司会:慰安婦たちは無事に帰国できたか。
秦:控え目にみて9割以上は生還した。日赤看護婦の場合は96%以上だった。看護婦や慰安婦は前線ではなく、比較的安全な場所にいた。戦争末期には戦闘に巻き込まれた場合もあるが。
吉見:生還率は日赤より悪いだろう。慰安所の生活は厳しく、性病にもかかる。病気などで亡くなった女性は少なくなかったはずだ。
〈犬鍋コメント〉
慰安婦の帰還率は、両者の間に大きな差はありません。96%が帰還した日赤看護婦と比べたとき、秦氏は同程度、吉見氏はそれよりは低いと見ています。低いというのがどの程度か、80%なのか70パーセントなのかはわかりませんが、「殺されたり戦場に遺棄された人が多かった」という韓国での通説とは大きく異なるのは確かでしょう。
司会:慰安婦の生活について。
秦:最近、吉見さんは、「強制連行があったかどうかより、四つの自由(居住、外出、廃業、接客拒否)がなかったことが問題だ」と言っている。
司会:慰安所の状況は実際にひどかったのか。
秦:吉見さんがまとめた『従軍慰安婦資料集』に、1945年北ビルマで捕らえられた韓国人慰安婦20人に対する、米軍の尋問書がある。そこには「兵隊と一緒に運動会、ピクニック、演芸会、夕食会に出席して楽しく過ごした」「お金はたっぷりもらっていたので暮らし向きはよかった」「蓄音機ももち都会では買い物に行くことが許された」「接客を断る権利も認められた」「一部の慰安婦は朝鮮に帰ることも許された」「兵隊からの求婚の例はたくさんあった」という証言がある。また、月収は750円で、兵隊の75倍の高収入だった。日赤の看護婦の10倍で、軍司令官や総理大臣の収入より高い額だ。
吉見:調書は、2名の業者と20人の朝鮮人女性の証言を第三者がまとめたもので、どの発言が慰安婦のものかわからない。業者の証言の可能性がある。またビルマがものすごいインフレだったことを考慮しなければならない。43年からインフレが進み、45年には軍票はほとんど無価値だった。軍人は軍票をもっていても意味がないので、慰安婦にチップとして渡したのだろう。その証拠に、その女性たちは「すぐに生活困難に陥った」と証言している。また、その女性たちが女性たちはどのように連れてこられたかといえば、「42年に日本の周旋業者が朝鮮にやってきて集めた」「仕事内容は明示されなかった」。そのときの誘い言葉は「多額の金銭、家族の借金を返済する好機、楽な仕事、新天地における新生活という将来性」だった。これは甘言に当たり、誘拐罪になる。偽りの説明を信じて応募してきた女性に、200~300円の前借金を渡した。これは人身売買に当たる。
〈犬鍋コメント〉
「証言が業者のものだったかもしれない」という吉見さんの反論はいかにも苦しい。軍票が実質的に紙切れになったというのは、慰安婦にとって不運なことですが、きちんとお金をもらっていたことは確認できます。これも、韓国での「お金はもらっていなかった」という認識とは違います。
司会:騙したのは誰か。
秦:朝鮮人だろう。
吉見:「日本から来た」と書いてある。
秦:日本人か。
吉見:日本から来たなら日本人だろう。
秦:当時は朝鮮人も日本人だった。朝鮮語で朝鮮人を騙せるほど朝鮮語のできた日本人はいないはずだ。
吉見:元締めが日本人で、手足として朝鮮人の業者を使うということがよくあった。周旋業者は軍から選定され、軍から便宜を図ってもらって誘拐などをやっている。入るところは軍の慰安所だ。軍の責任は免れない。
秦:朝鮮総督府の管内で、朝鮮人が騙した。旅行許可を出している。朝鮮人巡査もいたのに、なぜ騙しを摘発しなかったのか。
司会:ほかの慰安所でも慰安婦たちは豊かだったのか。
