犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

民族主義の終焉

2009-06-29 23:39:13 | 近現代史
 先に紹介した『大韓民国の物語』のなかで,著者李栄薫氏は,韓国の教育の基本理念になっている「民族主義」について,その歴史はあまり古くないことを指摘しています。

 民族主義について語られている部分を要約すると…


 韓国の民族主義とは,二十世紀に入り日本の抑圧を受ける苦難の時代に産み落とされたものだ。

 韓国の建国神話である「檀君神話」で,檀君が降臨したとされる白頭山は民族の聖地になっている。しかし,18~19世紀に何人かの朝鮮の儒学者が中国領との境にある辺境のこの山に登ったが,檀君神話への言及はなかった。朝鮮時代の学者は,朝鮮の文明を古代中国の聖人箕子が東遷して建てた箕子朝鮮から始まったと考えていた。

 朝鮮時代には「民族」という言葉はなかった。「同胞」,「キョレ」などの言葉があったが,語義は現在の「民族」とは異なっていた。「民族」という言葉は,20世紀の初めに日本から輸入され,1919年に崔南善が「3・1独立宣言」の中で初めて使った。

 そしてこの同じ崔南善が,白頭山を初めて神聖視した。

 韓国の歴史において民族という集団意識が生じるのは,20世紀に入った日本支配下の植民地時代のことだ。日本の抑圧を受け,集団の消滅の危機に瀕した朝鮮人は,自分たちは一つの政治的な運命共同体であるという新たな発見に至り,民族という集団意識を共有するに至った。

 それ以後,分断された南北朝鮮において,一貫して民族主義は教育の基本理念になった。これは,朴正煕にも金大中にも引き継がれている。

 しかし,民族主義の衰退は明らかである。今日,若者の10分の1,農村青年のほぼ3分の1が国際結婚をしている。韓国は,世界の多くの国々と同様,多民族国家になりつつある。



 最後に挙げられている数字に少々驚いたので,調べてみました。この中央日報の記事によれば(→リンク


2005年,韓国の国際結婚は,13.6%
農漁村では,35.9%!

 国別で最も多いのは,朝鮮族を含む中国出身が59.5%。そして,ベトナム・フィリピン・タイなど東南アジア出身が17.7%とのこと。

 ちなみに,日本は5.6%(2007年)。農漁村の数字はよくわかりませんでした。

 一時期,「フィリピンからの花嫁」が話題になりました。私が住んでいる埼玉の郊外(ほとんど農村)でも,公民館で主催している日本語教室にいろいろな国の人たち(東アジア,東南アジア,南米の日系人)が来ます。今でも多いのでしょうか。


 いずれにしても,外国(特に黒人や東南アジア出身者)に対する偏見が日本よりずっと強い韓国で,これほどに国際結婚が一般化しているのは驚きです。

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2 コメント

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国際結婚 (スンドゥプ)
2009-06-30 08:34:45
新聞記事にはいろいろあります。
ちょっと古いですが、こんなのもありました。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=88389&servcode=100&sectcode=110
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人権蹂躙 (犬鍋)
2009-07-08 01:02:35
結局,この問題は「アジアの貧困問題」ですね。

「慰安婦」や「売春」の問題とも通じている気がします。
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