猛暑の日々が続く。
にもかかわらず、今年は去年ほど「節電」という合言葉が聞かれない。去年は「計画停電」があり、ロウソクを灯して食事をしたこともあったし、エレベーターが動かずヘトヘトになりながら階段を上ったこともあった。
「節電」のCMも見なくなった。東電が実質的に国有化されたためだろうか?
大飯原発を除いて、日本の原子力発電所はすべてストップしている。なら、電力は枯渇し、去年同様の苦しい生活が再来しても不思議ではないのに、電気を使えている不思議な現象が続いている。
その一方で、福島で原発の公聴会が開催され反対派の方々の苦渋の叫びが上がり、あるいは、原発反対のデモが行われている。福島や、その周辺の方々の苦労や困難を考えると、昨年以上に節電してもいいから、地域の方々の意見を尊重してあげて欲しいと思ってしまう。
今まで、原子力発電の電気を利用してきた以上、「原発は悪だ」ということはできないし、言う権利もない。電気料金を払うだけのフリーライダーだったわけなのだから。例え電気代が跳ね上がったとしても、原発のある地元・周辺地域の方々が反対しているなら、風力や太陽光発電の方がいいと考える。
原発の惨状が現実となり、その現実が、無限に続くような悲劇であることが認識できた今、原発のない地域に住んでいる私にはなんともいえない。
といいつつ・・・原発に携わったことのある先生に聞いたところ、私の住んでいる東京でさえ、海外の基準で考えれば、非難した方がよい地域とされる。全く影響がないわけではないとのことだ。その先生のご家族は海外におり、小さなお孫さんもいるため、東京への帰国を許さないと言っておられた。
その昔、現実離れした感で聞いていた、
「SUMMER TIME BLUES」や
「LOVE ME TENDER」が、突如として身近なものとなってしまったのだ。
実際、放射線は自然界にも存在している。そして、実際、放射線量は事故前と事故後とでは変化がある。「健康に影響が出るレベルではない」というが、それがどの程度のものなのか、私にはわからない。
話のすり替えと言われそうだが、親鸞聖人で有名な悪人正機説だが、「悪人でも救われるなら、どんどん悪いことをしてやれ」という考え方に対して、「薬があるからといって毒を喰らうな」と、その考えをたしねめられている。「健康に影響がないなら、どんどん放射線を浴びてやれ」っていう人もいないだろう。
あるいは、「1万円あげるから、健康に影響がないといわれている数値の放射線を毎日浴びてくれ」と言われて、その実験に参加したいと思う人がどれくらいいるだろうか。やはり、できれば遠慮したいと思うはずだ。そんな放射能実験に、我々東京都民は、お金ももらわずに、強制的に参加させられているともいえる。
そして、この実験は東京だけではない。前述の先生は、チェルノブイリの例にあわせて考えれば「沖縄」まで影響があるとおっしゃっていたのだから、日本全体が、なんらかの形で放射能の影響を受けていることとなる。ただ、それが「健康に影響するか、しないか」という物差しでのみ、考慮されているに過ぎない。
無論、福島の方々や、その他、周辺地域の方々の、精神的・肉体的不安は、我々の心配とは桁違いであろう。公聴会の悲痛な叫びからしても、本当に、原発の影響は多くの人々の幸せな人生を一転させてしまうほどの「兵器」にすら思えてしまう。
だからこそ、やはり、今年も出来るところから節電マインドは継続していきたい。そして、「原発は要らない!」と地域の方々が反対している原発を動かさなくてもいいくらい節電が積みあがれば・・・と思っている。