犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

消された日本人の功績③

2023-06-01 22:35:11 | 近現代史

写真:韓国華城にある「三・一運動殉国記念館」

 キリスト教系のメディアによると、日本の牧師、神学者の尾山令仁(おやま・れいじ)さんという方が去る5月16日、96歳で亡くなったそうです。

 ご冥福をお祈りします。

 私はクリスチャンではないので、くわしくないのですが、Wikipediaなどによれば、氏は1980年代に旧新約聖書を個人で全訳し、『現代訳聖書』として刊行したそうです。

 私が氏の名を知ったのは、韓国に駐在中の2006年のこと。

 尾山牧師は、1919年の韓国の三一運動時、日本によって教会が焼き討ちされた事件(提岩里事件)について、深く心を痛め、日韓国交回復後の1967年、教会の礼拝堂を再建するために1000万円を献金した、というニュースを韓国で聞いた時です。

「堤岩里教会虐殺事件」の真相~教会再建

 氏はその後も、「提岩里事件」にとどまらず、日本の戦争や植民地支配の歴史について、韓国を含めたアジアに対する謝罪運動を行ってきました。

2014年10月には、氏をはじめとする日本人牧師15人がソウル日本大使館前で行われていた「水曜集会」に出席、元慰安婦の吉元玉(キル・ウォノク)さんと金福童(キム・ポクトン)さんの前で謝罪文を読み上げました。

日本人牧師15人、慰安婦問題訴える集会で謝罪(2014年10月29日、聯合ニュース)

 「提岩里事件」から100周年にあたる2019年3月には、提岩里の「三・一運動殉国記念館」を訪れ、提岩教会の礼拝堂であらためて謝罪したそうです。

日本のキリスト教徒17人が韓国・提岩里訪問 「過去の侵奪を謝罪」(2019年2月27日、聯合ニュース)

 報道によれば、尾山氏は、提岩里にある「三・一運動殉国記念館」を訪れ、代表祈祷を行い、「日本人たちをお許しください」、「今の最悪の韓日関係が好転するよう、お導きください」と述べました。

 記念館の一部である、再建された提岩教会の礼拝堂で「日本の過去の侵奪を深く謝罪します」などと書いた横断幕を掲げ、床にひざまずいて謝罪しました。

 しかし、この「謝罪」を報じる記事に、「礼拝堂が尾山令仁牧師の献金によって再建された」ということは書かれていません。

 日本人の功績は消されるという、もう一つの例になっています。

 1927年生まれの尾山氏が、自分の生まれる前(1919年)に起きた事件について、犠牲者と同じクリスチャンの立場から献金をしたり謝罪をしたりというのは、理解できます。

 しかし、反日市民団体である「挺対協」や、反日の文在寅政権に、結果として利用されてしまったのは残念なことです。

 2019年の謝罪に関しては、それを批判的に見る日本のクリスチャンがいたことも紹介しておきます。

訪韓した牧師たちの行動は、今、正しいことなのか?(三・一運動と提岩里事件から100年) − 井草晋一 −

〈参考〉
消された日本人の功績~淵沢能恵

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