犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

Kさんとの長い夜

2018-11-16 23:12:31 | 大阪暮らし

 韓国在住26年で、このたび韓国の拠点を引き払って、「完全帰国」されたKさんと東京で飲みました。

 待ち合わせたのは総武線大久保駅。駅前に、最近見つけたインドネシア料理屋さんがあり、そこに誘いました。数日前にも行ったのですが、閉店時刻(21時)間際だったので入れなかったのです。

 「ほくは前に行ったことがあるかもしれません。牛肉料理がおいしかったことを覚えてます」

 「大久保じゃなくて新大久保にも1軒ありますよ、インドネシア料理」

 「じゃそっちかも」

 エレベーターのない雑居ビルを3階まで上がったところにあります。

 「スラマッマラム(こんばんは)」

 「スラマッマラム!」

 若いインドネシア人女性が迎えてくれます。店の名前は「ビンタン・バリ(バリの星)」。

 「ここはバリ料理の店ですか?」

 「ええと…、前はそうだったんですけど、今はジャワ料理です。主人がジャワ人なので」

 「でも店の名前が…」

 「ああ、変えるのが面倒で…」

 「…」

 ビンタンビール(バリ島のビール)と、牛肉料理のルンダン、サラダなどを頼みました。

 「帰国のきっかけは?」

 「介護です。母の認知症がひどくなってきて…」

 「それは大変ですね」

 「犬鍋さんのほうも奥さんが…」

 「ええ、でも軽かったから。今、リハビリ中です。いずれ普通の生活に戻れると思いますよ」

 「よかったですね!」

 その後、ソウル時代の思い出は、共通の知人の話など、汲めども尽きぬ話が。

 「店変えましょうか」

 「いいですね」

 大久保通りを新大久保駅に向かって歩きます。

 「このへんの韓国バーにも行きましたね」

 新大久保の手前の線路際の道には、東南アジア系の店が多い。

 「8か国料理店か…。おもしろそうですね」

 「入ってみましょうか」

 インド、ネパール、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシア、中国、韓国の計8か国の料理が楽しめるんだそうです。

 「じゃここではベトナムを攻めましょう」

 ベトナムビールと、ブタのホルモンを茹でた料理を頼みました。運んできたのはネパール人。客は東南アジア系もいるけれども、エスニック好きの日本人も多い。

 「なかなか面白い店ですね」

 「値段もリーズナブルだね」

 「区役所通りにアイっていう店がありましたね」

 「ああ、あそこは韓国人がやっていたけど、代替わりして普通のバーになったはず。大阪に転勤になってからは行ってないなあ」

 3軒目はアイに。店のアガシと女性客が韓国語で話していました。

「また韓国バーに戻ったみたいだね」


 女性客が帰ったあと、アガシに韓国語で聞いてみました。

 「ここは韓国人のお客さんが多いんですか」

 「さっきの女性は日本人ですよ」

 「えっ? 韓国語、すごい上手でしたね」

 「お客さんもね、ハハハ」

 「まあ、長く住んでましたから…」

 「何年?」

 「あててみて」

 「3年?」

 「もっと」

 「5年?」

 「もっと、もっと」

 「じゃあ、10年以上ですか?」

 「26年です」

 「ぼくは11年。ずいぶん前の話だけど」

 「すごい!」

 しばらく韓国語で歓談しました。

 「この近くにワバーってあったよね」

 「今もありますよ」

 「じゃ行ってみようか」

 ワバーのほうも、昔と変わらず、韓国語が飛び交っています。

 「なんか、日本に帰ってきた気がしないなあ」

 相手をしてくれたアガシは、両親が日本に住んでいて、自分は韓国のおばあちゃんの家で育ち、数年前に日本に来たとのことで、日本語も上手。

 とはいえ、4軒目で酔いが相当回ってきていたので、何を話していたかよく覚えていません。

 韓国語でパワハラを「カプチル」と言うとか、猫も杓子もは「ケナソナ(犬も牛も)」と言うことなどを、Kさんから教えてもらったことを覚えています。

 気づいたときは夜中の12時ごろ。もはや最寄駅までの終電がない時間でしたが、幸い電車が遅れていたので、なんとかタクシーを使わずに帰ることができました。


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