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「 学び方を学ぶ 」 関島寿子

2013-10-30 09:07:32 | 関島寿子
1994年5月16日発行のTEXTILE FORUM NO.25に掲載した記事を改めて下記します。

 この度、テキスタイル・フォーラム誌に何回かに亘って書く機会を頂いたので、創作というものを自己教育という視点から見直してみょうと思う。私にとっては、かご作りをすること、独学の手法を試みること、その体験を他の人に伝えることは相互に関連しつつ展開して来た。学び方がわかった時、創作の手法も把めたし、教える事によってより自分の 手法を客観化でき、それが又創作ヘフィードバックされたからだ。
 思いも寄らず、大先輩を生徒の一人としてワークショップで教えるハメになって、私は幾度、身の縮むような思いをしたことか! それなのに、何故か、ふつうなら経験不足と思われるような早い時期から、私は敢えて教えることに挑戦して来た。ヘイスタック・マウンテンエ芸学校での授業に、メアリー・ナイバーグというアメリカの工芸運動のリーダー的存在の陶芸家が参加してくれた時のエピソードを『バスケタリーの定式』の終章に書いたので覚えておられる方もあるだろう。そういう先輩達は、私の初めの不安に反して、皆、とても魅力的な生徒だったのである。彼等は学び方が上手なのだ。
 では生徒としての私はどうだったかというと、自分でも焦立たしい程、下手な生徒だった。課題をこなせないからではなくて、難なくこなせてしまうことが問題だったのだ。いろんな機会に正直に白状してきたように、私はジョン・マックウィーンのワークショップのよさを初め正しく評価できなかった。彼が次々と発明する新技術を修得すれば表現力が増す、と私は思い込んで、その面ばかりを期待して、見事に当てがはずれた。結局、苦労の末私が引き出したのは、技術以前に創作には必要なものがあり、それは人から習える性質のものではないという結論だった。こんな事を経て、私はようやく、作り方と学び方を知り始めたのだ。
 それからは、手探りで実験をしては、丁寧に分析して、創作とは何か、それに必要なものは何かというようなことを少しづつ解明することにした。だから、私の中では、かごの創作は独学の方法の発見と切り離せない。更に進めて、「人から教えてもらうわけには行かないことを、どうやって独習すればよいか」を教える事こそ、自分を実験台にして行った方法を別の角度からとらえ直す最も有効な方法だったといえる。
 考えてみれば、教えるためには自分が偶然に出会った問題とその解決法を、他の人にも何かの意味があるように、分析して再構築しなければならない。一方、学ぶためには、先生からただ受けとるのではなく、問いかけに対して、相手との距離を一つ一つ自覚していかねばならない。私かマックウィーンのワークショップで初めに焦立ったのは、実は学ぶことの意味が良くわかっていなかったためだ。ナイバーグのように学び方が上手な人はきっと自分のこともよくわかっているのだろう。
 78年のマックウィーンのワークショップから十三年後の91年に、私は、今の自分がどういう生徒か知りたいと思って、ドキドキしながら再び受講した。テネシー州にあるアローモントエ芸学校で、かごのシンポジウムが聞かれた時だ。言ってみれば自分についての定点観測をしてみたのだ。
 次回はその時の事、等についてお話したいと考えている。





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