昔は、よく東京へ行きました。
当然、骨董屋や骨董市めぐりも。
デパートでも、骨董フェアが盛んでした。
Mデパートの古美術即売会に行った時のこと。有名美術商の出展が多い催しでした。
会場で、大きな声がします。どうやら、客の青年に店主が品物の蘊蓄を語っているようです。それにしても、すごい熱意です。店主は、当時、鑑定団で西洋アンティーク鑑定士として人気の高かったひヒゲのおじさんでした。
こりゃかなわんと足早に通り過ぎた所に地味なブースがあり、そこに、チョコンと置いてあったのが、この品です。滋賀県の業者でした。
径22.6cm、高さ9.4㎝
底に、「大明宣徳年製」 の銘があります。
見込みには、鶴仙人が描かれています。
外側には、何かの故事でしょうか、問答をしているような二人の人物が、4組描かれています。
その間を、「寿」と思われる文字で、びっしり埋めています。数えてみると、140ほどもあります。
外縁にあたりがあり、そこからニュウが5㎝ほど入っています。それでも、弾けば、コキーンと金属音が響きます。中国の陶磁器は、よほど焼きがいいんですね。
呉須の発色も良好です。わずかに紫がかった青。これが、宣徳ブルーというものでしょうか。
ところで、この宣徳大鉢、どこかで見たような?
確か、古伊万里に、似たような品があった気がしますが。
でも、もう、図録を繰る根気がありません(^-^;)。
九州陶磁文化会館発行の「柴田コレクション総目録」の図1119及び「柴田コレクションⅢ」の図242に載っていました。
それによりますと、
「染付壽字仙人文鉢 1660~70年代 口径19.6 高さ9.8 底径8.7」
とありました。
遅生さんがアップされたものと酷似しています。
この柴コレには見込み部分の写真がありませんでしたが、多分、見込みには鶴仙人が描かれているんでしょう。
また、裏面高台内の銘は「大明成化年製」となっており、外側口縁部付近にぐるりと描かれた花の花びらの数は5個になっています。それに、外側に描かれた仙人はいかにもマンガチックに描かれています。
細かく見ていきますと、微妙な違いはありますが、両者は酷似していますね。
伊万里は、中国物を写している場合が多いですから、遅生さんが所蔵されているほうが本歌で、伊万里はそれを写しているんでしょうね。
そうであれば、いわゆる、「古染付」の部類に属しますよね。
伊万里は、特に「古染付」を写している場合が多いですから、これも、そうなのかな~と思ったわけです。
「古染付」が作られた頃にも、中国では、呉須の発色が良好で、わずかに紫がかった青を使った「祥瑞」というものがありますものね。
さっそく、柴田コレクションを引っ張り出しました。実に10年ぶりです(笑)。
ありました。ほとんど同じです。1660~70年代となっているので、結構古いですね。下手すると、私の初期伊万里よりも(^_^;)
ただ、写しの宿命でしょうか、やはり、少し描写がかたいですね。それに、底銘が、大明宣徳年製ではなく、大明成化年製となっているのもほほえましい。
本当は、二つ並べて展示するのが良いのでしょうけど、もう、伊万里をゲットする力が残ってません。
それから、大鉢の外縁、虫食いだらけです。ただ、非常に薄づくりなので、日本からの注文品、茶人の言う「古染付」では無いようです。
鶴仙人の本歌ですね。
鶴仙人は古伊万里ではそれほど見かけないですね。
もちろん古染付でも貴重ですね。
すません元に戻す催促をしたようなもので恐れ入ります。
特に、中国の染付けは手ごわいです。ただ、明末のくだけた感じものは、古染付もふくめ、比較的なじみやすい気がします。