今年の梅雨は、各地で大雨となっています。洪水、土砂崩れで多くの人命が失われ、田畑の作物に大きな被害が出ています。
世の中が便利になり、普段、天候に気を配ることが少なくなりましたが、こういう大災害をまのあたりすると、人間は自然の中に生きていることを改めて思い知らされます。
ところで、現在のように気象予報がなかった江戸時代、人々はどのようにして天候や農作物の作柄を知ったのでしょうか。
手持ちの古文書類を探してみたら、面白いものが見つかりました。
手書きの簡易綴じの文書です。15丁の文書の中に、天候の予報と農作物作柄の予知法が、100項目以上にわたって書かれています。
題がついていないので、私が勝手に、『天候作柄予知百撰』とつけました(^^; 3回に分けて紹介します。
①
一.大豊年にハ五日一度風吹十日一度雨降るに塊を破らすかならす夜降るなり
一.立春の日甲乙にあたれバ豊年また壬癸に当れバ洪水あり
②
一.正月朔日に四方に黄なる雲気あらバ大豊年なり
一.正月朔日に天晴れて温に風吹されバ五穀熟して米大ニ安し
一.正月朔日に天日曇りて重風吹バ其年五穀みのらず米高し
一.正月朔日に風雨あらバ凶年にして米高し
一.正月朔日東風吹バ夏にいたりて米安し
南風吹バ夏に至りて米安く亦ひ
③
てりするなり西風吹ハ米高し又豆類ハ実なり北風吹は水災あるなり
一.正月に三ツ卯の日あれバ其年豆満作にして大に安し
一.正月に三ツ午の日あれバ其年大にひでりなり
一.正月に三ツ亥の日有バ其年大水出るなり
一.正月に三ツ巳の日あれバ其年大にひてりなり
注:
①塊を破らす;「雨塊を破らず、風枝を鳴らさず」;雨は静かに降って土のかたまりを壊さず、風は木の枝も動かないように静かに吹いたという中国の故事。
②朔日;1日
江戸時代の年月日と時刻:
年月日:年月日、いずれにも六十干支が割り振られています。十干(甲乙丙丁・・・)と十二支(子丑寅卯・・・)を組み合わせた六十干支(甲子・乙丑・丙寅・丁卯・・・)は、ある基点から年や日に割り振られ、60周期で繰り返します。
1甲子 2乙丑 3丙寅 4丁卯 5戊辰 6己巳 7庚午 8辛未 9壬申 10癸酉 11甲戌 12乙亥 13丙子 14丁丑 15戊寅 16己卯 17庚辰 18辛巳 19壬午 20癸未 21甲申 22乙酉 23丙戌 24丁亥 25戊子 26己丑 27庚寅 28辛卯 29壬辰 30癸巳 31甲午 32乙未 33丙申 34丁酉 3 5戊戌 36己亥 37庚子 38辛丑 39壬寅 40癸卯 41甲辰 42乙巳 43丙午 44丁未 45戊申 46己酉 47庚戌 48辛亥 49壬子 50癸丑 51甲寅 52乙卯 53丙辰 54丁巳 55戊午 56己未 57庚申 58辛酉 59壬戌 60癸亥
十干; 甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)
日本の読み;甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)
十二支:子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥
時刻:江戸時代の日本の時刻は、日の出と日没の時間を基準に一日を12刻に分けた不定時法によっています。およそ現在の二時間を一刻としており、明け六ツから一日が始まり、暮れ六ツで日が暮れます。各時刻には、十二支が割り振られています。
暁9つ 子の刻 0時ごろ
暁8つ 丑の刻 2時ごろ
暁7つ 寅の刻 4時ごろ
明6つ 卯の刻 6時ごろ
朝5つ 辰の刻 8時ごろ
朝4つ 巳の刻 10時ごろ
昼9つ 午の刻 12時ごろ
昼8つ 未の刻 14時ごろ
昼7つ 申の刻 16時ごろ
暮6つ 酉の刻 18時ごろ
夜5つ 戌の刻 20時ごろ
夜4つ 亥の刻 22時ごろ