遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

金工6 梅花図砂張盆

2020年04月19日 | 金工

砂張の中型盆です。

砂張は、銅、錫、鉛の合金で、硬く、叩くとよく響きます。沙張、砂波理、佐波理、響銅などともよばれ、中国、朝鮮、東南アジアなどから、日本へ招来されました。古渡の砂張は、茶席で珍重されるようです。

 

      径 22.7㎝、 高 1.2㎝、 重 535g

 

もう、ずいぶん前になりますが、都内の小さなアンティークモールの一番奥の店の片隅に、ポツンとこの品が置かれていました。丁度、いくつかあった東京の骨董モールが次々閉じていく時期でした。ここも、あと数日で終わりということで、店主は寂しそうでしたが、それでもいくらか勉強してもらい、この品を得ました。実は、数年前からこの品に目をつけていたのですが、なかなかふんぎりがつかずにいて、土壇場でやっとゲットできたのです(^^;)

ところが、例によって、その後ずっと故玩館の片隅に放りっぱなし。今回、やっと日の目を見ました(^^;)

 

   梅花紋と文字が彫り込んであります。

 

 

 

日本では、正倉院御物の砂張匙など、朝鮮由来の砂張が有名です。砂張の語源も朝鮮半島にあると言われています。ですから、この盆も、朝鮮の物だろうと勝手に思い込んでいました(^^;)

盆には、「青帝宮中第一妃」と彫られています。

調べてみると、これは、中国宋時代の詩人、陸游(りくゆう、1125一1210年)が詠んだ多数の梅花絶句のなかの一節であることがわかりました。

陸游<雪後尋梅偶得之二>

「青帝宮中第一妃,寶香薰徹素綃衣。 定知謫墮不容久,萬斛玉塵來聘歸。」

ですから、この盆は、朝鮮ではなく、中国の品だと思われます。

 

裏側は、いたって簡素。

 

よく見ると、轆轤で削った跡がはっきりと付いています。

側面にも、轆轤削りの跡があります。

表側の表面はツルツルです。が、よく目を凝らすと、うっすらと轆轤目が見えます。轆轤引きした後、研磨し、さらに彫りをいれてあるのです。

手で触ってみると、初期伊万里ほどではありませんが、中央部が厚く、端にいくほど薄くなっていることがわかります。木の皿や盆など、轆轤引きされた物も、このような特徴をもっています。

まさか、金属塊から削り出されたわけではないでしょう。

中国の砂張は、鋳造の後、轆轤成型されたと言われています。いずれにしても、かなりの手間がかかっている品であることは間違いないでしょう。

 

彼の国の職人に敬意を表して、白南京茶碗にお茶をいれ、砂張盆にのせてみました。心なしか、古人の香りが漂ってくるような・・・・・!?(^.^)

 


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4 コメント

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Unknown (tkgmztちゃぐまま)
2020-04-19 09:19:35
遥か昔の職人さんの技巧が詰まったお盆と茶碗で一杯のお茶、贅沢ですねー!
見ている方も、ひとときの安ら
ぎを感じ嬉しくなります。
コロナ禍中にあり、こんな心がけが大切ですよね。
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tkgmztちゃぐままさんへ (遅生)
2020-04-19 10:01:22
コロナのことを考えていても嫌になるばかりですから、しばしの逃避(^.^)
けれど、実際のところ、安らぎのように見えるのは、あきらめと開き直り(^^;)
ただ、家籠りのおかげで、品物の整理が少しできるのがなによりです(^_^)

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遅生さんへ (Dr.K)
2020-04-19 10:14:02
東京には幾つか骨董モールがありましたね。
雑然としていましたが、結構、良い物も埋もれていましたよね。
私も、何点か買った経験があります。
懐かしいですね(^-^;

「砂張」という文言は聞いて知ってはいましたが、どんなものなのか知りませんでした(><)
砂張は、銅、錫、鉛の合金のことですか。
この中型盆、鋭い鏨跡ですね!
古さといい、文言といい、鏨の鋭さといい、なかなかの物ですね!
十分に茶席に入れそうですね!
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Dr.Kさんへ (遅生)
2020-04-19 11:28:20
どうして骨董モールが流行らなくなってしまったんでしょうね。財布の関係で、雑然とした中しか漁れない身には淋しいかぎりです(^^;)

参考資料も少なく、こういう物の評価は難しいですね。
中国物はやや黄味をおび、朝鮮物は黒ずみ、東南アジア物は青味をおびているんだそうです。青銅もそうですが、もともとは、真鍮のような黄色なんでしょうね。新品の砂張のおりんはピカピカの黄金色ですから。合金の配合比と時代の錆が、微妙な味を生み出すのだと思います。
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