江戸後期には、瀬戸で日用陶器が大量に焼かれました。石皿、油皿、馬の目皿、絵瀬戸です。これらの陶器には、民芸調の絵が描かれました。但し、石皿は無地の物が圧倒的に多いです。
前々回のブログで、江戸後期の絵瀬戸と桃山美濃陶とをつなぐかも知れない絵柄の釉剥ぎ中皿について書きました。
話しは前後しますが、今回は、代表的な絵瀬戸皿を紹介します。
径 22.3㎝、高 4.4㎝、高台径 13.7㎝。 大正~昭和(戦前)?
鉄釉で、簡略化されて風景が描かれています。江戸後期の瀬戸雑器の絵付けは鉄釉です。一部に地呉須も使われますが、絵瀬戸の場合は、ほとんだが鉄釉一色です。
器形は、馬の目皿に近いです。円形だけでなく、方形の絵瀬戸もあります。大きさは、本品のような7寸皿が多いですが、まれに巨大な絵瀬戸皿もあります。
裏面はいたってシンプル。大きめの高台は、安定感をうんでいます。
絵瀬戸の魅力は、何といっても絵付けです。
今回の品は、簡略された絵付けで、一幅の山水画をみるようです。このように、非常に手慣れた筆さばきで、一気に描くのが雑器絵皿の特徴です。
柳と松の木のそばに一軒の東屋がたっています。雁が帰る夕暮れに、小舟が家路を急いでいます。垣根も見えます。下にあるUFOみたいなのは何でしょうか。
力強い筆致で、ためらいなく木々が描かれています。土瓶の絵付けで有名な益子の皆川マスさんを思わせます。
薄い鉄釉を使って、濃みの効果をだしています。
絵瀬戸皿だけではなく、行燈皿にもこのタイプの絵付けが多く見られます。
三田村善衛『瀬戸絵皿の魔力』
別の資料には、今回の品と非常によく似た絵付けの油皿が載っています。
この油皿は、おそらく江戸後期の品と思われます。
江戸後期に花開いた瀬戸の絵皿ですが、明治にはいっても造られつづけました。いつまで生産が続いたのかはよくわかりませんが、今回の絵瀬戸皿はデッドストックの未使用品ですから、昭和の品の可能性が高いです。
筆付きも含め、同じ図柄が連綿として受けつがれてきたのですね。