秦:文玉珠という元慰安婦が回想記を書いている。最後はラングーンにいた。人気があって5万円(秦著では2万円余)を貯金し、5000円を下関郵便局へ送った。非常に楽しかったというのが基調になっている。また軍は業者との間では慰安婦側に立っていた。吉見さんの言う、四つの自由のうち三つの自由があった。これでも性奴隷と言えるか。居住の自由はなかったが、それは看護婦も同じだ。
吉見:慰安婦と看護婦では、やらされている仕事の性格が違う。
〈犬鍋コメント〉
文さんのケースは、吉見さんも反論のしようがなかったようです。
司会:強制連行はあったのか。
吉見:強制の問題は、慰安所での強制があったかどうかがすべてだと思う。連れて行かれる過程の問題もある。軍・官憲が直接やったかどうかは別として、誘拐や略取、人身売買であることが問題だ。朝鮮半島で誘拐や人身売買があったことは、秦さんも認めている。業者がやったとしても、業者は軍に選定されている。被害が生じたのは軍が作った慰安所においてだ。当然軍に責任がある。軍・官憲が暴行・脅迫を用いて連行したケースもあった。オランダ政府報告書(1994)には未遂を含め8~9件ある。
司会:それは秦さんも本の中に書いている。
吉見:中国のケースもある。4件提訴し、すべて敗訴したが、裁判所は事実認定をしている。日本軍が暴行・脅迫を用いて連行したことを認定している。
秦:訴訟は十数件あるがすべて敗訴している。そもそもこれらは最初から勝訴の見込みがなかった。なぜ提訴するかというと、裁判によって運動を盛り上げて仲間を集め、募金を集めるためだ。つまり政治活動、経済活動だ。戦前は「国家無答責」の法理があるうえ、時効の問題もある。裁判所はばかばかしいので争わない。
吉見:裁判所は事実認定をしている。
秦:陳述したという事実を認めただけだ。これは法学界で論争になっている。なぜ検事は論戦を挑まないかといえば、実際中国から証人を呼ぼうとしても、中国が応じるはずがないからだ。
〈犬鍋コメント〉
日本軍や官憲による組織的な強占連行がなかったことは、これまでの調査でほぼ確実なので、吉見さんはある時期から「慰安所での強制があったかどうかがすべて」と言うようになっています。
そして、軍が直接連行を行なった例外的なケースであるスマラン事件と中国のケースをあげます。
スマラン事件は有名で、軍の指示を無視して出先の隊が不法行為を働いたもの。事件の発覚と同時に、日本軍は慰安所を閉鎖しましたが、終戦後、戦犯裁判で死刑を含む重い刑罰が科せられています。
中国のケースは議論の途中で時間切れになりました。
司会:最後に若い人に向けてひと言。
秦:慰安婦問題は日韓の支援勢力が始めたものだ。2~3年後に来日した韓国の大統領も、「この問題は日本のマスコミと運動家が一緒にわれわれを怒らせたものだ」と言った。そのような経緯を知ってほしい。
吉見:慰安婦問題は、事実がいろいろ発掘されているので、そういう事実を知ってほしい。国際的には性奴隷制度であるという認識が定着しており、根拠はきちんとあると思う。日本政府は戦時性的補償法を通せば解決できる。
〈犬鍋コメント〉
秦氏の言う日本のマスコミとは朝日新聞、運動家とは高木健一弁護士などのことを指します。
吉見氏の言う「国際的には性奴隷制度であるという認識が定着している」というのは、クマラスワミ報告書のことを言っているんだと思いますが、同報告書が根拠とした資料に誤りが多いことは、吉見さん自身がクマラスワミ氏に宛てた書簡(秦氏の書籍にあり)の中でも指摘している。誤った根拠に基づいた結論を今も支持する理由が、私にはわかりません。
以上、秦氏と吉見氏の討論を紹介しました。
これを聞いて、「吉見氏が圧勝した」と判定したブロガーがいますが、私は秦氏のほうに分があるように感じました。きっと、聞く人の立場によって、違って聞こえてしまうのでしょう。
読者のみなさんはどう判断されたでしょうか。
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