絣技術は共に信州に古くからある和装品の製織技術を応用したものです。
写真11.12 は現在試作しているコンピュータ一応用作品と織フェルトです。
手織からデザイン原型を作るという事は何も新しい試みではないですが、ハンドウィバーが創造性の上に用途と市場を学び、インダストリーが創造性を最大限に生かす心と技術を確立すれば理想の「布作り」が可能になると確信しています。