犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ヒト、この不思議なる動物⑭~おしゃれ

2010-12-15 22:56:18 | 文化人類学
 久しぶりのシリーズです。

 ヒトの無毛性について書いたとき,モリスの「裸のサル」に言及しました。ヒトは霊長類の中で,唯一「無毛」である。理由はよく分かりません。火を使うようになったからとか,早産によるとか,はたまたヒトはもともと水生動物だったという奇説もある。

 いっぽう,栗本慎一郎のベストセラーに『パンツをはいたサル』というのもありますね。ヒトは動物の中で,唯一服を着る。暖かい毛皮をまとっている動物は,体の一部だから服とはいえません。ミノムシの蓑ややどかりの殻は,服というより家でしょう。

 ヒトはなぜ服を着るのか。

 まず思いつくのが「寒いから」。

 アフリカの暖かいところにいたときは服は必要じゃなかったけれど,ヒトが「出アフリカ」を果たし,寒い所に進出するようになって,服を着始めたんでしょうか。

 でも,今もなお暑い地方に住んでいる人類もいるけれど,全裸でいる部族は少ない。必ずなんらかの服を身につけています。


 寒いからではないとしたら,考えられるのは「恥ずかしいから」。性器を露出して闊歩するのは,本人が恥ずかしいだけでなく,周りの人にも羞恥心を呼び起こします。

 私が子供のころ,夜9時から「金曜スペシャル」という東京12チャンネル(当時)の番組があって,よく「アマゾンの全裸族」などというセンセーショナルなタイトルをつけて人目を引こうとしていました。

 その番組で紹介された「未開部族」は,たしかにいわゆる服は身につけておらず,そのかわりにさまざまな装飾品を身につけていたと記憶しています。

 もっとも全裸に近い場合も,男性の場合,生殖器にサックをつけたり,女性の場合申し訳程度の紐を腰に回していたり…。そして,そのサックや紐に非常に凝る。おしゃれの一つなのですね。そして,紐がとれてしまうと「非常に恥ずかしい」らしい。紐によって,何かが隠れていたわけじゃなさそうなのに。

 服はどうも「おしゃれ」や「羞恥心」と関係があるらしい。それらは必ずしも「生存」に必要なものではない。栗本がいうように「過剰」といえるでしょう。

 ヒトはいったいいつから服を着るようになったのか,あるいはおしゃれをするようになったのか。

 これは化石として残らないので,確かなところはわからない。ただ,「おしゃれ」のヒントになりそうな遺物があります。

 それはアクセサリーです。アクセサリーに使ったと思われる貝製の「ビーズ」や骨・牙でつくったペンダントなどが,約4万2千年前のクロマニョン人の遺跡から発掘されています。また化粧に使ったのではないかと思われる顔料も見つかっている。

 おしゃれや羞恥心は,高度の思考力が必要と思われるので,原人段階にはなく,ネアンデルタール人やホモ・サピエンスの時代になって初めて生まれた習慣かもしれません。

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