犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

辞書の話~国語の大型辞典2種

2007-10-27 00:32:36 | 辞書の話
 私が韓国とかかわり始めた90年代初め,韓国で大型の国語辞典が相次いで発刊されました。89年に大規模な正書法の改訂があり,それが契機になったようです。

 一つは,「ハングル学会」が編纂した「ウリマルクンサジョン」(わが言葉の大辞典)。全4巻,フルカラーの辞典でした。

 ハングル学会の前身は,朝鮮語学会。朝鮮時代末のハングル学者,周時経の弟子たちが起こしたもので,日帝時代に独自の韓国語辞典の編纂に着手したものの,治安維持法違反を問われて弾圧され,結局,辞典の編纂は印刷直前に至りながら挫折。光復後に再び編纂作業を始めましたが朝鮮戦争などの影響で遅延。やっと57年に「朝鮮語大辞典」として刊行されました。

「ウリマルクンサジョン」は,その改訂版として,ハングル学会が総力をあげて刊行したものです。

 しかし,いかんせん4巻本は使いにくい。また,民族主義的な編集方針から,「漢字」の扱いが冷淡で,韓国語の名詞の7割以上を占めるといわれる漢字語が少ない。漢字語を「醇化」した代用語の推奨が現実的でない。いろいろな理由で使い勝手が悪く,高いお金を出して,購入したものの使う人がほとんどいませんでした。

 もう一つは,金星出版社の『国語大辞典』。
 こちらは1巻本。辞書作りの歴史の長い金星出版社らしく,本格的な国語辞典でした。巻末には,外来語のハングル表記や,ミニ漢字辞典(漢字と,その漢字を含む漢字語の一覧)などもあり,たいそう重宝しました。
 同じ時期に,小学館の『朝鮮語辞典』を共同編集していたので,小学館の辞書作りのノウハウを習得したのかもしれません。

 国語辞典の決定版として相当に売れたらしく,5年ほどすると改訂版が出た。改訂版のほうは2巻本になり,やや使い勝手が落ちたものの,初版にない新たな付録も充実しました。

 辞書というのは,日本の広辞苑と大辞林のように競争で改訂を繰り返しながら,進化していくものですが,競争相手の「ウリマルクンサジョン」のほうは,編纂に携わった学者たちの内紛のため,改訂作業がはかどらず,ついに改訂版が出ることもなく消えていきました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国立民族博物館の思い出 | トップ | ラマダスウィート »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

辞書の話」カテゴリの最新記事