遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

杜若蝙蝠紋行燈皿

2020年07月13日 | 古陶磁ー大皿・大鉢・壷

江戸後期、瀬戸で焼かれた行燈皿です。

   径 22.2㎝、高 1.3㎝。 江戸後期。

 

高台はありません。

裏面は全面施釉され、丸く釉剥ぎした所に、8つの目跡があります。

 

器形はフラットな円盤状です。

 

行燈皿は、行燈の灯火器から落ちる油を下で受ける皿です。

江戸時代には必需品でしたから、各地の窯で作られました。そのなかでも、瀬戸の行燈皿が最も多く使われました。

石皿、馬の目皿、絵瀬戸などの瀬戸の絵皿の中で、行燈皿は上手の造りです。素地も、他の皿に比べて磁器分が多く、硬い焼き上がりです。

 

今回の行燈皿の見どころは、やはり絵付けです。

 

杜若と

 

蝙蝠。

 

 

なかなか洒落た杜若です。

杜若と蝙蝠の取り合わせは珍しいです。何か謂われがあるのでしょうか?

考えられるのは吉祥模様です。杜若は、古来から縁起の良い植物とされてきました。また、蝙蝠は、中国の吉祥紋です。福の字に似ているからだそうです(^^;

この花、最初のブログでは『菖蒲蝙蝠紋行燈皿』のタイトルだったのですが、いずれがアヤメか杜若、と言われるように、私には両者の区別がつきません。ならば最初にうかんだ菖蒲で、と実にいい加減に決めたわけです(^^; ところが、その後、自閑さんから、水の流れからカキツバタではないか、との指摘をいただきました。確かにそうです。在原業平の八つ橋の杜若を思い出しました(実際の八つ橋は渦巻く流れではなく単なる池と小川(^^;)。

そんなわけで、今回のタイトルを、『杜若蝙蝠紋行燈皿』と訂正させていただきました(^.^)

 

もう一つの見どころは、経年の地肌です。

この薄黒い部分は、油のシミです。単なる汚れなのですが、細かい地カンニュウと組み合わさって、何ともいえない味が出ています。

 

先回紹介した絵瀬戸皿に比べ、行燈皿は人気があります。その理由は、やはり、長年の使用が作りだす味わいでしょう。茶道具と似ています。行燈皿は育つ日用雑器なのです。ただ、茶道具と違って、我々が使い込んで育てることはできません(^.^)

 

コメント (10)
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