『納札 名物名所合せ』の続きです。
これまで紹介してきた納札は、ほとんどが、縦長の一丁札でした。納札帖の後半になるにつれ、大きな札が多くなります。
これまでと同じく、縦長の一丁札が2枚です。ただ、単純な長方形ではなく、四隅がカットされたモダンデザインの札です。
右:浪花 佐藤保 大正十年十月二三日
浪花名物 天満天神
大正10年10月23日と記されていて、東西名物名所合せの交換会が行われた時期がわかります。
左:贈催主 天愚會 西田亀 大中雲峰 後藤花雪 森田正 江戸名物 浅草雷門
天愚會は、東京の会で、4人の催主名が記されています。
天愚會の名は、千社札の元祖、天愚孔平(1733~1817年)によると思われます。天愚は、松江藩江戸詰の武士でしたが、奇妙な衣装と行動で、奇人、変人として広く知られていました。千社札(納札)は彼の考案といわれ、継竿の先につけた刷毛で天井などに貼り付ける風習も彼が始めたと言われています。
(天愚會) 後藤 東錦繪売
右左ともに、一丁札2枚を繋げた大きい納札です。そしてさらに、この大判札が左右2枚でセットになっています。天狗のイラストは、天愚會を表しています。
左の絵から、江戸の風俗がわかります。浮世絵は、店頭で売られていただけでなく、街頭にも錦絵売りがいたのですね。
勇祭りに初鰹 大
大中は、最初の納札にある、天愚會催主の一人、大中空峰です。
この納札も、上と同じく、左右大判2枚でセットです。
【勇祭りに初鰹】
東京、初夏の催しだと思いますが、詳細不明(^^;
西田亀
江戸亀戸土産
この納札も、上と同じく、左右大判2枚でセットです。
西田亀も、最初の納札にある天愚會の4人催主の一人です。
江戸亀戸の土産、張子の亀が吊られています。上に木杯。どうやらこの亀、そうとうに酔っているようです(^.^)
この納札も、左右大判2枚でセットです。
天愚會 大中空峰 西田亀 後藤 森田正・・凝った字体で書かれています。
左側の大版納札には、浅草名物、江戸玩具の飛んだりが2個描かれています。傘に吊られた人形は不明(^^;
なお、右頁左の納札に伊世万、扇令とある二人は、大阪、睦會の人ですが、協賛ということでしょうか。
また、「浮世絵は、店頭で売られていただけでなく、街頭にも錦絵売りがいた」んですね。そのようなことから考えますと、浮世絵というものは相当に普及していたんですね。
伊万里焼を包んでいたのが錦絵だったそうですから、ゴッホならずとも、ヨーロッパの人はびっくりしたでしょう。もし、包まれたままの品が出てきたら、大発見ですね。