休暇中に、妻が借りてきた韓国ドラマのDVDを見ました。
2007年から2008年にかけて韓国SBSで放映された「黄金の新婦」というドラマの字幕版です。日本ではBS朝日で2010年に放映されたとのこと。
妻が見ているのをときどき見るだけなので、ストーリーは断片的にしかわかりません。例によって、財閥の息子と貧乏な家の女性の恋愛を軸に、どろどろとした愛憎が渦巻くという、韓国マクチャンドラマの定型的なストーリーです。
特徴は、「孤児院出身」のかわりに、ベトナムから来た花嫁が出てくるところ。彼女は、ベトナムで韓国人の男とベトナム人の母の間に出来たホニョラ(混血児)。ベトナム語ではライタイハン。
父親に捨てられて、韓国に父探しに出かけるために、国際結婚斡旋所に登録したとの設定です。これだけですぐに予想がつくとおり、実の父は財閥の会長。
ところで、ドラマの中では、既婚者の男性が1984年にベトナムで商売をしていたときに現地妻に子どもを生ませた設定ですが、1984年といえば、韓国とベトナムはベトナム戦争での韓国軍の残虐行為の後遺症で国交断絶状態にあったはず。むしろ、ライタイハンがたくさん生まれたのはベトナム戦争中だったのですが、そこはドラマだから大目に見ましょう。
韓国は、朴正煕大統領時代、米国からの援助目当てにベトナム戦争に派兵しました。1965年から73年まで、派兵の規模は延べ32万人におよび、ベトナム側の死傷者4万人、韓国側の死者5000人、負傷者1万人だったそうです。(遠藤聡『ベトナム戦争を考える』明石書店)
またウィキペディアによれば、この時期に韓国軍兵士による強姦や、兵士・民間人との婚姻によって生まれたライタイハンの数は、1500人から3万人まで諸説あるそうです。
韓国は軍人だけでなく、特需を当て込んだ民間人も多く渡航。既婚者もそれを隠して現地妻を作り、帰国時に現地妻と子どもを捨てていったとのこと。
ベトナム戦争における韓国軍の行為については、長らくタブーになっていましたが、1999年からハンギョレ新聞がキャンペーンをはり、やっと実態が知られるようになりました。金大中と盧武鉉はベトナム戦争について謝罪しましたが、李明博はしていない(→リンク)。ベトナム戦争従軍兵士に対する配慮からでしょう。朴槿恵も、リンク先の記事内の発言を見れば、謝罪はしないでしょう。
韓国とベトナムの国交回復は1992年。その後、商用でベトナムに渡る韓国人も増加、その際にできたハーフの子どもたちは新ライタイハンと呼ばれているそうです。
「黄金新婦」は、視聴率30%を超える人気ドラマになり、「後進国ベトナムからやってきた花嫁が、文化の違いと差別の中で健気に生き、韓国で家族愛を育んだ」姿を描いた感動的なドラマとして、賞ももらっています。
韓国の新聞記事によれば、
「最近増えている国際結婚とタイミングよく、多くの外国人花嫁が偏見と戦って苦労して生きていることを、社会全体に問題提起し、外国人花嫁たちに対する人々の認識を変えるのに大きく貢献した」
んだそうです。(→リンク)
私が見たのは、長いドラマ全体の半分にすぎないので、今後どう展開するかわかりませんが、韓国人女優扮するベトナム女性に対するドラマ内での差別的発言や、上から目線の憐憫は、ドラマ故の誇張があるかもしれませんが、現在も色濃く残る、東南アジアの人々に対する韓国の差別感情が表れていると思います。
東南アジアの韓流ブームがまだ続いているのかわかりませんが、このドラマをベトナムに輸出したら、反発を買うのは間違いないでしょう。
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http://www.youtube.com/watch?v=MtNVF5Qus_E
ハンギョレのスタンスを支持しているわけではありませんが、この件に関してはえらいと思います。