水戸藩の武士、立原杏所の淡彩画です。
全体:35.9cm x141.5㎝、本紙(絹本):25.0㎝x64.8㎝。江戸後期(文化7年)。
【立原杏所(たてはらきょうしょ)(天明五(1785)年ー天保十一(1840)年)】水戸生れ。彰考館総裁立原翠軒の長男。名は任。字は子遠、公遠など。杏所は号。文武両道に秀でた人格者。徳川斉昭の信頼が厚かった。絵を谷文晁に学び、渡辺崋山、椿椿山とも親交があった。関東南画檀の中心。大正・昭和初期の詩人、建築家、立原道造は子孫。
繊細な筆使いで、雄大な山水画が描かれています。
特徴的な巨岩。
温かみのある人物と牛。
作者の落款と印章。
奇怪な構図の作品ですが、緊張した画面の中に、静かな透明感が感じられる不思議な絵です。
この作品には、鑑定家、西村南岳の箱書きがあります。
このようなものは、あまり頼りにならないのですが、南岳の箱書きは比較的信頼がおけます。
さらに、この品には、鑑定家、中野雅宗の鑑定書がついています。こういう鑑定書は、いかにも怪しげ(^^;
しかし、今回は少し事情が異なります。
中野雅宗によれば、この飛瀑逐牛図は、立原杏所、26才の時の作品とのこと。「明ノ上州ノ勝景図二倣ヒ、之二逐牛ヲ配ス、近景の断崖、落葉樹ハ晩秋ノ季節ヲ現ワシ、主山の巨巌ハ杏所独自ノ天造二シテ画興深々タリ、・・・・」と作品を評しています。
文人画の系譜に入る絵だと思います。
中野雅宗は、「杏所先生遺墨顕彰会」を主宰していて、その第11号に登録されているのがこの品です。
さらに、彼は、『日本書画鑑定大事典』(図書刊行会、2011年)全10巻を著わしていています。一巻が600頁余の大部、印影(朱色)落款約58000、写真千点以上にも及ぶ膨大な鑑定書です。偽印も対照されているので、私は図書館でよく利用します(定価が30万もするので、さすがに自前では無理(^^;)
立原杏所の項目に、今回の落款と印章が載っています。
左下の「立原任公遠作(26才)」。
上段左から二つ目「立原任印」と下段左端「杏所」
今回の品は、大著『日本書画鑑定大事典』の一部を担っているのですね。
贋物が多い立原杏所の作品ですが、今回の品は何とかいけそうです(^.^)
たとえ贋作だっていいじゃないか!くらいによいです。
何気に虎視眈々と粛々と。
さすが(^^)v
良い1日でありますように(^^)/
とても良いものに見えます(^^)
状態も良いですし、時代があって素晴らしいですね!
なんと言っても調べる楽しみがありますね。多方面からの鑑定に説得力を感じました(^^)
床の間に飾ると映えますね!
立原杏所の場合、水戸藩の儒教精神と杏所の人間性が混然一体となった表現のように思います。
その割には、大きく感じます。
以前の鑑定書にもかかれていたように、陶磁器でも絵でも、大きく見える品は良い、というのが昔からの骨董業界の定説です。
品格&訴える力でしょうか。
それだけに、贋作が多いですね。
そうしたなかにあって、これは、まさに「逸品」ですね!
『日本書画鑑定大事典』に、この絵の落款と印章が載っているとは凄いですね!
これぞ、「本物保証」というものですね(^_^)
掛軸は、かなり難しいです。
定番の見方というのが無いに等しいですから。
そこが、慰め所でもあります(^.^)