遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書 『浮世かしこの番付』(下)

2023年02月15日 | おもしろ古文書

先回に引き続き、面白古文書『浮世かしこの番付』(文政年間)です。

今回は、残り半分、西の方(下)です。

西の方:

 

大関 たたかれてきて高いびきでねる人
  (叩かれてきて高いびき寝る人)
関脇 粋がつて銭つかわぬもの
  (粋がって銭使わぬ者)
小結 めぶんりやうのきいた人
  (目分量の利いた人)
前頭 男にくどかれてふじやうがあるとぬける(男に口説かれて不浄(不祥)があるとぬける女)
  【不祥】不吉、不運 【ぬける】言い逃れる

前頭 〇〇〇の虫だしをくバるおいしや
   (〇〇〇の虫出しを配るお医者)
前頭 あしき子もかんどうハせぬおや
  (悪しき子も勘当はせぬ親)
前頭 事をしらずにしつた顔する上手もの
  (事を知らずに知った顔をする上手者)
前頭 こねずとりくつわかる人
  (こねずと理屈わかる人)
  【こねる】筋の通らない主張を繰り返し言う
前頭 ばんたのめしを鉢できわめるもの
 (番太の飯を鉢で極める者)
 【番太飯】2種以上の飯を同櫃に盛ったもの
前頭 むつかしいさいくものをめつたニほめて頭でもらふ人
 (難しい細工物を滅多に褒めて頭でもらう人)
    【滅多】滅茶苦茶 
前頭 あしばやにあるいてぜうだんをするでつち
  (足早に歩いて笑談をする丁稚)
前頭 口くるまに人をのせるもの
  (口車に人を乗せる者)

 

前頭 人をにんぎよにつかうもの 
前頭 だんほうをもてなしてきんたのむぼんさま
  (檀方をもてなして金頼むぼん様)
         【檀方】檀家
前頭 おやまになじミこしらへぬきやく
  (女形に馴染み拵えぬ客)
       【拵える】愛人をつくる
前頭 ひをりにもいいまげる
  (非を理にも言い曲げる)
    【理を非に曲げる】理を破る 
前頭 るすことにつけこんでわりださぬ人

前頭 ぼうずもちしてあとへまわる人
 (坊主持ちして後へまわる人)
 【坊主持ち】 同行者の荷物を一人で持ち、道で坊主に会うたびに持ち役を交代すること。
前頭 月夜もてうちんともす人
  (月夜も提灯灯す人)

前頭 いお/\わつてつかう人
前頭 かほでも〇わりしらすあんなへ

前頭 はらをたてたりたてんかしれん人
  (腹を立てたか立てんか知れん人)
前頭 銭てう面にあまる人
  (銭、帳面に余る人)

行司 
げんぎんにかいものしてきんじかけニする商人
(現銀に買い物して金仕掛けにする商人)
【現銀】かね。上方では主に銀貨を使った。 【仕掛け】金貨・銀貨・銅貨の換算相場をごまかすこと。
人の仕だしうつむけるもの
(人の仕出しに俯むける者) 【仕出し】新趣向、【うつむける】ばかにする 

 

角力番付ですから、東西対抗の意味で分けているのでしょう。東方に粋な洒落、一方、西方にひねったユーモアや金銭がらみの事柄が多く見られれば、東西対抗ががぜん面白くなるのですが、そこまで精選されているかどうかわかりません。

また、大関の項目はなるほどと納得しやすいもの、前頭になるとどうでもいいようなものなどの番付による違いもあれば、流石!😁🙌となるのですが・・・・お遊びですから、やはり、そこまで期待するのは無理?😓

 

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面白古文書 『浮世かしこの番付』(上)

2023年02月13日 | おもしろ古文書

角力番付の体裁をとった面白古文書『浮世かしこの番付』です。

46.6㎝x34.1㎝。江戸後期(文政年間)。

瓦版様の木版刷ですが、かなり大版で紙質も上等です。

東の方(上)と西の方(下)の2回に分けて、ブログアップします。

これまでの品に比べて大きく見やすいです。しかし、相変わらず不明の項目()が結構残りました。読者諸氏、ご援助のほどをよろしく(^.^)

東の方:

 

エイ/\/\ ヲンハ
   浮世かしこの番付  
 
 東ノ方
大関 人のちやうちんについてあるく者 
       (人の提灯について歩く者)
関脇 うそでとくしんさす女郎
  (嘘で得心さす女郎) 
小結 まんぢうやつて灸をすへるおや
   (饅頭やって灸をすえる親) 
前頭 ひくうきて人のにざかる者

前頭 口うつしで銭もふけするひと
        (口うつしで銭儲けする人)
前頭 おや共とさうだんしやうとぬける人
   (親共と相談しようと抜ける人)【ぬける】言い逃れる       

