小鼓を習い始めて、20年以上になりました。
つい、あれも、これも、と手を出して、気がついてみればこの有様です(まあ、外の骨董も似たり寄ったりですが(^-^;)。
鼓の店でも開くつもりか、とひやかされそうですが、すべて個人用です。
鼓道楽
いわゆる、小鼓の胴です。
大きさは決まっていて、長さ25cm、径10cmです。品物による違いは、数mmしかありません。素材は山桜。重い品ほど、重厚な音が出ます。一般的には、400g代。500g以上、300g以下の品は稀です。
値段のかなりの部分は、蒔絵によります。
時代が古く、かつ、良い蒔絵の施された鼓胴はかなりの価格になります。
もう一つ、重要なアイテムは、皮です。
胴に比べて姿形がきれいでないので、ぞんざいに扱われることが多いです。さらに、やぶれやすい、虫が食う、などの理由で、良い皮を求めるのはなかなか難しい。
ある意味では、胴よりも、皮の方が貴重かもしれません。
胴と皮を組むと、こんな感じです。
長い間組んだままにしておくのは、皮のためによくないので、鼓を打つとき以外は、胴と皮を外しておきます。
私のイッピン
こんなにもたくさん、小鼓をもっているのですが、使うのは次の鼓胴と皮だけです。
鳴りが良いからです。
蕪蒔絵鼓胴:江戸中期 495g
蕪蒔絵は、江戸時代から現代まで、鼓胴に好んで描かれています。蕪は、根(音)が太い、よくな(鳴)る、とかけているのです。
胴の内側は、細かな段鉋が施されています。鉋目の入り方が、音色に影響するので、鼓胴を選ぶ時の判断材料になります。
大事なのは、皮(子豚の皮)です。
打ち込めば打ち込むほど、良い音色になります。したがって、新しい皮よりも、長い間使われてきた皮に価値があります。200年、300年前の胴は案外ありますが、程度の良い100年前の皮は希少品なのです。
小鼓を始めてから20年以上たって、やっと入手することができた古皮です。
左側の皮(打つ方、表皮)は、プロに修理してもらいました(いくら日本に一人とはいえ、目がくらむほどの金額・・・・トホホ(^-^;)。
右側の皮(打たない方、裏皮)は、元のまま。
おかげで、外周の黒漆、100年以上前と現代との比較が可能になりました。そして、私にとって、長年の課題であった、「漆が透ける」ことの謎解きができたのです。すごく高くついた謎解きではありますが、また、いずれブログで。
組立てると楽器になります。2枚の皮を結んだ紐(縦調べ)とそれに直角に交わる紐(横調べ)が、小鼓の独特の音色をつくりだします。
そのために、縦紐を張るのは非常に繊細です。ミリメートル単位の微調整を繰り返して、やっと、小鼓らしい音がでるようになります。
横調べを掬うようにして、左手で小鼓を持ち、手首を返して、右肩甲骨にあて、右手の中指で表皮を打ちます。
この時、左手の握りの強弱で、音の高低を変えます。能の小鼓では、4種の音を使い分けます。
実際に、小鼓らしい音が出るようになるまでには、習い始めてから、最低、5年ほどかかります。
小鼓の胴や皮は、それぞれに個性があります。実際に、打ってみてるとわかります。
簡単に音が出るけれど、音色がもう一つ、気難しいけれどはまると素晴らしい、等々。
さらに、鼓胴と皮には、相性があります。ピッタリの組み合わせなら、得も言われぬ音色がでます。逆に、そこそこの品なのに、組み合わせてみるとガッカリという場合もあります。なんだか、人間みたいです(^-^;)。
そんな訳で、いつのまにやら、小鼓コレクターになっていました(笑)。
鼓胴のいろいろ
手元にある鼓胴を紹介します。
蓮葉蒔絵鼓胴:見事な蒔絵の品です。蓮のデザインが流行した明治期の作。
貝尽蒔絵鼓胴:貝や海藻が描かれた品です。江戸後期。505gある重い胴。
芭蕉蒔絵鼓胴:大胆な芭蕉のデザインが斬新な品。江戸後期。
松葉蒔絵鼓胴:松葉紋で埋め尽くした品。江戸後期。
鉄線蒔絵鼓胴:昭和。
松鶴蒔絵鼓胴:チープな蒔絵の胴。重さはわずか285g。おもちゃのような品ですが、皮を選べば、不思議にも妙なる音色。
黒無地鼓胴:いわゆる烏胴。江戸初期。
骨董品としての鼓
鼓は楽器ですが、骨董品の要素も持っています。
1)まず、美しい。胴の蒔絵はもちろんですが、そのフォルムも洗練されています。落しを入れて、花活けにしてもなかなかのものです。
2)希少価値があります。能管ほどではありませんが、骨董屋さんではたまにしかお目にかかれません。特に時代の遡る品は数が少ない上に、名器が多いので、演奏楽器としての価値も加わります。
ネットオークションでも出品はされるのですが、どう見ても2級品ばかり。これはという品は、半年に1個あるかないか・・・・・・ところが、このところ、ビックリするような名品が、怒涛のように出品されています。世代交代?時代の変化?呉須赤絵みたいなものです。理由は不明ですが、買い時です。
私はどうかって? もう、どうにもなりません(^-^;)
それに並行して、鼓のコレクションも、、、。
鼓のコレクションも凄いですね。
集められた鼓は、時代もしっかりあって、しかも優品揃いですね。また、良く勉強もされているんですね。
前回紹介された、船場◇兆で使用されていた小皿は、鼓の皮をデザイン化したものなんですね。
やはり、洗練された美しさがありますね。
この「雪輪文」については、越前屋平太さんという方が、ヤフーブログ「すきずき~やきもの好きの雑感あれこれ~」の中のカテゴリー「日本の伝統文様~自然文様~」の内の「自然文様(其の壱)・・・雪輪文・・・」(2006年2月6日付け)で詳しく記事にしています。
その結論としては、
「以上のことをまとめると・・・
雪輪文は確かに雪の結晶を図案化したものだが、実際に結晶そのものを観察して描かれたものではなく、雪の結晶が六角形であるという古来からの知識によって、六つの花弁を持つ花のように描かれた想像上の図案である。
・・・ということになろうかと思います。」
と書かれています。
雪の結晶を実際に見て図案化したわけではありませんから、現実には、遅生さんの言われますように、鼓の皮にヒントを得て図案化したのかもしれませんね(^-^;
ですね。
偶に見かけます。やはり漆の蒔絵があります。
これも奥が深い世界のようですね。
楽器と骨董、どちらを重視するかで、見方が変わります。
生活骨董と鑑賞陶器も、多少、似た側面がありますね。
漆も奥が深いですね。鼓の場合は特に、狭い曲面に蒔絵を施さねばならないので、職人の技量がモロに出来映えに反映されます。
最近やっと良い音を出せるようになりました。精進します。
3年ですか。丁度面白くなってきた時ですね。掛け声の方に気が行くと打つ方がおろそかになって苦労した記憶があります(今でもそうですが)。
それに、暗譜がまた一苦労。次の段階は曲想。さらに、謡や他の囃子との駆け引き・・・・・大変奥が深いので、苦労ですがやりがいもあります。
同好の方がいらっしゃってうれしいです。
今後とも、よろしく。