今回は、オーソドックスな面白見立て番付けです。
が、例のごとく、結構な難物で、赤多数でした。
四分して、右上から順に。
うそまこと見立觔
うその方
大関 百物がたりのばけもの
(百物語の化物)
【百物語】多勢の人が集まって、 ろうそくを百本立てて置き、それぞれが化物 の話をして、一本ずつ蝋燭を消して行く。100話怪談を語り終えると、本物の化物が現れるとされていた。
関脇 めしのこげすきといふ居候
(飯の焦げ好きという居候)
小結 切り芝居の今入れかわつた
(切り芝居の今入れ替わった)
【切り芝居】江戸後期、一切(一太刀をあびせる)だけの芝居を立見で安価に見られる興行。通常、3本立の三切芝居で、一切が終わると、立見席は入れ替えになった。
前頭 びんぼう質二おくといふ人
(貧乏質に置くと言う人)
同 魚つりのいいしやく
(魚釣りの言い尺)
同 朝ひなのぢごくやぶり
(朝比奈の地獄破り)
【朝比奈地獄破り】朝比奈三郎義秀は、剛力無双の自分に、地獄の鬼でもいいから、挑戦してこいと挑発した。すると夢の中に鬼が現れて、義秀を馬鹿にして笑ったので、鬼を追いかけまわし、地獄の門を破り、やがて地獄を征服した。歌舞伎や狂言の演目として人気があった。
同 土用かんの入にきく薬
(土用、寒の入に効く薬)
同 つんぼの札かけてるこじき
(ツンボの札掛けてる乞食)
同 けいせいの入レぼくろ
(傾城の入れぼくろ)
【傾城】遊女
同 事ふれのはやるやまひ
(事触れの流行る病)
【事触れ】物事を世間に言いふらす人
同 やすうりのべつかう物
(安売りの鼈甲物)
同 げいしやのしやくもち
(芸者の癪持ち)
同 はらにあなのある国
(腹に穴のある国)
【腹に穴のある人の国】江戸期、朝比奈伝説の一つ、「朝比奈島巡り」の中で、朝比奈三郎が、巨人国、小人国、手長・足長の国、腹に穴が開いた人の国などをめぐる御話し。
同 ゑきしやの方角
(易者の方角)
同 かほミせの口上
(顔見世の口上)
同 仲人のでたらめ口
(仲人のデタラメ口)
同 伊勢参りにこじき
(伊勢参りに乞食)
【伊勢乞食】伊勢参りの人々に物乞いをする本物の乞食の他に、参拝客相手に荒稼ぎをする商人を嘲って伊勢乞食とよんだ。
同 相場仕のたいへいらく
(相場師の太平楽)
【太平楽】好き勝手なことやでたらめな言い分。
同 百しやうの不作
(百姓の不作)
同 新おきやへ入こむ奉公人
(新置屋へ入込む奉公人)
同 けごん経大ぼうのとり
行司 正月ことば
頭取 たぬきねいり(狸寝入り)
辻だんぎ(辻談義)
ほうべん(方便)
まことの方
大関 大わいときのねんぶつ
(大わい時の念仏)
関脇 小べんたれたあとへ寝るうバ
(小便垂れた後へ寝る乳母)
小結 山上参りのどろ川で白状
(山上参りの泥川で白状)
【山上参り】山伏姿でホラ貝を吹きながら、蔵王権現に上り、参詣すること。
前頭 年よりめうとむつまじいの
(年寄り夫婦睦まじいの)
同 ていしゆのるす二ねぬ女房
(亭主の留守に寝ぬ女房)
同 せぎやうのさかやき
(施行の月代)
【施行(せぎょう)】僧侶や貧しい人に物を施し与えること。特に、伊勢参りや四国巡礼の無料で接待がなされた。食べ物、飲物や草鞋だけでなく、月代などのサービスまで施された。
【月代(さかやき)】男性が前額から頭の中央にかけて髪を丸くそり落とすこと。
同 何時でもとんでくるおゐしや
(何時でも飛んでくるお医者)
同 夜道にちやうちんかりた嬉しさ
(夜道に提灯借りた嬉しさ)
同 春はなさき秋ミのるの
(春花咲き秋実るの)
同 地廻りのまぶにゐけん
(地廻りのまぶに意見)
【まぶ】江戸後期の隠語。てきや。
同 十月の水しぐれ
(十月の水時雨)
同 俄雨にしらぬ人二傘かすの
(俄雨(にわかあめ)に知らぬ人に傘貸すの)
同 孝行者のもろふたほうび
(孝行者のもろうた褒美)
同 おしやかさまのふへるの
(お釈迦様の増えるの)
同 かわい子をせめるやいと
(かわいい子を責める灸)
同 てんぴんのはり口
(天秤の針口)
【針口】天秤てんびんの中央、支柱の上部にあって、平均を示す針のある部分。
同 てしま先生はなし
(手島先生話し)
【てしま先生】手島堵庵。江戸時代中期の心学者。平易な言葉で、教化の普及につくした。
同 道中の一里づか
(道中の一里塚)
同 車に乗て居るいざり
(車に乗っている躄)
同 はかりのむだめ
(秤の無駄目)
【無駄目】竿秤で、実際には使うこともないのにつけてある秤の最初の目盛り。
同 宮寺へ奉納のしな
(宮寺へ奉納の品)
行司 じしやく 北むく
(磁石 北向く)
頭取 立石のせし〇
こよミの日し○
こよミの月し○
三月三日汐干
【三月三日潮干狩】江戸時代、例年3月3日は大汐干潟になるので、人々は汐干狩りに出かけた