前頭 事をしりてしらぬかほでゐる者
        (事を知りて知らぬ顔でいる者)
前頭 いぬにもさんばそふますもの
   (犬にも三番叟踏ます者)
前頭 かうりやくのたのもしかけずてにのく人
        (高利益の頼母子掛け捨てに退く人)
前頭 客をつれて茶やてたのみまた口銭とるもの
        (客を連れて茶屋で頼みまた口銭を取る者)
前頭 かヽにまかれたよふにミへてしんだひにものいれぬ人 
 (かかに巻かれたように見えて身代に物入れぬ人)

前頭 さんくわいに本ぜんきりにもどる人
   (参会に本膳きりに戻る人)          【参会】寄り合い 【きり】だけ

 

前頭 しうとめを上手につかうよめ 
        (姑を上手に使う嫁)
前頭 でしにあやまつているおししやう 
        (弟子に謝っているお師匠)
前頭 七十過たいんきよに手かけになる女
  (七十過ぎた隠居に手掛けになる女) 
        【手掛け】愛人  
前頭 しゃくせんにるすつかうもの
    (借銭に留守につかう者)
前頭 やぼのよふなかほしてそのせきをのがれる人
 (野暮のような顔をしてその責(or席)を逃れる人)
前頭 ふろやでひせんかきのまねをする者
      (風呂屋で皮癬掻きの真似をする人)
前頭 日よりでも夜るハ下たはいてある人
   (日和でも夜は下駄はいて歩く人)
前頭 物うりあるいて右?にてんじひらふ人
  (物売り歩いて右?に転じ拾う人)
前頭 酒のまねどはなしで商ひする人
  (酒飲まねど話しで商いする人) 
前頭 きしん物すこしもつていて酒によふてもどる人
      (寄進物少し持って行て酒に酔うて戻る人)
前頭 ばん付かふてしばい見たかほしているおかた 
  (番付買うて芝居見た顔しているお方)    

行司 うつくしいかヽを見せニおいてげんぎん商いをする  
  (美しいかかを店に置いて現銀商いをする)  【現銀】現金
   あほうにみたてたばんずけのさくしや
  (阿呆に見立てた番付の作者) 

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面白古文書 『好色秘術集』

2022年12月01日 | おもしろ古文書

先回に引き続いて、焚書坑儒を免れた江戸時代の房中術の本です。

17.6㎝x24.9㎝。65丁。幕末(嘉永五年)。

宝永正徳頃の版本を、後に誰かが写した肉筆本を、さらに近年コピーして、和綴製本した物です。

この手の本にしては大部です。

この本は、江戸時代のベストセラー、貝原益軒『養生訓』の影響を強く受けていて、益軒の2大健康法、「腹八分目」と「接して漏らさず」のうち、後者について、具体的な方法を詳細に述べています。

・・・・・・・・・・・・

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媚薬の作り方:

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・・・・・・・・・

今回の品は、いくつかの図書館や博物館にあって、この手の本としては比較的メジャーで、先回の『好色指南抄』の方が稀覯本かもしれません。

こんな品ばかりブログアップしていると、女性読者からソッポを向かれかねないので、次回からは正統ガラクタに戻ります(^.^)

 

 

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面白古文書 『好色指南抄』

2022年11月29日 | おもしろ古文書

先回のブログで、江戸のキワモノ、りんの玉を紹介しました。

平和が長く続いた江戸時代も後期になると、この方面の事柄に広く興味がもたれるようになり、各種書物が出されるようになりました。

今回の品は、房中術を説いた本で、庶民向け性の指南書というべき物です。

雑多な和書の間に挟まっていて、焚書坑儒を免れました(^^;

かいつまんで、全体の三分の一ほどを載せます。

goo倫に抵触するといけないので、現代語訳は各自でお願いします。

15.0㎝x25.6㎝、17丁。江戸後期 

『好色指南抄 全』とありますが、前編、後編のうちの後編です。

張形について:

張形の作り方:

湯陰酒茎の説:

美人三十二相説:

女悦の薬を即座に製法:

こういう類の本は、今では、ありそうでありません。

かつてベストセラーになった謝国権『性生活の知恵』(古い(^^;)くらいでしょうか。

実効性はともかく、この小冊子には、いろんなテクニックが満載されています。特に、薬の処方は、非常に沢山あって驚きます。赤ひげ薬局さんも真っ青でしょう。

また、「間合の張形を製傳」で、「張形といふものはした銭にて買るゝものにあらねば。下女婢の手にハ入がたし。」と書かれていて、当時、このような品物はかなり値の張った物であったことがわかります。さらに、それを手作りする方法を指南しているなど、今回の品は、一般庶民向けに書かれたものと言えるでしょう。

