読者の皆様、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
末の娘は今、浪人生。年末年始の長い休暇も、旅行などの大きなイベントはありません。
その娘に、「これおもしろかったよ」と言って勧められた本がありました。百田尚樹さんの『永遠の0』です。
書籍は450万部を越えるベストセラー、映画化されて、そちらも人気のようです。土曜日の夕方に駅構内の本屋で買って、電車の中で読み始め、その日の深夜に一気に読了しました。
読み進むうちに、いろいろな思いが胸を去来しました。
一つは、亡くなった父のこと。
父は大正15年生まれ。旧制中学卒業後、陸軍士官学校に進み、戦争末期で繰り上げ卒業させられて、内地の高射砲部隊に配属、二十歳で終戦を迎えました。
その父が、8月15日前後に必ず放映される戦争のドキュメンタリーフィルム、特に沖縄戦における神風の映像を見て、よく涙を流していました。特攻隊で死んでいった若者たちは、ほぼどう年齢。自分の代わりに死んでいった者たちへの無念の気持ちからでしょう。
もう一つは、小学生の時に読んだ戦記物。永遠の0にも出てきますが、撃墜王の坂井三郎の書いた『ゼロ戦の栄光と悲劇』という本です。
小中学生用の単行本で、小学校5、6年生のとき、繰り返し読んだ記憶があります。坂井氏は、ガダルカナル攻防戦で負傷し、内地へ引き上げたので、彼の著書に神風のことは出てきませんでした。
小学生のこととて、太平洋戦争の歴史的意味や経過についても知らないまま、ただそこに描かれていた空中戦の面白さに惹かれていたのだと思います。
今回、坂井氏を初めとする歴戦の零戦パイロットのエピソードを読み、かつての読書体験をなつかしく思い出しました。
もう一つは、フランスの小説家にして文化相もつとめたアンドレ・マルローの言葉。このブログにも以前引用したことがあります(→リンク)が、再掲します。
特別攻撃隊の英霊に捧げる アンドレ・マルロー
(略)
「日本は太平洋戦争に敗れはしたが、そのかわり何ものにもかえ難いものを得た。これは、世界のどんな国も真似のできない特別特攻隊である。
ス夕-リン主義者たちにせよナチ党員たちにせよ、結局は権力を手に入れるための行動であった。日本の特別特攻隊員たちはファナチックだったろうか。断じて違う。彼らには権勢欲とか名誉欲などはかけらもなかった。祖国を憂える貴い熱情があるだけだった。代償を求めない純粋な行為、そこにこそ真の偉大さがあり、逆上と紙一重のファナチズムとは根本的に異質である。人間はいつでも、偉大さへの志向を失ってはならないのだ。
戦後にフランスの大臣としてはじめて日本を訪れたとき、私はそのことをとくに陛下に申し上げておいた。
フランスはデカルトを生んだ合理主義の国である。フランス人のなかには、特別特攻隊の出撃機数と戦果を比較して、こんなにすくない撃沈数なのになぜ若いいのちをと、疑問を抱く者もいる。そういう人たちに、私はいつもいってやる。
《母や姉や妻の生命が危険にさらされるとき、自分が殺られると承知で暴漢に立ち向かうのが息子の、弟の、夫の道である。愛する者が殺められるのをだまって見すごせるものだろうか?》
と。私は、祖国と家族を想う一念から恐怖も生への執着もすべてを乗り越えて、いさぎよく敵艦に体当たりをした特別特攻隊員の精神と行為のなかに男の崇高な美学を見るのである」
永遠の0を読んで、後期の神風攻撃が、ほとんど戦果をあげる見込みのない、無駄な攻撃であったことを知りました。そこで散って行った数千人の若者の死は、犬死にといってもいいものだったことを。
それを考えると、無念の思いで一杯になります。
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映画を観ましたが、感動しました。
俳優の中には病気をおして参加し、その後亡くなった人もいたそうです。
娘の中には映画も見て小説を読んだのもいます。
娘の意見によれば、映画を見てから小説を読むのはいいが、先に小説を読むのはよくないと。
私は映画を見ていませんが、小説のほうもお勧めします。