正月らしい絵を探してみました。
全体、56.7㎝x186.5㎝、本紙、45.3㎝x170.2㎝。幕末ー明治。
山中信天翁(やまなかしんてんのう、文政五(1822)ー明治十九(1885)):三河生れ。幕末ー明治に活躍した書家、政治家。勤王志士として国事に奔走。新政府に仕えたのち、隠居して文人生活をおくる。書画に秀で、近代書道に大きな足跡を残した。
蓬瀛春色(ほうえいしゅんしょく)
蓬瀛:蓬莱(ホウライ)と瀛州(エイシュウ)の二つの山。中国では仙人がすむとされた。
春色:春の景色。
富岡鉄斎は、武家社会が崩壊した後に現れた最後の文人です。その鉄斎に大きな影響を与えたのが山中信天翁です。信天翁より15歳年下の鉄斎は、信天翁との出会いをきっかけに、文人として生きていくことを決心したと言われています。二人はその後、生涯の友として書画に励みました。
倒幕運動に深くかかわり、新政府では岩倉具視を補佐して活躍した山中信天翁ですが、やがて職を辞し、隠遁生活を送ります。富岡鉄斎は勤王に心を寄せながらも、少し距離をとっていました。二人とも、武士の出ではなく、激烈な倒幕運動やその後の政変は彼らの肌に合わなかったのかも知れません。
俗世間から離れ、詩書画の世界にひたった二人にとって、蓬瀛の仙境は理想郷であり、好んでとりあげた画題であったのです。