あるアメリカ人が、日本語の「ありがとう」を覚えるのに、「アリゲーター」に似ているから「ワニ」と覚えたところ、いざ使おうとしたときに「クロコダイル」と言ってしまった、というジョークを聞いたことがあります。
とても面白い話だったので、いつ、どこで、だれに聞いたかも記憶に残っています。1988年頃の前の職場で、職場の同僚から聞きました。
最近、ある本の中で次のような記述に出会いました。
「リヒャルト・カーツ氏は、その著書の中で次のように書いています。彼は日本語の《ありがとう》を《alligator》(わに)からの連想で覚えたために、小柄な可愛らしい芸者さんが、彼にオーバーを着るのを手伝ってくれた時、つい《crocodile》と口走ってしまったと。」
(ロンブ・カトー著、米原万里訳『わたしの外国語学習法』2000年、ちくま学芸文庫)
この本の初版は1981年に創樹社から出ています。この話を私にしてくれた同僚はたぶん、この本からネタを仕入れたのだと思います。彼はその後会社を辞め、日本語教師になって、一時は韓国の釜山で働いていたと聞いています。日本語教師志望の彼が、ロンブ・カトー氏の著書を読んでいたというのも自然です。
リヒャルト・カーツ氏がどんな人なのか、その著書がなんなのかは調べてもわかりませんでした。ドイツっぽい名前なので、「アメリカ人」というのは私の勘違いだったかもしれません。
なお、ロンブ・カトー女史(1909~2003)は、ハンガリー人のポリグロット(多言語話者)。世界初の同時通訳者の一人。著書によれば、本を書いた時点(1972年、63歳)で、母語であるハンガリー語以外にロシア語、英語、フランス語、ドイツ語についてどの組み合わせでも同時通訳ができる。イタリア語、スペイン語、日本語、中国語、ポーランド語は半日の復習ののち、通訳ができる。残りの6か国語は文芸書の翻訳ができるレベル。その後30年以上存命だったので、さらに数カ国語上乗せされたかもしれません。
彼女のすごいところは、ほとんどの言語をほぼ独学で身につけたこと(学校時代に習ったドイツ語の成績は悪かったとのこと)。母語のハンガリー語はウラル語族、フィン・ウゴル語派の言語で、彼女が習得した多くの印欧語と別の語族であること。漢字を使う中国語、日本語が含まれているところもすごい。
さきほど紹介した文の直前には、次のように書かれていました。
「日本語で《貧しいこと》を意味する単語と、イタリア語で少年を意味する単語を、わたしは一生忘れないでしょう。両方とも《BIMBO》と発音されるのですから。」
あまり関係ないですけど、私の職場の近くに、「タベルナ」という名前のイタリアンレストランがあります。
連想記憶術というのは確かに効果的ですが、うっかりするとリヒャルト・カーツ氏のような失敗をするおそれがあるので気をつけないといけません。私も韓国駐在中に似たような笑い話を聞き、当ブログで紹介したことがあります(→リンク)。
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