コロナウイルスに負けるなシリーズ、第8弾です。
Dahl(ダル)とよばれるインドの盾です。18-19世紀の品です。
径 38㎝、高 6㎝
ニュージーランドの骨董屋で購入しました。
ニュージーランドは国が若いので、自国の古い品はありません。先住民マオリに関しては歴史的な物もありますが、入手は不可能です。
ただ、イギリス圏であった関係でヨーロッパから、また、現在は、人種の坩堝といわれるくらいの多民族国家ですから、世界各地から、多くの品が集まっています。
この品もその一つでしょう。
実は、以前、これと同じ品を、オークランド博物館の展示品の中に見つけていたのです。
博物館前の店に、ずらっと名品のコピーが並んでいる・・・故宮博物院ではよくある類の話ですね。
でも、これはコピー品ではありません(^^;)
材質は、黄銅。
インド・中東風の装飾がびっしりと施されています。
気が遠くなるような細工です。
点々はすべて鏨でつけた小孔です。
模様には、渡金、渡銀が施されています。
裏側をみると、実用品であることがわかります。
頑丈な鉄輪に、太い紐が2本。これで、がっちりと盾を持ちます。奥には四角い皮があててあって、拳を保護するようになっています。
紐はほつれ、皮も破れています。実際に使われていたのでしょうか。
さて、今回の品、ここからが本題です。
主模様の間には、唐草と思われる細長い枝葉模様がびっしりと描かれ、隙間は黒く塗られています。
よく見ると、唐草の葉と葉の間がくぼんでいる所が何カ所かあります。
埋めてあった素材が傷んで剥がれ落ちたのです。
ということは、黒い部分の地金は彫り込まれており、金色の唐草は凸形に浮き彫りにされて残った部分なのです。彫られた凹部には漆を塗りこんで、平にしたのでしょう。
これは、ちょうど、酒田の人さんの古伊万里コレクションで紹介されている、伊万里焼の逆タコ唐草模様に相当します。通常のタコ唐草のように、直接、唐草模様を描くのではなく、周囲を呉須で塗って、残った白い部分を唐草模様にするのです。
呉須で隙間を塗って白い部分を唐草模様として残す古伊万里染付皿の逆タコ唐草と異なり、この品の場合は、金属を彫り下げ、残った凸部で唐草模様を表すのですから、本当に気が遠くなるほどの手間がかかります。
その一部を拡大してみました。
黒い部分は間を埋める漆。2本の金線は唐草の一部。
金線の間の白くなっている部分が彫り下げられた所です。埋めた漆が剥がれて、彫りすすんだ跡が見えています。
異国の職人が心血をそそいで作り上げた盾。
これを手にすれば、コロナウイルスも簡単に跳ねかえすことができること間違いなし(^_^)