ターン・プラテート（外国）

　バンクーバー冬季五輪が終わり，１２日からはパラリンピックが始まります。

　タイに出張したとき，タイの人々は冬季五輪にまったく無関心でした。常夏の国ですから無理もないでしょう。

　もう一つ理由がありました。ちょうどそのときタイ国民の関心を集めていたのは，元首相，タクシン氏の財産の行方だったからです。

　国外亡命中のタクシン元首相の財産，約２０００億円は，現在，政府に差し押さえられています。検察は，首相の権力を利用して不正に蓄財されたものとして，没収を主張。２月２６日，最高裁は，その約６割（約１２５３億円）を不正と認め，没収を命じる判決を下しました（→リンク）。タクシン派の「反独裁民主戦線」は３月１４日からバンコクで大規模な反政府講義集会を計画しており，タイの政情は余談を許しません。

　そんなこともあって，タイの人たちはバンクーバーなどにまるで関心がなかったのですね。

「じゃ，夏の五輪でいちばん人気のあるのは何ですか？」

「やっぱりメダルが期待できるボクシングですね」

　ムエタイ（タイ式ボクシング）はタイの国技です。

「でも，ボクシングよりはサッカーのほうが人気かな」

「ワールドカップには出たことないですよね」

「ええ，世界はおろか，アジアの水準にも達していません。でも，東南アジアでは強いほうですよ」

　確かにタイは，サッカーに限らず，政治・経済的にも東南アジアの大国です。インドシナ半島の中央に位置し，西はミャンマー，北はラオス，西はカンボジア，南はマレーシアと接しています。アジアが列強によって分割されたときも，アクロバティックな外交政策で，独立を維持しました。

　ところで，少し前の記事。タイのポップス「マークマーイ」の中で，「愛してる」のいろいろな言語での言い方が並んでいることを紹介しましたが，そのときに取り上げられていた言語は，みなさまのご協力もあり，

英語
中国語
ドイツ語
フランス語
イタリア語
スペイン語
韓国語
日本語
ビルマ語
カンボジア語
ポルトガル語
スカンジナビア語（ノルウェー語またはデンマーク語またはスウェーデン語）
ロシア語
（登場順）

の１３カ国語であることがわかりました。

　世界に数ある国の中で，タイの人々にとって，「代表的な外国」といっていいのかもしれません。韓国が入っているのは，ここ数年タイでも韓流ブームがあったからでしょうか。

　ただ，タイが国境を接している４カ国のうち，ここに入っているのはカンボジアとミャンマーのみ。ラオスとマレーシアは入っていません。

　ラオス語は，タイ語と兄弟のようなもので，外国語とは認識されていないのかもしれません。

　マレー語が入っていないのはなぜなのだろう。少なくともスカンジナビア諸国よりは，タイに身近な存在でしょうに。

　マレーシアとの国境付近には，マレー系（＝イスラム系）の住民もいて，ときどき宗教問題にからんだテロなどが発生しています。唯一，関係の悪い隣国だからなのか。

　それとも，マレー語の「愛してる」，Ｓａｙａ　ｃｉｎｔａ　ｐａｄａ　ｍｕが，音声的に歌のメロディーに合わなかったなど，意外と単純な理由からかもしれませんが。