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面白古文書『金玉尽・鳥尽6』

2022年11月21日 | おもしろ古文書

面白古文書『金玉尽・鳥尽』も最終コーナーに入りました。

今回は、左側(とり尽くし)の下段です。

 

前頭 阿ほうハうつとり
  (阿呆はうっとり)
前頭 太った娘はぼつとり
  (太った娘はぼつとり)  
前頭 荷舟ハせどり
  (荷舟は瀬取り)
前頭 因バのとつとり
   (因幡の鳥取)
前頭 七りんの火とり
  (七輪の火取り)
前頭 大和に高とり
  (大和に高取) 
前頭 工合かよいこつとり
  (工合が良いこつとり)
前頭 餅つきのうすどり
  (餅つきの臼取り)
前頭 早イが手とり
  (早いが手取り)
前頭 うらめしいがなわとり
  (恨めしいが縄取り)
前頭 左官に戈とり
  (左官に戈鳥)
前頭 一夜のやどり
  (一夜の宿り)
前頭 俳諧の点とり
    (俳諧の点取り)
前頭 天下茶やの五文どり
  (天下茶屋の五文採)
前頭 戦国のきりどり
   (戦国の切取)  
前頭 かむろにミどり
  (禿にみどり)  
前頭 やもめハひとり
  (寡は一人) 
前頭 山伏は兜きん
   (山伏は兜巾)
前頭 外科ハすひ玉 
  (外科は吸玉) 
前頭 一字千きん
  (一字千金) 
前頭 ふむのハこんにゃく玉
  (踏むのはコンニャク玉) 
前頭 よさうの〇きん
前頭 久しぶりハた両(ま?)玉
前頭 牡丹のみきん
  (牡丹の砌)    
前頭 墓所ハひたま
   (墓所は火玉)


【うつとり】ぼんやり者。まぬけ。
【ぼつとり】顔やからだつきがふっくらとして色気のあるさま。
【瀬取り(せどり)】洋上において船から船へ船荷を積み替えることを言う。また特に、陸揚げのために、親船の積み荷を小船に移すことや、その小船のこと(瀬取り舟)。
【火取り(ひどり)】おこした炭火などを運ぶのに使う道具。
【大和(やまと)】【高取(たかとり)】大和国の高取藩。
【工合(ぐあい)】【こっとり】ともに、具合が良いさまを表す語。
【臼取り(うすとり)】 餠をつくとき、餠が杵や臼につかないよう、水に手を浸し、餠に水をうったり、餠を返したりすること。また、それをする人。
【手取り早い】手っ取り早い。
【縄取り(なわとり)】罪人を縛った縄の端を持って、逃げないように警護すること。または、それをする人(縄持ち)。奉行所配下の身分の低い者が任にあたった。
「盗みする子は憎からで縄掛くる人が恨めしい」(盗みをした我が子を憎まず、その子を捕まえて縄を掛けた相手を恨む)との諺は、親の身びいきのたとえ。
【戈鳥(ほことり)】戈鳥 = 鳶(とび)。転じて、とび職。江戸時代、左官とともに人気のあった職業。
【点取り】点取り俳句のこと。江戸時代、評者(点者)が俳句に批点をつけ、その点の多少で優劣を競う遊戯的な俳諧。点取り主義が横行して俳諧が堕落し、後に賭事的なものとなった。
【五文採(ごもんどり)】安倍川餅の別名。五個五文であったが後に一個五文になった。
【切取(きりとり)】武力で領地などを奪い取ること。
【禿(かむろ)】遊廓に住む童女。
【みどり】遊女見習
【兜巾(ときん)】修験道の山伏がかぶる黒の布でつくった頭巾。ひもで下あごに結びとめる。
【吸玉(すいだま)】江戸時代まで盛んに行われた吸玉療法。
【一字千金】大変に優れた文字や文章のこと。
【踏むのはコンニャク玉】江戸時代、コンニャクを、足踏み臼という機械で、踏みながら作った。
【砌(みきん、みぎん)】舞楽が始まる時という意味。能『石橋』で牡丹が咲く下、連獅子が踊る。地謡が、「獅子団乱旋(ししとらでん)の舞楽の砌(みぎん)」と謡い、キリとなる。
【火玉(ひだま)】空中を飛ぶ球状の怪火。火の玉。

 

ようやく最後までたどりつきました。

「うらめしいがなわとり」や「左官に戈とり」などの難問をクリアーして、有終の美を赤無しで飾れると思いきや、なぜか「鳥」の段の最後に「金・玉」が入ってきて、これで見事にギブアップ(^^;

3カ月かけても、すっきりと行かないのが、面白古文書の常(^.^)

 

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