先回に引き続き、面白古文書『浮世かしこの番付』(文政年間)です。
今回は、残り半分、西の方(下)です。
西の方:
大関 たたかれてきて高いびきでねる人
(叩かれてきて高いびき寝る人)
関脇 粋がつて銭つかわぬもの
(粋がって銭使わぬ者)
小結 めぶんりやうのきいた人
(目分量の利いた人)
前頭 男にくどかれてふじやうがあるとぬける(男に口説かれて不浄(不祥)があるとぬける女)
【不祥】不吉、不運 【ぬける】言い逃れる
前頭 〇〇〇の虫だしをくバるおいしや
(〇〇〇の虫出しを配るお医者)
前頭 あしき子もかんどうハせぬおや
(悪しき子も勘当はせぬ親)
前頭 事をしらずにしつた顔する上手もの
(事を知らずに知った顔をする上手者)
前頭 こねずとりくつわかる人
(こねずと理屈わかる人)
【こねる】筋の通らない主張を繰り返し言う
前頭 ばんたのめしを鉢できわめるもの
(番太の飯を鉢で極める者)
【番太飯】2種以上の飯を同櫃に盛ったもの
前頭 むつかしいさいくものをめつたニほめて頭でもらふ人
(難しい細工物を滅多に褒めて頭でもらう人)
【滅多】滅茶苦茶
前頭 あしばやにあるいてぜうだんをするでつち
(足早に歩いて笑談をする丁稚)
前頭 口くるまに人をのせるもの
(口車に人を乗せる者)
前頭 人をにんぎよにつかうもの
前頭 だんほうをもてなしてきんたのむぼんさま
(檀方をもてなして金頼むぼん様)
【檀方】檀家
前頭 おやまになじミこしらへぬきやく
(女形に馴染み拵えぬ客)
【拵える】愛人をつくる
前頭 ひをりにもいいまげる
(非を理にも言い曲げる)
【理を非に曲げる】理を破る
前頭 るすことにつけこんでわりださぬ人
前頭 ぼうずもちしてあとへまわる人
(坊主持ちして後へまわる人)
【坊主持ち】 同行者の荷物を一人で持ち、道で坊主に会うたびに持ち役を交代すること。
前頭 月夜もてうちんともす人
(月夜も提灯灯す人)
前頭 いお/\わつてつかう人
前頭 かほでも〇わりしらすあんなへ
前頭 はらをたてたりたてんかしれん人
(腹を立てたか立てんか知れん人)
前頭 銭てう面にあまる人
(銭、帳面に余る人)
行司
げんぎんにかいものしてきんじかけニする商人
(現銀に買い物して金仕掛けにする商人)
【現銀】かね。上方では主に銀貨を使った。 【仕掛け】金貨・銀貨・銅貨の換算相場をごまかすこと。
人の仕だしうつむけるもの
(人の仕出しに俯むける者) 【仕出し】新趣向、【うつむける】ばかにする
角力番付ですから、東西対抗の意味で分けているのでしょう。東方に粋な洒落、一方、西方にひねったユーモアや金銭がらみの事柄が多く見られれば、東西対抗ががぜん面白くなるのですが、そこまで精選されているかどうかわかりません。
また、大関の項目はなるほどと納得しやすいもの、前頭になるとどうでもいいようなものなどの番付による違いもあれば、流石!😁🙌となるのですが・・・・お遊びですから、やはり、そこまで期待するのは無理?😓