十字架というは
人間の業を発動させる
アイコンです
そのイメージを見ると
何かに心を惹かれて
無意識のうちにカーソルを動かす
そして
ワンクリックですべての運命が作動する
それをかのじょは
約束の鍵と言ったのです
聖エウスタキウスが
鹿の頭上に磔刑のイメージを見たとたんに
運命が激しく回転したように
あなたがたのところには時に
かつてなしたことが
鮮やかな花のようなイメージとなって
やってくることがある
忘れていても
決して忘れられるはずのない
血の色がある
あの時聞いた声がある
呆然と自分を見ていた
だれかの目を覚えている
それは遺伝子の螺旋形の中に
不思議に穿たれた楔のようなものだ
ある時がくれば
必ず作動する
魂の
遺伝情報です
十字架の幻を見たら
それから逃げてはいけない
自分がかつてしたことが
覚えているでしょうと言って
帰ってきたのです
あのときあなたは
わたしにこうしましたね
こう言いましたね
あのときあなたは
決して助けてくれませんでしたね
恨み言をいうのでもない
それは機械のように
淡々というのです
あなたは逃げられない
いえ
逃げてはいけない
逃げられないものから
逃げようとすれば
あなたはもう永遠に
自分ではないと言うものになってしまうのです
かつて自分のしたことから逃げるのは
自分から逃げるのと同じことだからです