犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

人類史の歴史

2010-03-28 22:22:16 | 文化人類学
 3日前に,次のようなニュースがありました。

4万8000年前のシベリアに未知の人類現生人類と共存か
国際チーム DNA解析
 現生人類やネアンデルタール人の祖先と100万年前に分かれたとみられる未知の人類(デニソワ人)が、ロシア南部に3万~4万8000年前に生存していたことを、ドイツのマックスプランク研究所などの国際チームが明らかにした。現生人類やネアンデルタール人と共存していた可能性が高いという。25日付英科学誌ネイチャー電子版に発表する。
 研究チームは、シベリアのアルタイ山脈にあるデニソワ洞穴の旧石器時代の遺跡で2008年に発見された小指の骨を分析。30ミリ・グラムの骨粉から取り出した細胞内の小器官ミトコンドリアのDNAを解読した。現生人類などのDNAと比較したところ、ネアンデルタール人と現生人類が分岐した約47万年前の2倍も古い約100万年前に分かれた人類であると推定された。
デニソワ人は多様な原人がいた時代に出現したとみられるが、形態を比較できる化石は発見されていない。
 人類はアフリカ起源で、約190万年前にアフリカを出た原人がジャワ原人や北京原人に進化した。ネアンデルタール人などが続き、現生人類は約5万年前にアフリカを出て勢力を拡大したと考えられている。
 国立科学博物館の馬場悠男名誉研究員の話「人類起源を考える上で、興味深い成果。世界の辺境には未知の人類がもっといた可能性もある」
201025日 読売新聞

 新しい化石人類が発見されたということです。

 化石人類の研究は日進月歩で進んでおり,次々に新しい化石が発見され,人類史も書き直されているようです。ここで,過去の研究史を振り返ってみましょう。

 私は物持ちがいいほうで,高校時代の教科書をまだ持っています。1975年に発行された帝国書院版『高等世界史』で,人類の歴史がどう説明されていたかというと…

 最古の人類は猿人類。直立して歩行し,粗末な石器を用いた。次に現れたのが原人類。火を用い,洞窟に住み,石や骨で道具を作った。ことばを話す能力があったらしい。その後,旧人類とよばれる人類が現れた。現代の人間に近い大きさの頭脳をそなえ,生活技術も多彩になった。今から5万年ぐらい前に現在の人間に直接つながりのある現生人類(ホモ・サピエンス)があらわれた。クロマニョン人がその代表的なものである。

脚注には
猿人類:アウストラロピテクス(類人猿から人類への進化の途上)
原人類:ジャワの直立猿人(ピテカンテロプス・エレクトス),北京原人(シナントロプス・ペキネンシス),ハイデルベルク人
旧人類:ネアンデルタール人
という説明があります。

全体の印象では,人類は
類人猿→猿人→原人→旧人→新人
の順に,直線的に進化をしてきたように読み取れます。

登場する人類名は,
アウストラロピテクス
直立猿人(ピテカントロプス・エレクトス=ジャワ原人)
北京原人(シナントロプス・ペキネンシス)
ハイデルベルク人
ネアンデルタール人
クロマニョン人
ホモ・サピエンス

 続いてその15年後,1990年発行の山川出版社『詳説世界史』では,記述がやや詳しくなっています。それぞれの古代人類が登場した年代も記されています。


 人類とは霊長類ヒト科の動物。直立姿勢で二足歩行をし,文化をもつ。
 最古の人類は,アフリカで発見されたアウストラロピテクスやホモ・ハビリスなどの猿人で,約200万年前に現れた。野生の動植物を食料として社会生活を営んだ。その中には単純な打製石器を製作・使用するものがいた。
 約50万年前に原人が出現。ジャワ原人や北京原人で,アジアからヨーロッパ・アフリカまでの広い範囲に分布。脳容積は猿人の約2倍の1000cc以上。知能も発達し,握斧など形の整った打製石器を製作し,北京原人では火の使用もみられた。ことばを話す能力もあったらしい。大小の動物を狩猟していた。
 約20万年前,旧人があらわれた。その分布は原人と同じくらい広かった。脳容積は現代の人類(約1300~1600cc)と同じ。死者の埋葬その他の宗教的行為をおこなった。ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)など。道具として,剥片石器が多く用いられ,用途別の石器の種類がふえた。毛皮の衣服や炉をもった住居など,寒い環境への適応がすすんだ。
 約4万~1万年前にかけて,新人(現生人類)があらわれた。ヨーロッパのクロマニョン人や中国の周口店上洞人など。石刃技法により,用途に応じてさまざまな形の石器が作られた。槍・投槍器・銛・釣針・針などの骨角器も使用された。装身具類,彫刻,洞穴美術が生まれた。…

脚注には,

ネアンデルタール人と同じころ,現生人類とほとんど差のない頭骨をもった先現生人類(プレ・サピエンス)が現れたが,これも旧人の一種と考えられる。

ここに現れる古代人類は,

約200万年前 アウストラロピテクス
約50万年前 ジャワ原人,北京原人,ハイデルベルク人
約20万年前 ネアンデルタール人(ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス),プレ・サピエンス
約4~1万年前 現生人類(ホモ・サピエンス),クロマニョン人,周口店上洞人

75年版の教科書になかったものとしては,ホモ・ハビリス,周口店上洞人,プレ・サピエンス

では,現在はどうか。国立科学博物館のホームページをみると(→リンク

1 アルディピテクス・ラミダス 600~440万年前
2 アウストラロピテクス・アナメンシス 420~390万年前
3 アウストラロピテクス・アファレンシス 390~300万年前
4 ケニアントロプス・プラティオプス 350~330万年前
5 アウストラロピテクス・アフリカヌス 280~250万年前
6 パラントロプス・エチオピクス 270~250万年前
7 アウストラロピテクス・ガルヒ 260~250万年前
8 ホモ・ハビリス 240~160万年前
9 ホモ・ルドルフェンシス 同上
10 パラントロプス・ボイセイ 230~140万年前
11 パラントロプス・ロブストス 180~160万年前
12 ホモ・エルガステル 180~40万年前
13 ホモ・エレクトス(ジャワ原人) 180もしくは110万年前
14 北京原人 50万年前
15 ホモ・ハイデルベルゲンシス 60~20万年前
16 ホモ・ネアンデルターレンシス 40~4万年前
ホモ・サピエンス 20万年前~現在

と,16種類ほどの古代人類が羅列されている。年代も,90年版の教科書から大きく書き換えられています。

 同博物館の馬場研究員は,先の記事で「
世界の辺境には未知の人類がもっといた可能性もある」と述べていますから,まだまだ増えていくのでしょう。

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2 コメント

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Unknown (ひろし)
2010-03-30 05:34:11
このあいだ、1~4万年前にホモ・フローレシエンシスという猿人並の脳が大きさしか無いが(4、500cc)、石器を作るホモ系の新人種?(現生人類の小型化?)がインドネシアの島に存在していたとの特集をNHKでやっていました。国立科学博物館の馬場さんも登場していたと思います
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ホモ・フローレシエンシス (犬鍋)
2010-03-31 00:29:25
これですね。

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp294.html

別の本(『人類進化99の謎』文春新書)では,ホモ・フローレシエンシスの化石は古いもので9万5000年前,新しいもので1万2000年前,石器はなんと80万年前だそうです。

フローレス島は氷河時代に海面が低下したときも大陸とはつながらず,島づたいに行っても,最短19キロの海を渡らなければならないそうです。

初めて航海した人類?
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